スポーツとしてのサイクリングの人気が高まる中、街中でも様々な年齢の人がサイクリング用自転車に乗る姿を見かけるようになりました。

他方、自転車による事故が大きく取り上げられることも増えてきました。今年の6月には悪質な自転車運転者に対しては、安全講習の義務付けなどを盛り込んだ、道路交通法の改正がされたのは記憶に新しいところです。

自転車事故と自動車事故の違いと問題点


自転車事故の場合、自動車による事故とどのような面で違ってくるでしょうか。

もっとも大きな違いであり、かつ特に問題なのは、自動車と違い、自転車は自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)のような強制保険ではないことでしょう。

自転車は軽車両の一種で、自動車損害賠償保障法(自賠法)の「自動車」に当たらないことから、自転車事故には自賠法が適用されません。

そのため、実際に交通事故が起こったときに誰が責任を負うかは、自賠法ではなく、民法の規定により決めていくことになります。自賠責保険のような強制保険がないため、責任を問われる人がどの程度資産・収入があるかにより、賠償してもらえるかが大きく左右されてしまうことになります。

特に自転車の場合、免許は必要ないので、未成年者が自転車を運転してぶつかり怪我を負わせてしまうケースもよく見られます。そういった場合、その未成年者には支払いができないことがほとんどでしょうから、その親にどのくらい払える資産・収入があるかによって、どの程度損害が賠償されるかが異なってきます。

また、未成年者でなくても、たとえば高齢者が自転車を運転して事故を起こしてしまった場合(こういったケースも最近は増えてきています)、通常年金暮らしの方が一般でしょうから、特にめぼしい資産がなく、年金収入だけの場合、十分に賠償してもらえない可能性もあります。

さらに自賠法の適用がないことから、自転車事故で被害者に後遺症が残っても、後遺症により今後労働能力にどのくらい影響を及ぼすことになるかの認定手続き(後遺障害等級認定)を受けることができないという違いもあります。

そのため、被害者がカルテなどの医療記録か、後遺症があるかどうか、ある場合どの程度なのかなどを証明しなければなりません。自賠責保険による認定もないので、加害者と後遺症の有る無しやその程度などで自動車事故以上に争いになることもあります

加えて、自転車の場合、任意保険に加入していることがまだまだ少ないので、事故に遭ったときに治療の内払いといった手段がなく、自分で治療費を負担しなければならなかったり、仕事を休むことで収入が得られず、かつその間の補償も得られなかったりすることもありえます。

自転車事故と自動車事故の違いと問題点

こういった、自転車事故を起こしてしまったときに高額の賠償ができない・事故の被害者になったが、治療費を自分で負担しなければならない・その後後遺症が残ったときに救済が十分でないなどの事態を防ぐためには、事前に個人賠償責任保険や傷害保険へ加入しておくとよいでしょう。

また、自転車事故の場合、そのときにあまり被害が出なかったからと警察を呼んで事故処理等をせずに終わらせ、あとで痛みが出てきたなどというケースが自動車事故以上にみられるところです。時が経ってから事故状況の確認をするのは難しいことも多いので、事故があればきちんと警察を呼んで、事故状況をその場で確認しておくことも必要でしょう。

自転車は自動車と比べると車両の価格が安く、免許制度や車検制度がないため、手軽に乗れる反面、一旦交通事故に巻き込まれるとなると、加害者にも被害者にもなりえます。ですから、いざというときに備えて、取れる対策はなるべくしておくのが大切です。(執筆者:片島 由賀)