いざ、「相続対策」といっても、自分で考えるにも限界が…。いくら、インターネットが普及したとはいえ、相続に関する内容は、表面的には習得できますが、その背後や「相続」といった広い観点でみると、やはり一般の方が、自身のみで検討されるのには限界があると思います。

 となると、真っ先に頭が上がるのが、相続のプロ。相続のプロと言えば…税理士、弁護士でしょうか? 税金の専門家は、税理士であり、法律の専門家は、弁護士の他にも、司法書士、行政書士等がいます。

 また、相続には、お金、保険、年金、不動産等も関連することから、ファイナンシャルプランナー、社労士、不動産鑑定士、建築士(建築会社)、土地家屋調査士、不動産コンサルタント(不動産屋)等も上記に連ねて挙げることができます。

 上記のような専門家は、昔でいえば、「肉屋か魚屋、八百屋とどっちが多いか」等と言われていましたが、最近は大型スーパーの台頭により、商店街をはじめとする食品のジャンルを絞った専門店は減ってしまっているため、現代でいえば、「歯医者と医者とどっちが多いか」と比較されてしまう傾向にありますが、実は相続実務に特化している専門家は、先日のコラムでも触れた通り、希少な存在です。

 しかし、そのような限られた中の専門家であっても、実はクライアントとは利益相反になる可能性もあります。(※当コラムを最後まで目を通していただかないと誤解が生じる可能性もあるので、ご注意ください。)

相続実務はスポット業務が中心

 相続実務というのは、基本的に対策を講じる時点では仕事となりますが、以後、継続して仕事となるケースはあまり多くありません。例えば、スマートな遺産分割となるように…という願いから、遺言を作成される場合でも、作成時にはサポートしてくれますが、作成が完了すると、クライアントとは、それっきりになってしまう傾向にあります。

 また、税理士でも、相続税の申告業務だけを行うケースでは同様です。このような継続性が無く、ポイントで発生する種の業務をスポット業務と位置づけます。

 一方、クライアントから寄せられた相談を皮切りに、一生、クライアントに寄り添って行う業務もあります。相続とは少し離れますが、イメージが湧きやすい具体例としては、税理士でいえば、法人の会計税務の顧問や、社労士でいえば、給与計算・総務相談等のように、継続性がある種の業務をランニング業務と位置づけます。

 では、相続対策という業務は上記の何れかにあたるのかというと、その大半は、スポット業務です。当然、資産税を手掛けている税理士は、地主や資産家等のクライアントと定期的に評価の見直しや、分割対策、納税対策、節税対策等についての協議をされているので、ランニング業務となりますが、その他の実務家の多くはスポット業務となります。

 スポット業務で問題なのは、その場で業務が完了してしまう事で、時代と共に変化する家族構成、資産状況、家族の経済的・精神的状況等、常にクライアントに寄り添っていないと、これらの変化に対応できないという事が第一に挙げられますが、第二に、その場で完了してしまうがゆえに無責任な相続対策を提案されるケースが多々あります

 特に…私自身がその業界に身を置く不動産、建築業界等は、後者の典型的な例です。このような業界は、業種からして、そもそも継続性のある業種ではなく、全てがスポット業務の積み重ねであるため、考え方としては致し方ないのかもしれませんが…。

 例えば、不動産屋の場合、不動産の売却が完了することにより、業務は完了します。購入についても然り。建築業界も、有効活用等でアパートやマンション、ビル等を建築しても、多少のアフターサービス等はありますが、業務としては、建物が建って、引渡しを終えた時点で業務完了です。このように全てがスポット業務で継続的に連なる業務ではない為、ある意味、その営業活動は大変なものです。

 しかし、そのようなスポット業務の場合、クライアントの将来のことまで考慮せずに、その場限りのセールストークや効果を熟慮せずに、自らの「売上」や「利益」を優先してしまうことがあります。

 先日、実際にあった事例としては、都下(三多摩地域)の地主さんからのご相談は正に…。

実際にあった地主さんの例

 一般的に、「地主」と聞くと、土地を所有しているからお金持ちというイメージがあると思います。地主の多くは、その名の通り、沢山の土地を持っています。しかし、実体としては、確かに土地は沢山、所有しているものの、あまりお金を持っていません。分かり易く言えば、土地は沢山持っていますが、すぐに使える現預金を持っていないという方が圧倒的に多いのが現実です。

