まだ50歳なのに、「国民年金保険料を払い終えて、ホッとしたわ」と、勝手に『国民年金卒業宣言』をする人がいました。

「だって、25年間払ったんだから、それで義務は果たしたわけでしょ?」

自信あふれる笑顔に、気の弱い私は解釈の間違いを面と向かって指摘できませんでした。

国民年金は、「25年」では卒業できない


前回の記事で、老後の年金を受給するためには原則として25年以上の加入期間が必要だというお話をしました。その「25年」の計算方法に誤解があって受給できる年金を請求していない人のために、コラムを書きました。

しかし、ここで勘違いしていただきたくないのは、「25年」というのは国民年金加入のゴールではないということです。25年間保険料を納めて(その間に保険料が払えないときは免除を受けるなどして)はじめて老齢基礎年金の受給資格が発生するスタート地点でしかありません

つまり、25年間保険料を納めただけでは「卒業」はできず、必要最低限の単位だけ取得して「中退」したことになります。国民年金制度の義務を果たしたことにもなりません。

国民年金の加入義務は40年間。保険料納付が40年に足りない場合は減額される


では、何年間加入すれば、国民年金法の義務を果たしたことになるのでしょうか。

それは、20歳から60歳までの40年間です。本人は「もうお終い」と思っていても、その40年間は強制適用なので自由に脱退することはできず、未納になっているだけなのです。

ですから、保険料の督促が来て「25年、払ったはずだ!」と主張するのは無意味なことです。

そして、将来の老齢基礎年金は、40年間(480月)、1か月も欠けることなく保険料を納めた人が、満額を受給できます。足りない月数は減額される仕組みで、25年間(300月)納めてやめてしまった人の老齢基礎年金額を平成27年度価格で計算すると、

780,100円× 300/480 = 487,562.5

つまり25年間だけ納めた人は40年間納めていた人より30万円近く減額された老齢基礎年金を、生涯受給することになるのです。

なお、免除を受けた期間については、国庫負担分(税金でまかなわれる部分)だけ支給されます。国庫負担率は、平成21年3月までは3分の1、平成21年4月以降は2分の1です。ただし、学生納付特例と若年者納付猶予には国庫負担がないので、その間の年金は「0円」です。

今後、10年だけ納めてやめる人が続出しないか心配


平成29年10月支給分から、老齢基礎年金の受給資格期間が「10年」に短縮される予定です。

10年納めれば老後の年金が受けられるなら、と、10年で保険料の納付をやめてしまう人たちが続出するのではないかと心配しています。25年でやめる発想の人たちは、10年で済むなら、そうするのではないでしょうか。

しかし、先ほどもご説明したとおり、納めた分しか年金につながらないので、将来受給できる老齢基礎年金は4分の1、年額で195,025円(平成27年度価格)ということになります。

障害年金や遺族年金が受給できなくなる人も


障害年金を受給するためには、次のいずれかの保険料納付要件を満たす必要があります。

(1) 20歳になったときから初診日のある月の前々月までの間に、保険料納付済みまたは免除を受けた期間が3分の2以上あること(つまり、未納期間は3分の1未満)

(2) 初診日において65歳未満の人は、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がないこと(平成38年3月までの時限措置)

遺族年金にも同様の保険料納付要件があり、その場合は「初診日」を「死亡日」と読み替えます(以下、ここでは「事故日」といいます)。

上記の保険料納付要件は、事故日の前日において満たしている必要があります。事故日に慌てて保険料を納める「後出しじゃんけん」は認められません。

事故日が60歳以降の場合において、(1)の要件を計算すると

480月 × 2/3 = 320月

320月以上の保険料納付済期間または免除期間が必要です。25年(300月)でやめてしまった人は、月数が足りません。(2)の要件(事故日に65歳未満で、60歳になるまでの直近1年間に未納がない)に該当しなければ、受給できないことになります。

遺族年金では「老齢基礎年金の受給資格期間(25年)を満たしていればよい」という長期要件でも受給できますが、この場合の受給資格期間は「25年」のまま変更されません

したがって、改正実施後10年以上25年未満で保険料納付をやめてしまった人は、事故日のタイミングにより障害年金も遺族年金も対象から外れることになりますのでご注意ください。(執筆者:服部 明美)