確定拠出年金制度の導入企業数は2万社を超え、企業型確定拠出年金の加入者数も530万人を超えました。(2015年10月末 厚生労働省年金局発表)

導入企業の増加に伴い、中途退職された方から、退職後の確定拠出年金について「どのような手続きをとるべきか?」、「脱退はできないのか?」と言った疑問や不満の声も聞かれるようになりました。

転職先に確定拠出年金制度がある方は迷わずそちらの企業型年金に加入することになりますが、転職先に確定拠出年金制度がない場合や、独立開業して個人事業主になる場合、あるいは就業しない場合等は、ご自身で個人型確定拠出年金への移換手続きを行う必要があります

しかし、届いた書類を見てもどうして良いか分からずほったらかしに、という方も少なくないようです。

そこで、退職後、確定拠出年金についてご自身で手続きを行わなければならない方に、お役に立つ情報をお届けしたいと思います。

脱退できる? それとも加入?
脱退の要件と退職後の移換方法

退職後は個人型確定拠出年金に加入し、以下2つのいずれかを選択することになります。

(1)加入者として拠出を続ける
(2)運用指図者として掛金を拠出せずに運用を続ける

要件に該当すれば脱退することも可能ですが、脱退については厳格な要件があり、基本的には給付開始となる60歳まで資金を手にすることができません。(加入者期間が10年に満たない場合は61歳~65歳からと給付開始年齢が引き伸ばされます。)

「自分のお金なのになぜ自由にできないの?」と思う方もいるかもしれませんが、確定拠出年金は貯蓄制度ではなく、老後の所得保障を目的とした年金制度ですので致し方ありません。

まずは、ご自身の場合、どのような方法をとることができるか、下のチャートを使って確認してください。

尚、脱退の要件については、60歳未満であること、確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと、企業型確定拠出年金の加入者資格喪失時に脱退一時金を受給していないことも同時に満たしている必要があります。

チャート①2

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*1:継続個人型年金指図者は、企業型年金加入者の資格を喪失後、個人型確定拠出年金の運用指図者となった方で、その申し出をした日から起算して2年経過している方

(1)加入者は、個人型確定拠出年金に加入し、掛金を拠出しながら運用指図を行います。

(2)運用指図者は、個人型確定拠出年金に加入し、掛金は拠出せずに年金資産の運用指図のみ行います。

退職後、会社員または個人事業者等(第1号被保険者)になった方は、個人型確定拠出年金の加入資格がありますので、(1)加入者または(2)運用指図者を選択することができます。

公務員または専業主婦等(第3号被保険者)の方は現在、個人型確定拠出年金の対象者ではありませんので、(1)加入者として掛金を拠出することができず、(2)運用指図者になります。

退職後、個人型確定拠出年金への移換手続きも脱退の手続きも行わず、6か月経過した場合には、資産が現金化され、国民年金基金連合会に自動的に移換されます。これを自動移換といいます。

「ほったらかしておく」と自動移換の手続きがとられるわけですが、自動移換については次の点に注意が必要です。

●全く運用できないため資産を増やすことができない
●資産から毎月51円(年間612円)の管理手数料が差し引かれる
●自動移換の期間は加入期間とみなされない。
(確定拠出年金の通算加入期間が10年に満たない場合は受給開始時期が遅れ、最高65歳まで引き伸ばされます)

どこで加入するの? 加入手続きと手数料

個人型確定拠出年金は運営管理機関(取り扱い金融機関)を通じて加入します。運営管理機関は銀行、証券会社、信用金庫、保険会社等197社(2015年10月末現在)あり自由に選択することができます。

企業型と異なり、掛金が全て個人負担になるだけでなく、口座の維持管理手数料も個人で負担することになります。この維持管理手数料は金融機関によって異なります。

個人型手数料比較

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支払先別に見ると、国民年金基金連合会への手数料はどの金融機関で加入しても同じですが、運営管理機関の手数料は金融機関によって異なり、中には、資産額が50万円以上の場合は運営管理手数料が無料という金融機関もあります。つまり比較のポイントは運営管理機関の手数料です。

全般的に加入時2,777円、年間維持管理手数料が4,000円~6,000円程度の金融機関が多いようです。

手数料はどこで加入するかの大切な判断基準です。しかし、金融機関の選定においては、手数料だけでなく、商品ラインナップやサービスなど総合的に比較ご検討ください。金融機関については比較サイト等参考にして、詳細については金融機関の担当窓口にお尋ねください。

自動移換の場合も下記の通り手数料がかかります。自動移換から個人型または企業型確定拠出年金に加入する際には「自動移換後の手続き」欄の手数料がかかります。自動移換の状態で年金を受給することはできず、いずれにしても個人型または企業型確定拠出年金に加入することになります。

自動移換

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掛金を拠出する? しない? 移換方法の特徴と選択

それぞれの移換方法の長所(◎)短所(△、×)を下表にまとめました。

移換方法の特徴

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掛金は5,000円以上、上限金額まで1,000円単位で任意に設定できます。

 個人事業主等(第1号被保険者)………上限6万8,000円
 会社員(第2号被保険者)………上限2万3,000円

確定拠出年金の(1)加入者は、掛金が全額所得控除の対象となります。会社員や個人事業者として収入(課税所得)がある方は、拠出することにより所得税・住民税が減額されるというメリットがあります。

しかし、収入がない方など、課税所得がない場合には掛金が所得控除になるメリットはありません。

拠出した資金は60歳まで引き出すことができなくなりますので、他の資金需要との兼ね合いも考えて掛金の金額をご検討ください。

また、個人事業主等(第1号被保険者)の方は国民年金保険料1万6,260円/月(平成28年度価額)を納めた上で、掛金を拠出することになります。国民年金保険料を納付していない月に確定拠出年金を拠出することはできません。

掛金の金額については、途中で金額を変更することも可能ですし、加入者から運用指図者に変更、逆に運用指図者から加入者に変更することも可能です。収入や家計の状況に応じて掛金を拠出するか、金額をいくらにするか柔軟にお考えいただけます。

(1)加入者として拠出するか、拠出せずに(2)運用指図者となるか、判断に迷われる方は下のチャートも参考にしてください。

確定拠出年金の脱退要件

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尚、第1号被保険者の方は、国民年金基金と個人型確定拠出年金の両方を掛けることもできます。この場合、国民年金基金の掛金と個人型確定拠出年金の拠出金の金額は合わせて6万8,000円/月が上限となります。

自動移換のままでも良いケース


例外的に、あえて自動移換のままにして、60歳直前に個人型確定拠出年金に移換するという方法が良い場合もあります。

例えば、あと数年で60歳になるような運用期間が短い方などが、元本確保型での運用を希望される場合、

・通算加入期間は10年を満たしている
・新たな掛金の拠出は望まない
・60歳まで1年以上ある

以上の条件を満たす方は、維持管理費用が612円/年と安価な自動移換のままにするのも一手です。

運用指図者として元本確保型商品で運用されますと、運用益は期待できないにも関わらず、年金資産から年間5千円前後の手数料が引かれます。原則論から外れてしまいますが、リスク商品での運用を希望しないのであれば、自動移換の方が資産の目減りが少なくて済むという考え方もできます。

企業型確定拠出年金では、会社任せで良かった金融機関選びも退職後はご自身で行うことになります。「制度の説明や運用商品に関する研修もあり、今思えば恵まれていたなあ」とのお声も。

個人で加入するとなると何かと大変ですが、ご自身の老後の大切な資金となりますので、金融機関の選択や加入方法についてご自身で考えご判断いただきたいと思います。(執筆者:小谷 晴美)