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パナマ文書の公表と同日に発表された「国の借金」について思うこと

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パナマ文書の公表と同日に発表された「国の借金」について思うこと

5月10日、パナマ文書の公表が話題になるなか、ひっそりと財務省のホームページでは日本政府が負う国債をはじめとする負債の状況が公表されていました

「国の借金」というような言い方もされますが、増税実現に向けて、国民が危機感を抱かせるために財務省が宣伝に使っている数字でもあります

今回は、パナマ文書と同日に発表されたこの数字を通じて、日本の財政破綻論について思うことを書いていきます。


世界と逆行している今の日本の流れ

財務省の発表によると、2016年3月末においての国債、借入金、政府短期証券の合計金額は1,049兆3,661億円ということでした。

「どんどん増えている」というイメージが強いですが、2015年3月末と比較すると3兆9,911億円減ったらしいです

とはいえ、ものすごい金額の負債があることには変わらないようにも見えてしまいますが。

こういった数字を見せられてしまうと、直感的に「やばいんじゃないの…」という気持ちになってしまいませんか?

財務省はこのことを巧みに利用して、「消費税の増税が必要だ」というイメージを僕たちに抱かせようとしているのでしょう。

このような形で消費税の増税が推進される一方で、法人税の減税が進められようとしているのが今の日本の流れなんです

今まさに世界で注目を集めているパナマ文書は、この流れとはまったく正反対のものです。

パナマ文書はグローバル企業の租税回避の実態を暴きうるリークですが、これによって世界的にグローバル企業の納税姿勢について厳しい目が向けられているわけです。

企業が不当な節税によって支払いを回避した税金は、結局は国民が負担することになってしまうわけですから、当然と言えば当然の話かもしれません。

このように、世界では「企業にちゃんと税金を支払わせることで、国民の税金負担を減らそう」という流れがあるわけです

一方で日本では、消費税の増税と法人税の減税が進められているわけですが、これは世界と逆行するような流れになってしまっています

日本が財政破綻しないために必要なことは何か?


日本は財政破綻するのかしないのか、これはよく目にする議論です。

いろんな論点がありますが、僕のこの問題について考えるときに一番思うのは、ストックよりもフローの改善に目を向けるべきだということです。

この話題になると、どうしても国の借金がいくらあるというストック面のことばかりが強調されてしまうように感じます。

たしかに、日本の負債は現実として1,000兆円を超えているわけですし、これはこれでインパクトのある数字です。

でも、僕たちの家計的な感覚と違って、財政は借金をゼロにする必要はありませんし、1,000兆円を超える負債を一度に返済しなければならないわけでもありません。

必要なのは、毎年国債を発行して借り換えをし続けられることです。

借り換えをするための信用さえ維持できるのであれば、負債が減らなくても別に問題はありません


その信用を維持するためにまず大事になってくるのは、財政収支というフローの面での健全化です

ということは、その実現するに必要なデフレ解消、景気回復を最優先にすべきはずなんです。

そう考えたときに、景気の腰を折りかねない消費税の増税を今のタイミングでやるべきなのかどうか

過去を振り返ってみても、消費税の増税によって幾度となく景気の腰が折られてきています。

このことは、失われた20年にも少なからず影響を与えているのは明白なことです。

そして、前回の8%への消費税の増税でも、また同じようなことが起こりました。

こんなことでは、むしろ消費税の増税をしたほうが財政破綻に近づくんじゃないか、とさえ思ってしまいます。

市場参加者は日本の財政破綻をどう見ているか?


細かい政策論はさておき、相場を見てみるとどうでしょうか。

相場には、将来を予測する市場参加者たちが利害をかけてぶつかり合った結論が出てきます。

もし彼らが本当に「日本の財政破綻が確実だ」と考えているのであれば、そういう動きが相場に出てくるはずです。

例えば、国債は買い手がつかず暴落しているはずだし、それに伴って円は暴落しているはずです。

日銀が買い支えているから国債の値段が落ちないというのであれば、そんなことをしている円の信認が落ちるはずなので、やっぱり円は暴落しているはずです。

ところが、円は暴落どころか、最近ではむしろかなり上げちゃっていますよね。

まあ、この上げは短期的な投機筋の仕掛けという側面が大きいので、一概には言えないところもありますが。

ただ、少なくとも「日本の財政破綻が確実だ」という動きでない、ということは言えると思います

こういった状況の中、必要以上に財政破綻を宣伝して市場参加者の不安を煽ったり、挙句の果てには、それを引き起こしかねないこのタイミングでの消費税の増税をやろうとすることは、本当に日本にとってプラスになるのでしょうか。

パナマ文書はこの問題とは直接の関係はありません

ですが、もしかしたらそれがきっかけで国民のムードが変わり、消費税の増税の延期あるいは中止が後押しされることはあるかもしれません。

国民の借金と奇しくも同日に発表されたパナマ文書によって、財務省が抱く消費税の増税への野望が打ち砕かれたとしたら、これほど痛快で皮肉な話はないのですが…。(執筆者:貝田 凡太)

《貝田 凡太》
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貝田 凡太

貝田 凡太

京都大学経済学部卒業。在学中に公認会計士試験に挑戦したことがきっかけで、投資に興味を持つ。試験合格後、いったんは監査法人に就職するも、自由な投資環境を求めて専業トレーダーとして独立。主に株式投資は新興株式の長期保有をしつつ、日々はFX投資を中心にデイトレードを行っている。現在、トレードのかたわら、FX投資に関するブログやメルマガなどを執筆中。 寄稿者にメッセージを送る

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