 さて、この地主さんの相談内容としては、某相続コンサルタントと名乗る不動産業者から飛び込まれ、都下エリアでは圧倒的に分譲実績のある上場しているマンションデベロッパーが〇億円で購入したいと言っているとか…。ご本人としては、特に売却も考えておらず、「何故?」という具合でしたが、ただ、長期的に見て相続については不安だったところ、相続コンサルタントの方が4時間以上も親身に相談にのってくれ、結論として、900坪の土地を売却の方向で纏められ、翌週に契約としましょう…とのこと。

 地主さんも沢山の土地を所有していますが、やはり現預金は枯渇気味のため、この土地と引き換えに数億円の現金が入ってくる・・・ということで多少浮かれては、少し不安そうな素振りを見せるご主人・・・この様子を見た、しっかり者の奥様が、心配し、人づてに私のところに相談にいらっしゃいました。

 後日、ご主人と奥様宛にご自宅に伺い、所有不動産をはじめとするご主人名義の資産を開示していただくと、何とも、物凄い数の資産をお持ちでした。しかし、その大半は、やはり経済的価値に乏しい土地であったり、不要な資産であったり・・・の状況で相続対策は、全くと言って良いほど、手が付けられていない状況でした。

 少し気になったので、上記の相続コンサルタントが最終的にどんなアドバイスをされたのかを伺ってみたところ、

「この土地、今なら高く売れます! 地主さんだから、現預金が少なくて困っているでしょ? 今、売れば、高く売れて、現金も沢山入ってきます。買主も上場会社で安心だし、今、高値で売るべきです! 売ったお金を使い切ってしまうこそが、立派な相続対策です。」

 と延々と約4時間に渡って、ひたすら繰り返されたとのこと…アドバイスはそれだけだったようです。

 しかし、私が分析すると、決して上記の土地を今、売却することが第一でなく、もっと優先すべき対策が沢山あるという結果でした。クライアントの事なので、あまり細かい内容はここでは触れられませんが、むしろ、この土地は、残しておくべき土地でした。

 相続対策において、正解は1つではなく、何が正しいかは人それぞれの価値観にもよりますが、上記を様々な視点から考えても、異なるモノでした。何よりも、地主さんの根底にあるモノを全く、理解できていませんでした。

 古い考えかもしれませんが地主一族には、その土地・地域をを守り続けるという自負とプライドをお持ちです。そのため、どうやって、自らの先祖が残してくれた土地を守り続けていくのか、そして、どうやって、その地域の価値を落とさずに高めていくのか…常に考え、常に思い悩んでいらっしゃいます。

 しかし、それを怠ったり、失敗していまうと…「ローマは一日にしてならず」とは逆の話ではありますが、崩壊するのは、簡単であり、本当に一瞬です。ましてや、代々続く土地を売却するという事は、一大イベントです。

 しかし、相続ビジネスと揶揄されるように「相続」を真剣に考える方にとって、どの相続コンサルタントに依頼するかは本当に悩ましい時代となりました。

 上記のコンサルタントは、不動産系の相続コンサルタントであるため、スポット業務であり、言い方を変えれば、「その土地を売ってナンボ」の世界。地主さんに取り入って、売るだけ売って、成功報酬(仲介手数料)を貰って、後は「知らぬ存ぜぬ」の世界です。これを日々、あちこちで繰り返すのが、スポット型業務の悪い例です。相続の実務家とクライアントとの利益相反がここで生まれます。

 とはいっても、スポット業務で、且つ上記に挙げた不動産や建築業界の関係者の方でも、素晴らしい業務をなさる方も沢山います。結局のところ、自らの利益を優先せず、どれだけクライアントに寄り添い続けられるのか…これがコンサルタントの見極めであり、あくまでクライアントによって寄り添えるエージェントであるかが一番大切な部分です。

 ちなみに、後日、地主さんから伺った話ですが、上記の相続コンサルタントに、土地の売却についてお断りの連絡をしたところ、またまた数時間に渡り罵声を浴びせられたとのことでした。(執筆者:佐藤 雄樹)