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確定拠出年金の対象者が拡大されると「401k難民」は減少に向かう

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確定拠出年金の対象者が拡大されると「401k難民」は減少に向かう

個人型の確定拠出年金の対象者を拡大する法案が、平成28年4月15日に参議員本会議で、また平成28年5月24日に、衆議員本会議で可決されました。

これにより国民年金の第3号被保険者となり、自分で保険料を納付する必要のない専業主婦も、平成29年1月1日から、個人型の確定拠出年金に加入できるようになります。

また国家公務員や地方公務員などの公務員、勤務している会社が次のような企業年金を実施している厚生年金保険の加入者も、個人型の確定拠出年金に加入できるようになります。

・厚生年金基金
・企業型の確定拠出年金
・確定給付企業年金

ただ国民年金の保険料の納付を、免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予、学生納付特例)されている方は、引き続き加入できません。


3つの段階に用意された節税のメリット

この改正を受け雑誌や新聞などは、個人型の確定拠出年金に加入すると、どんなメリットがあるかについての、特集を組んでおります。

こういった特集を読んでみると、その多くは次のような3つの段階において、節税のメリットがあると記載されております。

(1)掛金を拠出するとき

例えば年末調整の際に、「配偶者控除」や「扶養控除」といった所得控除を受けると、その分だけ所得税が安くなるので、納めすぎた所得税が還付されます。

拠出した個人型の確定拠出年金の掛金も、「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除になりますので、これらと同じ仕組みで所得税が安くなり、納めすぎた所得税が還付されます。

(2)拠出した掛金を運用するとき

例えば定期預金や投資信託を購入した場合、その利子、分配金、譲渡益などに対して、所得税:15%、住民税:5%、復興特別所得税:0.315%(平成49年12月31日まで)を併せた、20.315%が課税されます。

しかし拠出した個人型の確定拠出年金の掛金で、これらを購入した場合には、非課税になるのです

(3)拠出した掛金とその運用益を受け取るとき

確定拠出年金に加入した期間が、通算して10年以上あると、60歳から「老齢給付金」を受給できます。

これを一時金で受給する場合は「退職所得控除」が適用され、また年金で受給する場合は「公的年金等控除」が適用されるので、金額によっては非課税で受給できます。

以上のようになりますが、専業主婦の方は年収を103万円以内に抑えることにより、所得税を納付していない場合があり、そうなると掛金を拠出しても、(1)のメリットを享受できません。

しかし専業主婦の方が、掛金を拠出できるようになると、「401k難民」が減少に向かう可能性があるので、全く意味のないことではないと思うのです。


822億円にも上る401k難民の個人別管理資産

確定拠出年金は個人型の他に企業型があり、両者の大きな違いとしては、個人型は加入者本人が掛金を拠出します

それに対して企業型は、従業員の福利厚生の一環として実施されているため、原則として加入者が勤務している会社が、掛金を拠出するのです

企業型の確定拠出年金が実施されている会社を退職した場合、会社が拠出した掛金と、その運用益で構成された「個人別管理資産」を、転職先が企業型を導入していれば、そこに移管します。

また転職先が企業型を導入していない場合や、退職して専業主婦になった場合は、脱退一時金の支給要件を満たす方を除き、個人型の確定拠出年金の口座を開設して、そこに個人別管理資産を移管しなければなりません。

もし退職から6カ月以内に、このような手続きを行わないと、その個人別管理資産は現金化され、国民年金基金連合会に自動的に移換されます

また国民年金基金連合会に自動的に移換されると、毎月51円の管理手数料を取られ続けるため、個人別管理資産はどんどん目減りしていくのです

このように個人別管理資産を、企業型や個人型の確定拠出年金に移管せず、自動的に移換された国民年金基金連合会に放置している方は、「401k難民」と呼ばれております。

難民という言葉が使われているのは、国民年金基金連合会に放置していると、個人別管理資産は完全に自分のものにはなっておらず、中途半端な状態で、さまよっているからだと思います。

このような中途半端な状態だと、60歳に達しても老齢給付金を受給することはできず、これを受給するには企業型や個人型の確定拠出年金に、個人別管理資産を移管しなければなりません

なお国民年金基金連合会の調べによると、401k難民は平成25年度末時点で43万5677人もおり、また放置された401k難民の個人別管理資産は、平成24年度末時点で総額約822億円にも上るそうです。

新たに掛金を拠出できれば401k難民は減少に向かう


401k難民になってしまう理由のひとつとして挙げられるのが、新たに掛金を拠出できないという点になります。

例えば企業型の確定拠出年金が実施されている会社を退職して、専業主婦になった場合、個人型の確定拠出年金に個人別管理資産を移管しても、現在は新たに掛金を拠出できません。

つまり時間と手間をかけて手続きを行い、個人型の確定拠出年金の口座を開設しても、個人別管理資産の資金を使って、運用するだけしかできないのです。

金利が低い現状から考えると、これでは自動的に移管された国民年金基金連合会に、個人別管理資産を放置しておくのと、あまり変わりがなく、手続きが面倒という方は、放置を選択すると思うのです。

しかし上記のように平成29年1月1日から、専業主婦でも個人型の確定拠出年金に加入できるようになり、そうなれば新たに掛金を拠出できます

これにより個人別管理資産を、国民年金基金連合会に放置しておく場合にはない、明確なメリットが生じるようになるため、401k難民は減少に向かうのではないでしょうか?(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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