今回は介護のなかでも「在宅介護」にかかる費用と利用できる制度について一緒に考えてみたいと思います。

介護期間は10年に及ぶことも

 日本人の平均寿命は女性で86.61歳(世界一)、男性もついに80歳を超えたと大きな話題になりました。もちろん長生きすることは素晴らしいこと……ただし、健康でやりたいことができるのなら。WHOによれば、介護を必要としないで自立した生活を送ることができるいわゆる「健康寿命」は75歳だといいます。ということは、約10年間は要介護の時期を過ごすことに。

 生命保険文化センターの調査(平成24年)では、介護の期間は平均で4年9か月、4年以上も46%に上っています。期間が長くなればなるほど、費用もそして介護する側の肉体的、精神的負担も大きくなるわけです。

介護費用の目安

 では、介護費用はどのぐらいかかるのでしょうか?

 要介護度によっても違うし、在宅介護か施設介護か、また同居の親族がいるかどうかでも全く違うので、平均額というのはあまり意味のない数字です。一応の目安として家族が同居して介護する場合の介護費用の平均は、一番軽い要介護1で5万5,000円、一番重い要介護5で10万7,000円(平成23年家計経済研究所調査)というデータがあります。

 介護保険により利用限度額(地域によって異なる)までの介護サービスを受けた場合、自己負担は一割で済むということは皆さんよくご存知だと思います。要介護5の場合、利用限度額は358,300円ですから、実際に支払うのは35,830円で済みます。35,830円ならば、払えない額ではないという気もします。ところが、実際の介護費用の平均は10万7,000円ですから、この差はいったい何なのか気になるところです。

介護費用は介護保険だけでは賄えない

 在宅介護にかかる費用は、訪問ヘルパーやデイサービスの利用など介護保険による介護サービスの利用にかかる費用と、 医療費やおむつ代などの介護サービス以外の費用があります。

 介護保険による介護サービスであっても、たとえば家族が仕事を持っている場合は、利用限度額を超えてでもサービスを利用せざるを得ません。限度額を超えるといきなり全額負担になってしまうのです。

 また、家事サービスの中には介護保険の対象外となるケースもありますし、認知症の方であれば徘徊対策で警備会社と契約することもあるでしょう。介護費用は介護保険の1割負担だけでは済まないということは認識しておく必要があります。

公的補助制度

 もっとも、利用できる公的補助制度はいろいろあります。介護保険では要介護度(1~5)に応じた限度額内の介護サービスを利用するなら自己負担額は1割ですが、その1割についても、実は同じ月の合計額が上限額を超えると、超過分が申請により戻る高額介護サービス費」という制度があります。2015年8月から合計所得が160万円以上の方については、介護保険の自己負担が2割に引き上げられますが、高額介護サービス費があることにより、度負担増はある程度緩和されることになります。

 介護費用だけではなく医療費もばかになりませんね。毎年8月~翌年7月に同一世帯で医療にかかった自己負担+介護にかかった自己負担が自己負担限度額を超える場合、超過分が申請により支給される高額介護合算療養費」という制度もあります。自己負担限度額は、所得や年齢によって細かく分けられていますが、70歳以上の場合、現役並み所得者(課税所得145万円以上)では67万円、一般の方で56万円を超えると、お金が戻ってきます。

 このほか、対象となる福祉用具をレンタルした場合は、レンタル料の自己負担は1割で済みます。さらに、手すりの取り付けや段差解消などの住宅改修をする場合も、1回20万円を限度として、自己負担は1割となります。

在宅介護の負担が大きい場合は施設介護も検討

 以上、在宅での介護費用についてみてきましたが、介護費用の決め方には、介護サービスの利用量に応じて値段が決まる「出来高式」だけではありません。支払額が一定の範囲に収まる「定額式」もあります。

 出来高式は、訪問介護や訪問看護などの在宅サービスに多く、定額式は特別養護老人ホームやグループホーム、介護付き有料老人ホームなどの施設介護が中心。定額式は、どれだけサービスを受けたかにかかわらず、一定の金額を支払うため割高に見えますが、本人の要介護度や介護する家族の状況により多くの介護サービスを必要とする場合には、出来高式よりも費用を安く抑えることができます

 介護はいつまで続くかわからないので、費用だけではなく、介護する側が心身共に耐えられるかということも重要な視点です。利用できる制度は何でも利用し、デイサービスを利用するなど介護する側が息抜きできる時間を持つことも大切です。それでも、費用面や肉体的、精神的に限界ということなら、施設サービスを利用するのも選択肢でしょう。後編では施設に入所した場合の介護費用についてみていくことにします。(執筆者:草薙 祐子)

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