株式の譲渡による繰越損失がある場合、確定申告をすれば利益と損失を相殺することにより税金の還付を受けることができます。

そのような場合において、「所得は0になっても扶養から外れるの?」といった質問が「マネ達」読者から届きました。

そういった疑問を解決するため、今回は株式に関する確定申告と扶養との関係などについてお話しします。

1. 源泉分離課税と申告分離課税の選択

一般の方は、株式の取引口座について、源泉徴収ありの特定口座を取引口座として選択している場合がほとんどだと思います。

この場合、株式の売買や配当による所得については源泉分離課税(確定申告しない)と申告分離課税(確定申告する)を選択できます。

損失の繰り越しを行う場合や、繰り越した損失を利益と相殺したい場合は、申告分離課税を選択しなければなりません。

2. 所得税・住民税における扶養との関係


結論は次のようになります。

源泉分離課税を選択した場合

上場株式等の譲渡所得や配当所得は扶養の判定に影響しない。

申告分離課税を選択した場合

繰越控除相殺前の譲渡所得・配当所得の金額で判定される。

所得税・住民税で配偶者控除や扶養控除をとることができるかどうかは、納税者の配偶者や親族の「合計所得金額」が38万円以下であるかどうかにより判定します。

また、配偶者特別控除の控除額も「合計所得金額」によって決まります。

この合計所得金額は、給与所得など各種所得金額の合計額の事ですが、源泉分離課税を選択した場合の上場株式等の譲渡所得や配当所得は含まれません。

また、申告分離課税を選択した場合、繰越損失控除前の譲渡所得や配当所得が合計所得金額に含まれることになります。

上場株式等の繰越損失があって、38万円を越える利益がある場合、確定申告をすれば税金の還付を受けることができますが、扶養からは外れることになってしまいます。どちらが特になるか慎重に考える必要があります。

3. 健康保険・厚生年金における扶養との関係

サラリーマンなどが加入する健康保険・厚生年金の扶養に入れるかどうかは、経常的な年間収入が130万円以上*(年金受給者、障害者の場合は180万円以上)あるかどうかによります。

この経常的な収入の範囲の取り扱いが、加入する健康保険組合あるいは年金事務所によって異なります。配当金については収入金額が、経常的な収入に含まれる場合が多いようです。

株式の売却収入については、不動産の売却収入などと同様に非経常的な収入と扱われる場合が多いようですが、継続的に売買している場合、経常的な収入と考えられる場合もあります。

加入する健康保険組合や管轄の年金事務所に取り扱いを問い合わせた上で、確定申告するかどうか判断する必要があります。

*2016年10月以降、一定の要件を満たす場合は106万円以上

4. 上場株式等の譲渡所得・配当所得と国民健康保険料との関係

自営業者などが加入する国民健康保険については、自治体によって保険料の算定の取り扱いが異なります。

以下、東京都渋谷区を例に説明させていただきますが、多くの自治体で同じように取り扱われています。

源泉分離課税を選択した場合

譲渡所得・配当所得は国民健康保険料の所得割の金額に影響しない。

申告分離課税を選択した場合

上場株式等の譲渡所得と配当所得の損益通算後、および繰越損失控除後の所得金額が所得割の金額に反映されます。

5. 保育料や幼稚園の補助金との関係


保育園や認定子供園の保育料、幼稚園に子供が通っている場合に受けることができる補助金の金額については、その世帯の所得税額や住民税額をベースに算定されています。

国民健康保険と同様、自治体によって取り扱いや金額が異なります。以下、東京都渋谷区を例に説明します。

東京都渋谷区の場合、区民税の所得割が金額算定のベースになっているようです。

源泉分離課税を選択した場合

譲渡所得・配当所得は保育料や補助金の金額に影響を与えない。

申告分離課税を選択した場合

上場株式等の譲渡所得と配当所得の損益通算後、および繰越損失控除後の所得金額が保育料や補助金の金額に影響を与える。

6. まとめ

上場株式の譲渡所得や配当所得について申告分離課税を選択した場合、所得や税額を基準とする様々なものに影響を与えます。

繰越損失控除前の譲渡所得や配当所得の金額が大きい場合など、確定申告をしない方が有利な場合もあります。

源泉分離課税と申告分離課税、その選択はよく考えたうえで行ってくださいね。(執筆者:高垣 英紀)