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「税制改正」で相続税制はこう変わる 「小規模宅地の特例」の厳格化など4つの項目を解説

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「税制改正」で相続税制はこう変わる 「小規模宅地の特例」の厳格化など4つの項目を解説

平成30年度税制改正大綱が発表され、どこよりも早いコラムとなるのではないでしょうか?

今回は、特に相続税に関連する内容としては、注目の「小規模宅地の特例」を含め4つの項目に触れます。


1. 小規模宅地の特例の厳格化

近年、注目され続けていた小規模宅地の特例のうち、特定居住用宅地等の対象者が厳格化されました。

小規模宅地の特例を受けることにより、故人が生前に自宅として居住していた土地を相続した場合、一定の条件に該当すれば、相続税を算出するときに、土地の面積として330㎡までを上限に土地の評価額を80%もカットできるという制度でした。

これまでは、

・ 配偶者や、二世帯住宅を含め、同居している親族

・ そして、配偶者も同居している親族もいない場合

・ 別居している親族

・ いわゆる「家なき子」と呼ばれる別居親族

と、上記に該当される方が相続した場合に、この恩恵を受けることができました。ところが、今回の改正により、「家なき子」の内、相続開始前3年以内に、その相続人、或いはその配偶者が所有する建物に居住していない者が相続した場合、その制度の恩恵を受けることができるという制度でした。

ところが、この「家なき子」の定義が大きく変わり、

・ 相続開始前3年以内に、その相続人の3親等以内の親族、またはその相続人特別の関係のある法人が所有する国内建物に居住していないこと

・ 且つ相続開始時において、過去に自らが所有する家屋に居住したことがないこと等

と厳格化されました。

貸付事業用宅地等についても、厳格化

また、小規模宅地の特例のうち、貸付事業用宅地等についても、厳格化されるとになりました。

貸付事業用宅地とは、アパートやマンション、貸戸建、駐車場等、他人に土地を貸している場合、200㎡までを上限に土地の評価額を50%カットできる制度でした。

平成27年の税制改正以降、相続税の対象となるケースが全国平均でも1.8倍となったことにより相続大増税と騒がれ、巷では相続税の節税対策として、賃貸アパートや賃貸マンションの建築ラッシュで供給過多。

全国的に空室も多く、様々な問題を抱えている現状です。

これまで同様、「貸家建付地」の評価方法や、「借家権割合」を加味する評価方法には変化はありません

しかし、小規模宅地の特例のうち、貸付事業用宅地等に該当する50%カットに関しては、相続開始前3年以内に貸付事業を始めた土地については、適用すること、つまり、この恩恵を受けることができなくなりました

もちろん、相続開始前の3年前から、いわゆる「5棟10室」と呼ばれる事業的規模・基準で貸付事業を行っています。

しかし、たまたま建替えてしまい、3年を経過していなかったり、新たに「不動産貸付事業」として、取得した土地において行う貸付事業については、適用できます。

つまり、「不動産貸付事業」を行っていなかった者が、理由はともあれ、急に「相続税の節税対策だ!」と言って、賃貸物件を建築した場合で、3年以内に相続が発生した場合に、小規模宅地の特例の適用を受けることができなくなるということです。

そして、こちらについては、今回の税制改正の適用となる平成30年4月1日より前に貸付事業のように供されている宅地等については、従来通り、小規模宅地の特例の適用を受けることができることから、今月以降、3月までは、各ハウスメーカー、アパート建築メーカーは、駆込特需と言えそうです。


2. 空家対策の一環で登記代(登録免許税)が免税に

今、全国的にも話題となっている「空家」問題。

特に、過去に相続が発生したが、相続発生時には、遺産分割協議をしていなかったり、遺産分割協議をしていたとしても、相続したという登記をすると、「登録免許税」や司法書士への報酬、つまり「登記代」が発生し、勿体無いので、「売る必要があるときまで登記をしない」という風潮もありました

