皆さんもご存じのように金融機関の預金金利は、非常に低いですね。その影響で貸出金利も低い傾向にあります。しかも最近は金融機関が「借りて下さい」と中小企業に依頼する立場になることも多く、融資先獲得をめぐって金利引き下げ競争も起こり、低金利で資金調達できるケースが増えています。
この傾向は当分続くのでしょうが、ずっと低金利で借り入れできるとは限りませんし、金利交渉が将来必要となる場面も出てくるでしょう。その時のために、金利の交渉で知っておいた方が良い実効金利(実質金利と言われたりもします)についてご説明します。
私たちが金融機関から借り入れをする際に提示される金利を表面金利といいます。そして、預金取引も含めて計算される実質的な貸出金利のことを実効金利といいます。
実効金利を計算してみましょう
実効金利は次のように計算することができます。
分母の融資残高及び預金残高は、1年や半年といった一定期間における平均残高のことをいいます。
仮に融資の平均残高が2千万円で金利は2%、預金の平均残高が1千万円で金利は0.1%として計算してみましょう。1年間の融資利息は40万円、預金利息は1万円となります。したがって、このケースでの実効金利は以下のようになりました。
借りるときに提示された金利は2%ですが、預金も含めた金融機関との取引で考えると、もっと高い金利で借りていることになるのです。
実効金利の計算式は、融資額と預金額の差が極めて小さい場合は実効金利が非常に高くなってしまいますし、融資額よりも預金額の方が大きい場合は結果がマイナスになってしまう問題点もあります。
しかし、中小企業の場合は融資額の方が大きいことがほとんどかと思いますので、まずは自社が実質的にはいくらの金利負担になっているか確認してみると良いでしょう。
金利交渉の材料に
金融機関からは2千万円借りているけど1千万円預金しているので、実質的には差額の1千万円を借りているのと同じことになります。そのため、
預金残高は少ないよりも多いほうが実効金利は高くなってしまいます。
金融機関担当者から「積立預金をしてくれ」、「普通預金の残高をいくら以上あるようにしてくれ」と依頼されたことはありませんか。あるいは、定期預金を解約しようとすると、「今後の審査に影響してしまいます」と言われたことはありませんか。
金融機関としては、貸出金の回収に懸念が生じた場合は預金を拘束する目的もありますが、融資先の実効金利を引き上げる狙いもあるのです。
また、金融機関と取引をしていれば、利息の支払い以外にも手数料(振込手数料等)を支払っているはずです。それらも金利に換算すればさらに高い実効金利となるでしょう。
もちろん、金融機関は業績や担保等の要因によって、そして取引採算を考えて貸出金利を決定します。しかし、自社の実効金利を計算してみてかなり高いようなら、どれだけ手数料を支払っているか、どれだけ預金をしているかによって、金融機関との金利交渉はしやすくなるでしょう。(執筆者:瀬野 正博)