高齢の親が亡くなり相続した空き家、すでに自宅はあるし、特に使う予定もないので不動産会社に相談した所、売却を進められてそのまま売却、というのはよくあるケースである。

国土交通省の≪世帯にかかる土地基本統計≫によれば相続をした世帯主は60歳以上が約6割を占め、50歳以上も含めると8割を超える。年齢からすれば既に持ち家を持っている世帯がほとんどであろう。

特に使い道がなければ売却は有効な選択肢であり、得に2~3月は不動産の需要期という事もあり、不動産会社に進められるままに、すぐに売却をしてしまうこともあると思うが、今年は少し待った方が良さそうだ

2016年度税制改正、4月以降は住んでなくても3,000万円特別控除が利用可能に!

理由は昨年12月24日に閣議決定した2016年度税制改正の大綱に盛り込まれた『空き家にかかる譲渡所得の特別控除』の新設である。

この特例は、相続により取得した一定の要件を満たす家屋(土地)を譲渡した場合、被相続人が住んでいなくても譲渡所得から3,000万円と控除できる3,000万特別控除が使えるようになるという制度だ。

不動産を売った時の税金は?


そもそも、不動産を売った場合、どのような税金がかかるのだろうか。

不動産を譲渡した場合には、譲渡価格から取得費と譲渡に係る諸経費を差し引きしたものが譲渡所得となり、所有期間に応じた税率により所得税と住民税が課税される。尚、申告分離課税である。

【譲渡所得の計算】
譲渡価格-取得費-譲渡に係る諸経費(仲介手数料等)-特別控除=譲渡所得

【譲渡所得の税率】


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ここで、取得費とは購入時の諸経費を含んだ建物価格から減価償却した後の価額であるが、相続等により取得した場合は、ほとんど購入額が不明な場合が多く、その場合は譲渡価格の5%となる。

つまり、譲渡価格の約95%が所得としてみなされる為、収める譲渡税は馬鹿にならない。又、仮に取得費が判明した場合でも貨幣価値も異なる為、少額である事が多い。

ただし、譲渡した家屋(土地)が居住用のものであれば居住用財産の3,000万円特別控除により譲渡所得から3,000万円を差し引く事が出来る。相続の場合、被相続人が継続して住んでいた場合のみ、適用する事が出来た。だが、核家族化が進む今日では、親と別居している事が多く、相続した家はたいていマイホームではない為、3,000万円特別控除は使えなかった。

最大600万円も税金が安くなる!


前述の通り、今回の特例が新設されると、相続した不動産を今年の4月以降に売れば、マイホームでなくても3,000万円特別控除を利用する事が出来るようになる。

相続で単純承認の場合には所有権期間は初代オーナーから引き継がれる為、ほとんどが5年超の長期譲渡所得に区分される。長期譲渡所得の税率は20.315%であるので、最大で3,000万円×税率20.315%=609.45万円も収める税金を減らす事が出来るようになる

(例)昭和50年に親が購入し住んでいた自宅敷地(購入額は不明)を相続により取得後、5,000万円で売却をする場合。
※適用要件は全て満たしているものする。

≪平成27年3月に譲渡した場合≫※譲渡に係る諸経費を300万円とする。
譲渡価格5,000万円-取得費(5%)250万円-諸経費300万円=譲渡所得4,450万円
譲渡所得4,450万円×20.315%=9,040,175円(所得税、住民税)

≪平成28年4月に譲渡した場合≫
譲渡価格5,000万円-取得費(5%)250万円-諸経費300万円-特別控除3,000万円
=譲渡所得1,450万円
譲渡所得1,450万円×20.315%=2,945,675円(所得税、住民税)

この特例は昭和56年5月31日以前の旧耐震基準の際に建築されば家屋(区分所有建物は除く)を取得した個人が一定期間内に更地にして譲渡するか、耐震補強工事を行い譲渡した場合に適用される。

主な要件は以下の通りである。

≪適用要件≫
・当該被相続人の居住用家屋であった事。
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋である事。
・平成28年4月1日~平成31年12月31日までの間の譲渡であり、且つ、当該相続の時から当該相続の開始があった日以後3年を経過する年の12月31日迄に譲渡事。
※例えば平成27年10月30日に相続があった場合は平成30年12月31日までとなる。
・譲渡価格は1億円以下。
・当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていた事が無い事。
・相続税の取得費加算の特例とは選択適用。

さて、それでは特例を利用する為に売初めの時期を4月以降にずらさなくてはならないかと言えば、実はそうでもない。

不動産の売買は契約と引き渡しの2度に分かれるが、『譲渡』とは原則引き渡し時の事を指す(同時履行の場合)。その為、平成28年2月に売買契約を締結した場合でも、引き渡しの時期を平成28年4月1日以降にすれば、譲渡をしたのは平成28年4月となり、本特例の適用範囲となるので、売却を依頼する不動産会社と条件面をよく相談をして欲しい。

又、建物を買主が解体をする場合には特例の対象外となるので注意が必要である。

いずれにしても、本特例は納税者にとっては有利な税改正であるため、成立を見守りたい。(執筆者:櫻井 定治)