そして、今、その相続した者が、亡くなってしまい、その相続にした者の遺産分割協議を得て、相続登記をしようとしたところ、最初の相続登記をしていないことから、二度も相続登記をせねばならず、登記代が高くつく…ということで、登記をしない方も増えています

空家問題は、このような登記をしないことも増加要因の1つであり、その建物・土地の名義が不明であると、空家問題を解決することができないのです。

このことからも、せめて当初の相続登記にかかる「登録免許税」は免税とし、少しでも、土地の名義人が明確になるように、相続人の方々が登記をしやすいように、負担を軽くするようにという目論見もあり、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの3年間の時限立法ではありますが、免税措置が取られることとなりました

3. 美術品を相続した場合、納税猶予を受けられる

美術品であれば、何でもいいということではありません。

簡単に言えば、

「博物館のような施設に著名な美術品を展示・掲示するために預けている場合、その美術品の価格の80%については、相続税の納税を猶予します」

という制度です。

少し説明が長くなりますが、より正確に説明すると、

博物館法に規定された博物館、博物館に相当する施設として指定された施設のうち、美術品の公開・保管をされている美術館との間で、重要文化財に指定された美術工芸品、登録有形文化財であり、歴史上、芸術上、学術上、優れた価値のある美術品(特定美術品)を対象とした長期寄託契約を締結し、寄託している場合、その期間内に特定美術品を相続した相続人が、継続して寄託すると、担保提供を条件に、納付すべき相続税額のうち、特定美術品にかかる課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます

世界的な芸術品を所有しているものの、万人に目にしてもらうために、博物館と契約をして預けているので、売りたくても売れない…だから売ることができないのだから、その分の相続税の納税は猶予してよね! ということですね。


4. 租税回避を目的とした一般社団法人の設立による節税対策にメス

これまで、相続の実務家の中では、

「グレーゾーン?」

…いや、むしろ、「将来的にメスが入るでしょ!?」

と言われてきましたが、大丈夫でしょと、強行される方が多かった一般社団法人の設立スキームが遂に、困難となりました

資産、つまり財産が多い方の場合、個人として財産を所有している状態で相続が発生すると、全て個人の財産として、相続税が課税されます

しかし、通常、法人(株式会社)を設立し、その法人に財産移転させることにより、個人の財産は物から自らが設立した法人の株へと変化するため、設立からの経過年数や財産取得後の経過年数にもよりますが、相続財産を抑えられることがあります

一般社団法人スキームとは、この設立法人を株式会社ではなく、一般社団法人を設立させるということです。

何がどう違うのかというと、簡単に言えば、一般社団法人は、株式会社とは違い、株式に当たる持分が存在しないという理由から、これまで、相続税の対象となりませんでした。

ところが、この考え方を悪用して、個人の資産を設立した一般社団法人に移転させ、後に相続人となるであろう者を代表とし、親から子、子から孫へと延々と繰り返すことにより、財産の継承を行い、事実上、相続税を回避するというスキームが乱用されていました。

最後に

今般の税制改正により、規定が明確化、厳格化されたことにより、これまで同様の形で一般社団法人を設立した場合には、課税対象となることから、この租税回避スキームにメスが入ったと言えます。(執筆者:佐藤 雄樹)

《佐藤 雄樹》
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佐藤 雄樹

一般社団法人東京都相続相談センター 理事 学習院大学卒業後、財閥系不動産会社にて6年半勤務。企業をはじめ、地主・富裕層へのコンサルティングに従事。平成19年以降、会社更生・民事再生・破産案件に対して法律事務所と一体となり企業再生業務に従事。平成23年に相続コンサルティングに特化した(株)brandsを設立。平成25年には相続の実務家と(一社)東京都相続相談センターを設立。法律・税金・不動産等の各専門分野における垣根を超えた相続コンサルティングは各士業から絶大な支持を得ている。 <保有資格>:NPO法人相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産証券化協会 認定マスター、AFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、土壌環境リスク管理者、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、終活カウンセラー 寄稿者にメッセージを送る

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