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【ギリシャの財政危機に学ぶ】 「お金を分散して、運用すべき」理由

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【ギリシャの財政危機に学ぶ】 「お金を分散して、運用すべき」理由

2017年3月27日に参議院本会議で採決が行われ、自民党や公明党などの賛成多数で、2017年度の予算案が可決・成立しました。

この予算案の歳出(支出)を見てみると、高齢化で増え続ける社会保障費の伸びを抑えたにもかかわらず、過去最大の32兆4,735億円に達し、また政権が重視する防衛費も、過去最大の5兆1,251億円に達しております。

こういった影響により、2017年度の予算は97兆4,547億円に達し、5年連続で過去最大を更新しました


「新規国債の発行」という借金頼みが続く厳しい財政状況

その一方で歳入(収入)を見てみると、アベノミクスの勢いに陰りが出てきており、税収は前年度比で1,080 億円増の、57兆7,120億円に止まっております

そうなると歳出(支出)が97兆4,547億円で、歳入(収入)が57兆7,120億円ですから、約40兆円の赤字が発生しているのです。

この赤字は主に新規国債の発行で補う、つまり借金をすることになるので、厳しい財政状況が続いております。

また安倍内閣は2020度に、財政の健全性を示す「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」の、黒字化を目指しておりますが、このような赤字が多い状況を見ていると、とても実現できるとは思えません。

日本国債の約8割は日本銀行や金融機関などが保有している

日本の財政は約40兆円も赤字なのに、それが成り立っているのは、上記のように誰かが日本国債を購入して、赤字を穴埋めしているからです。

日本銀行調査統計局が2017年3月17日に発表した、「2016年第4四半期の資金循環(速報)」を見ると次のように、誰が日本国債を保有しているかがわかります。


≪画像元:2016年第4四半期の資金循環(pdf)

2013年4月以降は「中央銀行(日本銀行)」が、「量的・質的金融緩和」のため、日本国債の購入を増加させており、構成比でみると2016年12月末時点で、39.11%に達しております

その後は「保険・年金基金」の22.20%、「預金取扱機関(都市銀行や地方銀行など)」の19.40%となり、この三者だけで約8割に達するのです。

日本人は金融機関を通じて、日本国債を大量に保有している

この三者の中で「中央銀行」は、紙幣を発行する権限が与えられているので、日本国債の購入資金を自前で準備できます。

しかし「保険・年金基金」や「預金取扱機関」は、紙幣を発行する権限はありませんので、日本国債を購入するための資金を、誰かに貸してもらう必要があるのです。

その誰かとは例えば生命保険会社であれば、その会社が販売している生命保険の契約者であり、また例えば銀行であれば、その銀行の口座開設者になります。

つまり日本人は自分で日本国債を保有していなくても、生命保険会社や銀行などを通じて、日本国債を大量に保有しているのです

元本と利子の約7割が戻ってこなかったギリシャ国債


ギリシャが財政危機に陥った際には、ギリシャ国債を保有する生命保険会社や銀行などは、元本の53.5%を自主的に放棄するという条件を受諾しました

つまりギリシャ政府に貸していたお金の半分程度が、戻ってこなかったというわけであり、利子なども含めると約7割が、戻ってこなかったと言われております。

もし日本で同じようなことが実施された場合には、日本国債を大量に保有している生命保険会社や銀行などは、日本という国と一緒に、危険な状態になる可能性があると思うのです。

貯蓄型保険は掛け捨て型保険より、財政危機の影響を受けやすい

生命保険会社が経営破綻した場合、その会社との保険契約は消滅するわけではなく、「救済保険会社」が現れた場合には、そちらに保険契約が引き継がれます。

また救済保険会社が現れなかった場合には、生命保険契約者保護機構が設立する「承継保険会社」が保険契約を引き継いだり、生命保険契約者保護機構自らが、保険契約を引き継いだりします。

ただ過去に生命保険会社が、経営破綻したケースについて調べてみると、救済保険会社などに保険契約が引き継がれる時に、責任準備金の削減や、予定利率の引き下げが実施されました

それにより養老保険、終身保険、個人年金保険などの貯蓄型保険は、死亡保険金、満期保険金、年金などの金額が、大幅に削減されてしまったのです

その一方で定期保険や収入保障保険などの掛け捨て型保険は、ほとんど削減されずに済んだので、貯蓄型保険の方が日本の財政危機の影響を、受けやすいということになります。

日本がIMFの管理下に入ると、預金額がカットされる可能性がある

ギリシャが財政危機に陥った際には、IMF(国際通貨基金)などによって、金銭的な支援が行われました。

このIMFに近い筋の専門家が、日本の財政について警告を発した、「ネバダレポート」というものがあります。

このネバダレポートを読むと、もし日本がIMFの管理下に入った場合には、「預金は一律ペイオフを実施する共に、第二段階として、預金額を30~40%カットする」と記載されているのです。

ペイオフの実施だけであれば、ひとつに銀行に預金する金額を1,000万円以内に抑えれば良いのですが、預金額を30~40%カットするとなると、銀行を分散するだけでは意味がありません。

日本の将来に悲観的な方は、預貯金と保険以外の資産も保有する


このように資産のほとんどを、預貯金と保険だけで運用していると、日本で財政危機が発生した時に、その影響を受けやすくなると考えられます。

ですから日本の将来について悲観的に考えている方は、預貯金と保険以外の複数の資産にお金を分散して、運用すべきだと思うのです。

例えば日本で財政危機が発生した場合には、日本の通貨である円が売られやすくなり、円安が進んで行くと考えられます。

円安が進むということは、逆に外貨高(例えば米ドル高)になりますので、「外貨MMF」などの外貨建て商品にお金を分散しておくと、資産の目減りを防げるはずです。

また実物資産である金(ゴールド)も、財政危機などの有事に対するリスクヘッジ目的で、よく保有されております

いずれにしろ日本の将来について悲観的に考えている方は、預貯金と保険だけで、資産運用すべきではないと思うのです。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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