相続問題の「今」

核家族化が進み、日本における「相続」の問題は複雑になりました。

これまで

親が亡くなった後は主に長男などが「家督を継ぐ」というのが一般的な時代がありました。少なくとも家族の誰かが「家を継ぐ」という考え方が主流だったと思います。

現代

核家族化が進み、今や親が亡くなった後も子供たちは家には戻らないケースのほうが「普通」になりました。

「何が公平なのか」についての争いが増えた

男女間や兄弟間の相続時の格差もより公平に扱われるようになりましたが、それだけに「何が公平なのか」について争いが増えた、といえるでしょう。

平成26年に「遺産分割」に関して家庭裁判所で争われた事件を「遺産総額」別でみると5,000万円以下の事件が75%強を占めています。

平成26年までは基礎控除が「5,000万円+相続人の数×1,000万」でしたから、相続税の支払いがない相続でもめている割合が多いことがわかります。

「うちにはもめるほど資産はないから」

とおっしゃる方が多いですが、資産額の多寡とは関係なくもめるときにはもめるのです。

遺産の額

「相続対策」と「相続税対策」の違い

「相続対策」で最も重要なこと

それは…

「もめないようにすること」

だと思います。

「相続税対策」

相続税対策」は支払う相続税を少なく抑え以下の次世代に少しでも多くの資産を残すための対策です。これが「もめないための対策=相続対策」の先にあるものです。

「もめないための対策」をどう考えるか

被相続人が「平等に分けてほしい」と願っても、「何をもって平等とするか」は多くの場合「主観」の問題です

・ 土地の評価は「時価」か、「固定資産税評価額」か、「相続税評価額」か。

・ たとえ同じ評価でも不動産と現金では受け取る人の感覚は違う。

・ 収益を生まない不動産(自宅など)を相続しても、税金や維持費がかかえって負担。

・ 土地を同じ面積に分割しても地型や接道条件で評価額は変わる。

・ 有価証券は相続発生時と申告時では価値が変わる。

など、「公平」「平等」の定義があいまいなところにもめる原因があります。仲が良かった兄弟が相続問題をきっかけにいがみ合うというのも珍しい話ではありません。

明確な遺志を伝える「遺言書」

相続対策の内容ももちろん重要ですが、大切なのは亡くなられる人が引き継ぐ人に「遺志」を明確に伝えることであり、そのための最も一般的な手段が「遺言書」です。

「遺言書」を書く上で大切なこと

まだ元気な親に「遺言書を書いて欲しい」とはなかなか言いにくいと思います。しかし、遺言書がなかったために亡くなられた方の思いが次世代に伝わらず、亡くなられた後に遺された親族がもめてしまったら、さぞ残念なことだろうと思います。

「遺言書」は自分のために書くものであると同時に「遺される人」に故人の遺志を伝える最期の手段です。

「遺言書」の様式

遺言書には大きく分けて

「自筆証書遺言」
「公正証書遺言」
「秘密証書遺言」

の3種類の様式があります。

詳細はここでは割愛しますが、遺言書には成立するために必要な「厳密な要件」があります。この要件が整わないとせっかく書いた遺言も「無効」になってしまいますので注意が必要です。

もうひとつ遺言を書くときに大切なことは「どこにどのように保管するか」です。せっかく書いた遺言書も見つけてもらえなければ書かなかったのと同じです。

相続発生後に遺された人がやることは多い

相続が発生、すなわち人が亡くなると、その3か月後までに相続放棄、限定承認を行う場合には家庭裁判所に申述する必要があります。これをしなければ自動的に単純承認したとみなされます。

それまでに「相続人の特定」、「相続財産の全体の把握(負債も含めて)」を行わないと判断することもできません。亡くなられた人がどこに何があるかを残しておかないと3か月はあっという間です。

そして、その先「では、どう遺産を分けるのか」についても「公平に」、「平等に」といったあいまいな書き方ではなく、

1. 「何は誰に」と書いておく
2. 場合によっては生前から不動産を分筆して分けやすいようにしておく

と同時に分け方も決めて置き遺言書に書いておくべきです。

遺言書を書く心構え

遺される人の意見もできれば聞いておきたいところですが、

「兄弟の仲が悪い」
「相続させたくない相続人がいる」
「一部の相続人に多く残したい」

などという場合には、あえて遺される人の意見は聞かず、自分の気持ちをきちんと残すのも一つの方法かもしれません。一見すると「不公平」に思える様な内容でも、そのように考えた故人の気持ちも併せて書いておくと「想い」が伝わるかもしれません。

残された人を想うなら「死後」と向き合う

自分が死ぬときのことは考えたくないという方も多いと思います。しかし人には必ず訪れるその時のためにしておくべきことから目を背けてしまうと、残された人に大きな負担を残してしまうことになるかもしれません。(執筆者:西山 広高)