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「確定申告不要制度」は「隠れ増税」である

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「確定申告不要制度」は「隠れ増税」である

公的年金等(例えば老齢基礎年金や老齢厚生年金など)は、雑所得に該当するため、所得税が課税されますが、その計算方法を大まかに表現すると次のようになります。


(1) 1月~12月の間に支給された公的年金等収入の合計額 - 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得

(2) 公的年金等の雑所得 - 所得控除(例えば基礎控除、配偶者控除、扶養控除など)= 課税所得

(3) 課税所得 × 所得税の税率(5%~45%の7段階)= 所得税

(4) 所得税-税額控除(例えば住宅ローン控除など)= 最終的に納付する必要のある所得税

また(1)の中にある「公的年金等控除額」は、次の表の一番右側に記載されているように、公的年金等収入の合計額や年齢に応じて金額が変わります。


≪画像元:公的年金等の源泉徴収事務

税制改正大綱に記載された「公的年金等控除額」の引き下げ

2017年12月14日に与党から発表された、2018年度の「税制改正大綱」によると、2020年から公的年金等控除額を、次のように改正するようです。

(A) すべての年金受給者の方
公的年金等控除額が現在より、10万円引き下げられます。

(B) 公的年金等収入が1,000万円超の方
195万5,000円という、公的年金等控除額の上限が設定されます。

(C) 公的年金等の雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下の方
上記の(A)と(B)を適用したあとに、公的年金等控除額が更に10万円引き下げられます。

(D) 公的年金等の雑所得以外の所得が2,000万円超の方
上記の(A)と(B)を適用したあとに、公的年金等控除額がさらに20万円引き下げられます。

以上のようになりますが、所得金額が2,400万円以下の方については、(2)の中にある基礎控除が、38万円から48万円に引き上げされる予定です

つまり公的年金等控除額が10万円引き下がった分を、この基礎控除の引き上げが帳消しにするため、(A)だけに該当する方については増税にはなりません

表向きは親切に見える「公的年金等に係る確定申告不要制度」

公的年金等控除額の引き下げが実施されると増税になることは、わかりやすいと思うのですが、増税になることがわかりにくい改正もあるのです。

それは2011年以後の所得税から利用が可能になった、「公的年金等に係る確定申告不要制度」になります。

この制度は「公的年金等収入の合計額が400万円以下」で、かつ「公的年金等の雑所得以外の所得が20万円以下」の方については、確定申告をする必要がないというものです。

多くの年金受給者はこの要件に該当し、確定申告をする必要がなくなるため、表向きは親切な制度に見えるのですが、個人的には「隠れ増税」だと考えております

年金受給者が確定申告を止めると、国は所得税を還付しなくても良い

 
例えば一定の要件に該当する生命保険に加入している場合、確定申告をすることにより、(2)の所得控除のひとつである「生命保険料控除」を受けられるため、国は年金から天引きした所得税を還付する必要があります。

しかし年金受給者が確定申告を止めると、国は所得税の還付に応じる必要はないので、その分を手元に残しておくことができるのです。

それぞれの年金受給者に還付される金額は、決して大きくはないかもしれません。

しかし「公的年金等に係る確定申告不要制度」の要件に該当する方の多くが、確定申告するのを止めてしまえば、国はかなりの金額を手元に残せるため、この制度は「隠れ増税」ではないかと思うのです。

確定申告は税金について真剣に考えるきっかけを作る

家計簿をつけて収支を把握すると、家計の無駄を発見できるため、例えば貯蓄を増やすためには、どこを改善すれば良いのかがわかるようになり、また以前よりも節約について、真剣に考えるようになります。

これと同じように確定申告の際に、自分で所得税を計算してみると、例えば節税をするためには、どこを改善すれば良いのかがわかるようになり、また以前よりも税金について、真剣に考えるようになると思うのです。

このようにして税金に対する関心の高い国民が増えると、国は税金の無駄遣いを止めようという意識を強くするため、行政が効率化していく可能性があるのです。

こういった面でも年金受給者が確定申告をするのは、意義のあることではないでしょうか?

まずは利用できる所得控除や税額控除がないかを調べてみる


年金受給者の方が天引きされた所得税の還付を求める「還付申告」は、控除の漏れがあった翌年の1月1日から5年以内であれば、いつでも申告ができます

つまり2月~3月頃の混雑している時期に、税務署に書類を持って行く必要はなく、また現在はインターネットを利用した電子申告ができるため、税務署に行かなくても良いのです。

まずは(2)の所得控除や(4)の税額控除の中に、自分が利用できるものがないかを調べるところから、始めてみるのが良いと思います。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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