民法(相続法)の改正検討項目

婚外子の法定相続分について民法が改正されたのは記憶に新しいところです。旧態依然としていた民法にメスが入ったのに伴い、現在、民法上の相続ルールの見直し作業が法務省により進められています

改正が検討されている主な項目として、下記の5点が挙げられます。

(1) 配偶者の居住権保護
(2) 配偶者の本来の貢献に応じた遺産分割の実現
(3) 寄与分制度の見直し
(4) 遺留分制度の見直し
(5) 自筆証書遺言の方式緩和

これらの項目はいずれも、どこの家庭でも起こりうる問題が絡んでいます。

これが実現すると、かなり大規模な改正になりますが、相続に関する民法の大きな改正は、1980年に配偶者の法定相続分が引き上げられて以来です。

現行の民法は、配偶者の“内助の功”を強く意識したものとなっています

昔から内助の功を立てるのは奥さんや娘、息子の嫁といった女性ですが、一方で女性の社会進出が進み、中には女性が家計の中心となっている家庭もある現在では、内助の功という考え方が希薄になりつつあります。

しかし、依然多くの女性が家族の中で果たしている(もちろん女性だけとは限りませんが)、貨幣金額的には評価しがたい「貢献」を、いかに相続に反映させるかは大きなテーマであり、今回の改正検討事項も、配偶者の保護や介護者の負担考慮を念頭に置いたものとなっています

配偶者保護のための改正は?


今回は(1)と(2)について書きます。

(1) 配偶者の居住権保護
(2) 配偶者の本来の貢献に応じた遺産分割の実現

(1) 配偶者の居住権保護

夫婦のどちらかが亡くなった場合、残された方は、住み慣れた家にそのまま住み続けたいと思うのが一般的でしょう。

しかし、相続する権利は子どもにもありますので、遺産分割の結果によっては配偶者が住む家を失ってしまう可能性もあります。

「長生きのリスク」が指摘されるほどに平均寿命が伸びた今、残された配偶者が相続後、数十年単位で生活を継続していくことは十分考えられ、配偶者の生活をどのように保障するかは重要視される課題です

そこで今回の見直しの中では、配偶者の生活保障としての観点から、相続時に住んでいた家への短期的な居住権に加え、「長期居住権」を新設する案が検討されています。

(2) 配偶者の本来の貢献に応じた遺産分割の実現

一口に夫婦と言っても、長く連れ添った夫婦もいれば、婚姻期間の短い夫婦、婚姻期間は長いけれども別居していた夫婦など様々です。

一方、現在の制度では、配偶者の法定相続分は婚姻期間の長短に関わらず一律に定められています

そのような制度は公平性を欠くのではないか、ということで、配偶者の具体的な貢献度を遺産分割に反映させる案が議論されています

具体的には

●「離婚の際の財産分与の考え方を準用し、婚姻後に増加した財産に対し、配偶者のみを対象とする寄与分を認める」

●「婚姻期間が一定の年数以上の夫婦間で法定相続分を引き上げる」

などの案が検討されています。

夫婦の「共有財産」どう分ける?


民法には「実質的共有財産」という概念があります。

これは夫婦の財産におけるまさしく“内助の功”で、名義がどちらかになっていたとしても、夫婦の協力なくしては築くことができなかったものとして、実質的に夫婦の共有とみなされる財産を指します

しかし、内助の功はいわゆる家事に代表されるもので、そもそも対価を貨幣金額的・権利的に表すことが難しいという側面もあります

どのような形になるのか注目されるところですが、かえって紛争が複雑困難になるのではないかといった点等も危惧されています

最後に私の個人的な考えですが、「婚姻期間が伸びるほど配偶者の法定相続分が高まっていく」という方法はどうかと思っています。

例えば、30歳で結婚して80歳で死別したと仮定すると、婚姻期間は50年。子育てが概ね終わるであろう60歳に達するまでの30年間に、少しずつ法定相続分を上げていくという案です。

結婚当初から10年間は配偶者の取り分が3分の1、10年超20年以下は2分の1、20年超は3分の2…というように。一案ですが、どうでしょうか。(執筆者:髙原 誠)