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副業する人は知らないと困る「社会保険」の知識 収入や労働時間で加入が必要になったり、社会保険料が上がることも

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副業する人は知らないと困る「社会保険」の知識 収入や労働時間で加入が必要になったり、社会保険料が上がることも

「就業規則」の作成


常時10人以上の従業員を使用する使用者は、従業員の賃金や労働時間などについて定めた「就業規則」を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

これは労働基準法に定められた義務のため、就業規則を作成しなかったり、作成した後に届け出なかったりした場合には、30万円以下の罰金が科せられます。

作成のときに参考になる「モデル就業規則」

ただそうはいっても何を書けば良いのかわからない、または作成する時間がないという使用者などのために、厚生労働省は「モデル就業規則」を公開しているので、これを参考にすれば良いのです。

「副業」が容認されたらどう変わる?

このモデル就業規則の中には、副業を禁止する規定があるのですが、先日あるニュースサイトの記事を読んでいたら、厚生労働省の検討会がこの副業禁止の規定を見直し、原則的に副業を容認すると記載されておりました。

あくまでモデル就業規則が変更されるだけであり、実際に副業を容認するかは、それぞれの企業が決めることなのですが、厚生労働省の方向転換は多くの企業に、影響を与えることになりそうです。

そのため将来的に副業が容認され、実際にそれを実施する場合、

雇用保険や社会保険(健康保険、厚生年金保険)は、どのような取り扱いになるのか

について、知っておいた方が良いと思います。

雇用保険は本業だけで加入するので二重加入はしない

雇用保険は生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている方、つまり本業で働いている企業の方だけで加入するため、二重加入はしません

そのため副業で働いている企業が、労働保険(労災保険、雇用保険)に加入している事業所(適用事業所)で、その適用事業所での労働条件が、雇用保険の加入要件を満たしている場合でも、副業の方では雇用保険に加入しません。

また本業で働いている企業の方だけで、雇用保険に加入するということは、その保険料は本業での賃金だけを元に算出するので、副業をしても保険料は上がりません

雇用保険に加入する必要がある場合

副業の方が本業より賃金が多くなり、生計を維持するのに必要な主たる賃金をもらっているのが、本業でなくなってしまった場合には、副業で働いている企業の方で、雇用保険に加入する必要があります。

労災保険はすべての労働者に対して適用

労災保険の保険料は企業が負担しているため、ご存知ない方がいるかもしれませんが、労災保険は雇用形態にかかわらず、すべての労働者に対して適用されます。

副業の企業で仕事をしている最中にケガをした場合などには、パートやアルバイトであったとしても、副業の方の労災保険を利用できるのです。


社会保険は2つの要件を満たすと、副業の方でも加入する必要がある

社会保険に加入する必要があるのは、勤務先が社会保険に加入している事業所(適用事業所)になっており、かつその適用事業所での労働条件が、社会保険の加入要件を満たしている場合です

この2つの要件を満たしている場合には、副業の方でも社会保険に加入するため、雇用保険とは違って二重加入もありえるのです。

また社会保険へ加入するのが義務になっている「強制適用事業所」は、次のようになっております。

・ 国、地方公共団体、法人(株式会社、有限会社など)の事業所

・ 常時5人以上の従業員が働いている個人の事業所(農林漁業、クリーニング業や飲食業などの一部のサービス業は除く)

そうなると副業の勤務先が、小規模な個人の事業所である場合には、原則的に社会保険に加入する必要はないので、従来通り本業のみで社会保険に加入して、保険料もその分だけ負担すれば良いのです。

なお副業として自分で事業を始めた場合にも、同様の取り扱いになるため、個人の事業を法人化した場合には、働いているのが事業主の自分だけであっても、社会保険の強制適用事業所になります

大企業より中小企業で副業した方が、社会保険の保険料は上がりにくい

副業での雇用形態がパートやアルバイトであっても、次のような社会保険の加入要件をすべて満たすと、本人の意思の有無にかかわらず、社会保険に加入する必要があります

・ 1週間あたりの所定労働時間(労働契約で決められた各従業員が働くべき時間)が、20時間以上であること

・ 1か月あたりの賃金が8万8,000円(年収に置き換えると106万円)以上であること

・ 雇用期間が1年以上見込まれること

・ 従業員数が501人以上の企業で働いていること(ただし労使の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業でも社会保険に加入する)

これを見るとわかるように、従業員数が500人以下であれば原則的に、社会保険に加入する必要はありません

そのため副業の収入で社会保険の保険料を上げたくないなら、現在は大企業よりも、中小企業で働いた方が良いと考えられます。

中小企業でも、社会保険に加入する必要がある場合

1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の、「4分の3以上」になる場合には、従業員数が500人以下の中小企業であっても、社会保険に加入する必要があります。

つまり副業の勤務先が大企業か中小企業かで、社会保険の加入基準が変わり、また中小企業で働いている場合であっても、労働時間や労働日数が増えると、やはり社会保険に加入します


社会保険の保険料は各事業所の月給の比率で按分する

社会保険の保険料は原則として、賃金の金額に比例して増えていく仕組みになっております。

2017年9月以降については、例えば本業での月給が20万円の場合、厚生年金保険の保険料は1万8,300円になり、また副業での月給が10万円の場合、厚生年金保険の保険料は8,967円になります。

2か所以上の事業所で勤務する場合

これをそのまま給与から控除するのではなく、この方は合計して30万円の月給をもらっていると考え、月給が30万円だった場合の保険料を算出するのです。

その金額は2万7,450円になり、これを次のように各事業所での月給の比率で按分します。

(本業)2万7,450円×20万円/30万円=1万8,300円

(副業)2万7,450円×10万円/30万円=9,150円

このように按分した金額を給与から控除するので、それぞれの事業所の月給だけで保険料を算出して控除する場合とは、金額が変わってくるのです。

また今回は厚生年金保険を例に挙げましたが、健康保険も考え方は同じです。

本業と副業の両方で社会保険に加入すると、事務手続きの負担が増える

本業と副業の両方で社会保険に加入し、管轄する年金事務所または保険者が複数になる場合には、

「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」

という書類を提出して、いずれをメインにするのかを決める必要があります

なお保険者とは協会けんぽを運営する「全国健康保険協会」、または組合健保を運営する「健康保険組合」を示しますので、保険者が複数になる場合とは、例えば本業の方が組合健保で、副業の方が協会けんぽになる場合です。


2枚の健康保険証を所有する場合

こういった場合には一人の方が、2枚の健康保険証を所有する可能性がありますが、実際に使用するのはメインに決めた保険者のものだけになるので、メインでない方は返却しなければなりません。

このように本業と副業の両方で社会保険に加入すると、保険料が上がるだけでなく、事務手続きの負担が増えます

副業は

・ 社会保険に加入しない程度の時間だけ働く

・ 社会保険に加入する必要のない小規模の個人事業

など、自分で始めてみるのが良いと思うのです。(執筆者:木村 公司)




《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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