「今年の流行語大賞は相続対策で決まり! そうだろう中島」なんて、幼なじみのしげちゃんが中ジョッキ片手にとても嬉しそうだ。今まで二人で居酒屋で飲む時の話のつまみは、決まって孫自慢に健康だった。

 そんな年金暮らしが相続の話で酒を飲むとなると流行語大賞もあり得るかもしれないと、レバーの塩焼きをかじりながら、ほろ酔いも面白がっている。しかし、熱燗を注文する頃には、酔いがさめてきた。このコラムを書いている私もほろ酔いで二人の年金の会話を実況中継することにする。

中島:
年末に発表された「今年の漢字」は「税」だったよな。
しげちゃん:
そう。今年の年末は「争」になるよきっと。なぁそうだろう。楽しいよな~。俺たち庶民には関係ないけど、相続対策なんて悩んでみたいよなぁ。うわっはっは。
中島:
昨日、小林に会ったんだよ。中学時代に卓球部だったコバだけど「あら元気だった!」なんて、元気ないんだよ。

どうしたんだって聞くと、ご主人が亡くなって相続でもめて争族なっているそうなんだ。そりゃー大変だなーなんて言いながらも、俺もおちょうしもんだから流行の最先端だな~。なんて、言っちゃったんだけど。公園のベンチに腰かけながら事情を聴いてみたんだ。

しげちゃん:
コバのところは、俺たちと同じ庶民で家しかないんじゃないのか?

それに、同窓会の時に夫婦だけで子供を生まなかったから、孫もいないって言ってたよなぁ。妻だけの相続なんだからもめる事なんか100%ない。そうだろ! 世間の常識だろ。

中島:
俺もそう思っていたんだが、相続に関しては法定相続分というのがあって貰う人がだれかによって違うそうなんだ。

配偶者と子供の場合       配偶者  1/2 子供     1/2
配偶者と親の場合        配偶者  2/3  親     1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合     配偶者  3/4 兄弟姉妹   1/4

子のない夫婦の場合の相続人だけど。自分たちの親が生きていない場合は妻が3/4で夫の兄弟が1/4。それで、兄弟も財産が貰えるなら欲しいと言っているそうなんだ。

遺してくれた預金から現金を渡してしまうとこれからの生活が不安だし、家を売って分ける事を考えているんだそうだ。専門家の先生に相談したんだけど、兄弟も法律上貰う権利があるのでどうしようもないという事らしいんだ。

しげちゃん:
そりゃ~。ヘビーだな~。そんな事になるなら相続になる前に手を打てなかったのか?
中島:
コバは、相続セミナーにも参加して勉強していたそうだから。兄弟が相続人になることも知っていたそうなんだ。

妻の言い分として、あなたにもしものことがあっても相続で揉めないように公証人役場で遺言書を作って。年金だけでなく、自宅と預金は遺してほしい。私の老後の人生も守って。と、ご主人に話をしてみたそうだが。ご主人は、応じてくれなかったそうだ。

夫の言い分としては、俺にもしものことがあれば兄貴がお前を応援してくれることはあっても相続でもめる事はないよ。兄貴はウチよりよっぽど裕福なんだから。取り越し苦労はやめろよ。遺言書なんて必要ないんだ! 書類より絆だよ

そして、遺言を書かずにご主人は突然亡くなってしまった。遺言があれば、兄弟には遺留分がないので遺産は全部コバが相続できたのに、ご主人が面倒くさがったためにこれからの老後は悲惨なものになってしまう。

しげちゃん:
遺留分って相続人なのに、お前には何にも遺産をあげないという遺言があっても法律上貰える権利の半分ぐらいはもらえるというやつだな。そうか、その権利は兄弟にはないのか。他人事ではないな。面倒くさいけど俺も遺言書の作成を考えてみるよ。
中島:
そうだな。お一人様の老後も妻が人生をエンジョイできるように俺たちもシッカリ勉強して対策をしておくようにしよう。そして、いろんな情報を集めてコバを助けてやろう。

しげちゃんは、弁護士や税理士の先生に聞いてきてよ。俺は、不動産屋の深堀に聞いてくるから。なんか、探偵みたいで楽しくなってきたな。次の飲み会のテーマはズバリ「妻の生活を守る相続対策」だね。

しげちゃん:
相続対策が俺たち庶民でも必要になったんだなぁ。やっぱり流行語大賞は相続対策で決まりだな!

 おしまい。(執筆者:岩宗 繁樹)

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