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違法な残業などの労働問題で困ったら、「無料相談」できる機関があります

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違法な残業などの労働問題で困ったら、「無料相談」できる機関があります

先日新聞を読んでいたら、大手広告代理店である電通の女性社員が自殺したのは、残業時間の急増に起因し、うつ病が発症したためとして、三田労働基準監督署がこの自殺を、労働災害と認定したという記事が掲載されておりました。

またこの数日後には東京労働局と三田労働基準監督署が、労働基準法違反の疑いで、電通の本社と支社数カ所に立ち入り、調査を行ったという記事が掲載されておりました。

労災保険の手続きや違法な残業で困ったら


こういった記事を通じて、労働基準監督署の存在と役割が周知されるようになったので、「労災保険の手続きで困ったら、労働基準監督署に相談しよう」と、考えた方がいるかもしれません。

また「違法な残業などの労働問題で困ったら、労働基準監督署に相談しよう」と、考えた方がいるかもしれません。

どちらも間違いではないのですが、後者の方は次のようなデータを見ると、あまり期待しない方が良いかもしれません

労働基準監督署が立ち入り監督するのは年に4%程度の事業所

労働基準監督署は会社などに、労働基準法などの労働法を遵守させるため、労働者からの相談を受け付け、また労働法を守っていない会社などに対して、監督指導を行っております。

また悪質な場合には、事業所の強制捜査を行ったり、事業主を逮捕したりするので、労働基準監督署は労働法の違反を取り締まる、警察のようなものです。

ただ厚生労働省が発表している「平成26年 労働基準監督年報(pdf)」によると、平成26年中に労働基準監督署は、16万6,449件の事業所に立ち入り、監督を実施しておりますが、これは全国に約 427 万ある事業場の、4%程度にすぎません

しかもこの16万6,449件のうち、申告監督(労働者等からの申告に基づいて実施する監督)は、2万2,430件しかありません。

労働基準監督署は人手不足で動きたくても動けない

厚生労働省の資料によると、全国の労働基準監督署で働く労働基準監督官の人数は、平成25年のデータで2,500人程度です。

しかも実際に事業所に立ち入り、監督を実施する労働基準監督官は、管理職を除くため、2,000人以下しかおりません

これだけの人数で全国に約 427万ある事業場に立ち入り、監督を実施する必要があるのですから、労働基準監督署は人手不足により、動きたくても、動けないという状況なのです

そのため皆さんが違法な残業などの労働問題で困っていても、労働基準監督署が動いてくれないケースもあり、そうなると弁護士などの専門家に有料で依頼するか、自力で解決する必要があるのです。

もし自力で解決する場合、まずは本を読んだり、インターネットで調べたりしてみて、わからない部分があったら、次のような機関の無料相談を利用するのが良いと思います。

市民(区民、町民、村民)相談


多くの市区町村では弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの専門家を招いて、その地域に住む方々の、法律、不動産、税金などの相談に応じております。

派遣される専門家、相談時間や利用回数などは、地域によって違いがありますので、それぞれの市区町村のサイトや、広報誌などをご確認下さい。

なお例えば未払いの残業代を、内容証明で請求しようと考えているなら、弁護士ではなく司法書士や行政書士に、相談しても良いかと思います

総合労働相談コーナー

各都道府県の労働局などに、「総合労働相談コーナー」が設置されており、違法な残業などの労働問題について専門の相談員が、電話か面談で相談に応じております。

ここでは労働問題に関する相談に応じるだけでなく、「労働局長の助言・指導」や、「紛争調整委員会によるあっせん」も実施しております。

このあっせんとは紛争の当事者の間に、労働問題の専門家である第三者が入り、話し合いによる紛争の円満な解決を援助する制度です

また紛争の当事者から求められた場合には、紛争調整委員会が両者に対して、事案に応じた具体的なあっせん案を提示します。

もし紛争の当事者が、あっせん案に合意した場合には、受託されたあっせん案は民法上の和解契約と、同様の効力をもつことになります。

ただ紛争の相手側が、あっせんに出席しない場合、あっせんは打ち切りになり、強制的に出席させることはできません。

なお裁判所で実施される「労働審判」の場合、相手側が欠席しても手続きが進み、かつ正当な理由がないのに欠席した場合には、5万円以下の過料が科せられるので、相手側があっせんに出席しなかった場合には、こちらの利用を検討してみます。

社会保険労務士会の総合労働相談所

社会保険労務士とは、労働保険や社会保険に関する書類の作成や提出を行ったり、人事や労務管理に関する相談や指導を行ったりする専門家で、社会保険労務士になるには、国家試験に合格する必要があります。

この社会保険労務士が所属する、全国47都道府県にある社会保険労務士会では、「総合労働相談所」を設置して、電話か面談で相談に応じております。

こちらでも総合労働相談コーナーと同じように、「社労士会労働紛争解決センターによるあっせん」が実施されておりますが、このあっせんは有料になるようです。

証拠になるものを事前に準備しておく


こういった相談機関の問題点として、よく指摘されているのは、相談員によって労働法などの知識などに、かなりの違いがあるという点です。

その理由として非正規雇用の相談員、つまりパートやアルバイトの相談員が、相談に応じる場合があるからです。

ですから面倒かもしれませんが、こういった相談機関を利用する場合には、1回の相談で解決を目指すのではなく、何度も足を運ぶつもりでいた方が良いと思います

また証拠があると話が進みやすくなるため、例えば違法な残業について相談したいのであれば、タイムカードのコピーなど労働時間を証明できるものを、事前に準備しておきます。

それが無理ならばシフト表、勤務表、業務日報、出退勤表などを準備しますが、次のようなものも証拠になる可能性があります。

・ メールの送信履歴(出社した時と退社する前に、会社のパソコンから自分のパソコンにメールを送信しておくと、会社にいたことの証明になるため)

・ パソコンのログデータ( 会社のパソコンを起動した時刻と、シャットダウンした時刻がわかるため)

なお未払賃金の請求権は2年で消滅すると、労働基準法に記載されておりますので、例えば未払いの残業代を請求するつもりなら、できるだけ早めに行動した方が良いのです。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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