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なぜサラリーマンは税金を会社に払うのか…そのルーツは「戦時経済」にあり。戦費を賄うシステムが今でも生きている。

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なぜサラリーマンは税金を会社に払うのか…そのルーツは「戦時経済」にあり。戦費を賄うシステムが今でも生きている。

ひとつ質問です。


「1年後に購入する自動車を月賦で手付金を支払いますか。購入代金との差額は精算しますから。」

こんな話、誰も相手にしませんよね。この冗談みたいなことを長年サラリーマンが知らず知らずのうちに実行しています

それがサラリーマン税制であり、戦時経済がベースになっています。

給与明細書に当てはめてみる

手付金

給料から天引きされる源泉所得税

精算する金額

年末調整の還付金と追加徴収

用語解説

源泉所得税

国の代わりに会社が徴収して所得税の前払いをさせる制度

年末調整

1年間の所得税の計算を会社が代行する制度

還付金と追加徴収

1年間の所得税と預かった源泉所得税との精算額

所得税は「国と納税者」が直接やり取りするのが原則

本来、日本国は申告納税制度を採用しています。1年間の所得金額と所得税を計算・申告・納税を翌年にするのが原則

つまり、所得税を後払いします。言い換えれば、「国と納税者」が所得税に関するやり取りを直接します。それにもかかわらず、サラリーマンの場合は会社が間に入って、前払いさせるのには理由があります。

会社が源泉所得税を徴収して年末調整をするメリット


結論から申し上げます。国に反抗できても、会社に逆らえないからです。サラリーマンの収入源は会社の給料。生殺与奪を握られている相手に喧嘩をすることはできません。

会社はサラリーマンの所得税の計算をするときに融通を利かせても1円も余分にお金は残りません。

むしろ、計算ミスを税務署に指摘されると追徴課税されるだけ損します。だから、サラリーマンの所得税を年末調整でキチンと計算します。

こうしてサラリーマン税制は完成された

サラリーマン税制のルーツをたどると、どうしても戦時経済に行き着きます。それでは、サラリーマン税制が完成されるプロセスを見ていきましょう。

(1)源泉徴収制度

サラリーマン税制の出発点は昭和15年に制定された源泉徴収制度です。日中戦争が泥沼化して、効率よく確実に所得税を徴収する方法をナチス・ドイツから輸入しました。

(2)申告納税制度と年末調整制度

所得税を支払うタイミングが「申告納税制度=後払い」、「年末調整制度=前払い」と対立する概念を意図的に併記しました。

1. 申告納税制度

年末調整制度はサラリーマンから所得税を効率よく徴収する制度ですが、戦後に導入された日本の申告納税制度も全く同じ趣旨です。

終戦までは固定資産税のように、国が税金を計算して、支払い額を通知する方式でした。しかし、終戦の混乱の中で所得税の計算を国が引き受けるのは大変なので、納税者に計算を委ねました

それが申告納税制度を採用した理由です。

2. 年末調整制度


申告納税制度の欠点は納税者が自分で所得税を計算するので、脱税されるリスクがある点です。

それなら、納税者本人よりも会社の計算させたほうが確実に徴収できるので、年末調整制度がセットで導入されました。しかも、当時の日本政府の要望で、GHQが渋々同意したというエピソード付です。

要するにサラリーマン税制は所得税を計算する人が「戦前=国」から「戦後=会社」に変わっただけなのです。

まとめ

申告納税制度と年末調整制度を比較しました。


以上です。(執筆者:阿部 正仁)

《阿部 正仁》
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阿部 正仁

会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。単に税金のハウツーだけにとどまらず、教科書に書かれない制度の考え方を誰にでも分かりやすく伝えることを身上とする。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。 <実績>おもにマネーの達人、経営ハッカー、会計事務所様のブログ、税理士向けのサービス会社の記事、美しい文章の作り方講座の記事などを現在執筆中 寄稿者にメッセージを送る

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