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介護にかかる費用と知っておきたい公的支援制度(後編)

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介護にかかる費用と知っておきたい公的支援制度(後編)

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介護サービスを受けられる施設・住宅の種類

 介護は突然やってきます。父母に介護が必要になった時、老人ホームの入居費用を賄えるのかと不安を感じている方も多いはず介護にかかる費用は、どこで、どのような介護を、誰に受けるかによって決まります。在宅で介護するのが難しい場合は、施設介護を検討することになりますが、さまざまなタイプがあるので整理してみましょう。

 まず区別しておきたいのが、「介護付き施設」と介護は別契約となっている「住宅型の施設」です。介護付き施設としては、特別養護老人ホーム(公共)、介護付き有料老人ホーム(民間)など。住宅型の施設としては、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、ケアハウスなどがあります。施設ごとの特徴と費用、サービス内容を確認した上で、施設に入居する目的が何なのか、優先順位は何なのか方針を決めることが大切です。

費用を押さえたいなら特別養護老人ホーム(特養)


介護付き施設で最も費用が安いのは特別養護老人ホーム(特養)です。

入居金が不要で、毎月の費用の目安は、8万円~13万円ぐらい

です。


 費用の内訳は、介護サービス費(要介護度に応じた定額)+食費+住居費ですが、一番安いタイプの多床室だと、1日当たりの居住費320円、食費1,380円程度。低所得者には居住費と食費の負担軽減措置があるので、居住費がゼロ、食費が300円まで軽減される方もいますから、所得の低い方は数万円に収まるということもあるわけです。

 ただし、特養は要介護3以上でないと入居できませんし、希望者が多いためどこも満員。全国で52万人以上の待機者がいるといわれているので、2~3年は待たされることを覚悟しなければなりません。そこでいわゆる特養待ちとして、在宅で介護したり、安めの有料老人ホーム、ショートステイ、お泊りデイサービスなどでつないでいるというケースも少なくありません。

民間の介護付き老人保ホームの費用はピンキリ

 この点、民間の介護付き老人ホームならすぐに入居することもできるのですが、設備やサービス面、価格に大きな開きがあります。

 入居金(一時金)300万ぐらい、月額利用料20万円前後の施設が多いですが、高額なところは、入居金として数千万円、月額利用料が40万円近くなるケースもあります。入居金を高めにして月額の費用を抑える、入居金を少なくして月額の費用を多くするなど、入居金と月額の費用のパターンを選べる施設もあります。

 入居金の償却期間は5~7年のケースが多く、入居時に一部を即時償却し、残金を一定期間で償却します。たとえば入居金が1,000万円で、入居時に250万円を償却、残金を5年で償却するというケースだと、1年で退去した場合は、(1,000万円-250万円)÷5年×(5年-2年)=450万円となり、450万円が返還金として戻ってくるということになります。

 自宅を売却して老人ホームに入居する場合、戻る家はないので、施設選びはくれぐれも慎重に。事前に評判を調べるだけでなく、何度か見学をし、よく説明を聞くことが大大切です。運営会社はしっかりしたところか、入居金や償却、返還金の説明は明確か、必要とする介護サービスや医療が受けられるか、看取り(ターミナルケア)をしてくれるか、設備の状況や掃除が行き届いているか、介護スタッフの対応はどうか、入居者の表情はどうかなど、よく調べてから納得した上で契約するようにしたいものです。


サービス付き高齢者向け住宅では介護は別契約

 住宅型施設の代表がサービス付き高齢者向け住宅です。2011年10月20日から都道府県知事の登録制が開始し、登録基準として、床面積25平方メートル以上、構造設備が一定の基準を満たす、安否確認、生活相談サービスを行う、長期入院の場合の解約制限、前払い金に関する入居者保護などの規定が盛り込まれています。

 税制優遇措置があることから、不動産や建設業界など異業種からの参入も多く、玉石混交という状態です。

 誤解されている方が多いのですが、「サービス付き」のサービスとは、あくまで安否確認、生活相談サービスがあるということ。介護サービスが必要な場合は、外部の業者と契約する必要があります。ですから、月額12万円~20万円の利用料(家賃)とは別に介護費用が発生し、この点は、ケアハウス(月額11万円~14万円)や民間の住宅型有料老人ホームも同様です。

 民間の住宅型老人ホームには、入居金1億円を超えるところもあります。24時間356日の医師常駐体制、一流料亭の食事、広い豪華な居室、娯楽施設の完備された多目的ホール…。ただし、基本的にはリッチで健康な高齢者が、ホテルライクな生活を楽しむためのもの。要介護になった時、本当に広い豪華な居室が必要か、毎日一流料亭の料理を食べたいと思うのか、冷静に判断する必要があります。


介護とマネープラン

 施設での介護を検討するのなら、

1. 入居金が準備できるか
2. 毎月の費用を払っていけるか
3. 医療費や予備費のストックできているかを見積もる

の上記3つは必須です。毎月の費用が年金だけで賄えないのなら、貯蓄を取り崩していくことになるので、長生きのリスクも当然考えなければなりません。親自身のお金で何とかならなければ、子の負担になります。子ども世帯が住宅ローンや子の教育費で家計が苦しい場合、親の介護費用の負担は重たいものがあります。


 いくらでもお金をかけられるのなら、設備サービスの面で充実して有料老人ホームを選ぶこともできますが、本人はよくても、家族がそれで生活できないというのでは意味がありません。賄える資金の中で、ベストな選択をするという姿勢が大切なのではないでしょうか。(執筆者:草薙 祐子)

《草薙 祐子》
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草薙 祐子

草薙 祐子

有限会社 FPパーク 代表 岩手県盛岡市出身。早稲田大学第一文学部、中央大学法学部卒業。編集会社、野村證券勤務後、独立系FPに。東京リーガルマインド(LEC)、ユーキャンなど大手FP資格養成学校で講師を歴任し、現在は雑誌、新聞、書籍などへの執筆とともに、金融機関や市民講座の講師としても活動中。 「生涯、元気に楽しく暮らす」をモットーに、リタイア後の資産運用や生活設計、住替え、相続など「終活」に力を入れています。難しいことを楽しく分かりやすく伝えることがモットーで、将来のお金の面での安心と、お金を有効に使って楽しく生きるための提案を積極的に展開しています。趣味は、マラソン、スキー、登山、水泳など、アウトドアスポーツ全般。 <保有資格>:ファイナンシャル・プランナー(CFP®/1級技能士) 寄稿者にメッセージを送る

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