年金未納問題や基礎年金番号流出など、年金にまつわる問題が続いています。厚生年金基金の解散からも分かるように、高齢化の影響もあり、社会保険に費やす財源は依然として危機的状況です。

そんな中、「将来、安定した年金がもらえるのか」という不安を抱える人も多いことでしょう。支払う保険料は年々上がっていくのに、受給額については、なかなか明るい話が出てこないのが現状です。この先の生活に備え、できるだけ多くの年金をもらいたいというのは、国民全員の望みといっても過言ではありません。

そこで、今回は年金額を増やす手段の一つである、繰り下げ受給と繰り上げ受給についてピックアップします。

そもそも、繰り下げ受給・繰り上げ受給って?

まずは、繰り下げ受給と繰り上げ受給の基本的内容についておさらいをします。

繰り下げと繰り上げで異なる点の中には、繰り下げは「申し出制」で、繰り上げが「請求制」ということがあります。年金は、受給年齢に達したら自動的にもらえるのではなく、請求を行う必要があります。そのため、早く欲しい繰り上げの時は「請求」をしないといけないのです。

繰り下げ受給とは

繰り下げ受給とは、老齢年金を受け取ることができる人が「申し出る」ことで、66~70歳までの間に年金を先送りして受給できる制度をいいます。申し出の時期に応じて年金額が増額され、増額された金額は、一生にわたって適用されます。

なお、繰り下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金で方法が異なります。

・老齢基礎年金の繰り下げ

65歳の受給権利発生時に請求をせず、1年後の66歳以降に申し出を行えば適用されます。通常なら同時に受け取ることができる老齢厚生年金と同時に申し出る必要はなく、老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらか一方の繰り下げが可能です。

・老齢厚生年金の繰り下げ

基本的には老齢基礎年金と同じですが、65歳になる前に老齢厚生年金を受け取っていた場合は、65歳以降の老齢厚生年金の繰り下げ受給を行うことが可能です。

繰り上げ受給とは

繰り上げ受給とは、老齢年金を受け取ることができる人が「請求する」ことで、60~64歳より年金を前倒しして受給できる制度をいいます。

通常より早くから受け取ることができるメリットがありますが、請求時期に応じて年金額が減額されます。この減額された金額は、一生にわたって適用されます。繰り上げ受給の場合も、繰り下げ受給と同じく、老齢基礎年金と老齢厚生年金で方法が異なります。

・老齢基礎年金の繰り上げ

60~64歳の間に請求を行うことで受け取ることができます。繰り上げには、全額を繰り上げる「全部繰り上げ」と、一部額を繰り上げる「一部繰り上げ」があり、一部繰り上げの場合は、老齢厚生年金の支給開始時期が大きく関係します。

・老齢厚生年金の繰り上げ

こちらも全部繰り上げ、一部繰り上げの方法があります。繰り上げは必ず老齢基礎年金と同時に行わなければなりません。一部繰り上げの場合は、「特別支給の老齢厚生年金」の定額部分が支給される前に請求することが必要です。

繰り下げ受給・繰り上げ受給、お得なのは?


繰り下げ受給・繰り上げ受給について分かったところで、どのような方法を取れば得なのかを検証しましょう。

例えば、65歳の時点で80万円の年金を受給する予定の人がいるとします。この人が通常通り65歳で受給を開始した場合に加え、70歳で繰り下げ受給を行った場合と、60歳で年金繰り上げ受給を行った場合の3種類のケース別に計算を行ってみたところ、

・75歳まで受給:繰り上げ受給がお得
・76~80歳まで受給:通常の受給がお得
・81歳以降:繰り下げ受給がお得

だということが判明しました。

繰り下げ受給は、受給時期が遅い代わりに年金額が増額(増額率0.7%)し、繰り上げ受給は、受給時期が早い代わりに年金額が減額(減額率0.5%)します。つまり、70代前半までの受給の場合は繰り上げ受給、70代後半までなら通常通り、81歳以降も長生きする場合は繰り下げ受給がお得なのです。

まとめ

先に述べた金額は、あくまでも一例です。実際には、一人一人の年金受給額が異なるため、自身のケースに当てはめて計算をし直す必要があります。寿命を予知することは不可能ですが、これらの制度をあらかじめしっかり理解し、自分が将来受け取る年金額を理解しておくことが重要といえるでしょう。(執筆者:加藤 知美)