中小企業のある社長さんの相続

相続について考える

若い時から離婚、再婚をくりかえしていました。誰とも子供はつくらず、60歳でガンが見つかり2年後に亡くなりました。

ちょうどガンが見つかる2年前にある女性Aさんと知り合い結婚しました。

その時点では社長の推定相続人は、社長の子も親もいないため

・ Aさん

・ 社長の弟

でした。

亡くなる一年前にAさんの娘さん(連れ子)を養子に入れました

相続が発生し、社長の相続人は

AさんとAさんの連れ子の二人

になりました。

遺産分割協議で連れ子は事実上放棄され、2年前に一緒になったAさんが全ての財産を取得しました。

故人の配偶者は相続人ですが、あくまで死亡時の配偶者のみが相続人です。 

配偶者は1億6,000万円まで相続税がかからない

社長の遺産は1億円でした。

配偶者の税額軽減の特例を適用し、Aさんは相続税も払わず2年前に知り合った社長さんの遺産1億円を手にしたのです。

1年後…「相続税調査」の知らせ

当方、不思議に思ったのが

あと6,000万円ほど課税するのに余裕があり、そこまで漏れの財産があるとは思えなかった

ためです。

後日調査に入ったのはどうも「通報があったから」とのことでした。

相続で悩む

想像ですが…

「通報したのは元妻か、社長の弟か」

もちろん不明ですが…

10年一緒にいた元妻にしてみれば2年で1億円手にしたAさんが面白くないのは当然でしょう。

また連れ子を養子にしなければ弟さんにも相続権があったわけですから弟さんもすっきりしません。

意外に多い離婚相談

たまにですが離婚相談が直接入り、専門ではありませんがとりあえず話をお聞きするか、と事務所でお待ちしていると2人で来所です。

「えっ、いきなり夫婦でバトル開始ですか!?」

と思ったら、なんと夫婦2人ではなく、愛人と一緒に来所です。

相談したいのは愛人で、「なかなか離婚してくれないが、何とかしてほしい」と。

「そりゃあ彼としては、愛人も欲しいだろうが離婚する気はないのが本音では?」

と男の立場で思う…

彼女としては離婚できるよう追い込むため彼を連れてきたということでしょう。

「ごめんなさい。離婚は扱っていませんので」とお帰りいただきました。

が、「離婚が将来の相続に関係するかもしれない」のは、離婚を考えている方にぜひお話すべきことですね。

離婚の方が相続より大変かも

過去に離婚相談があったとき弁護士さんを紹介し、一緒にお話を聞いたことがあります。

そもそも一方が離婚したいと思っても、相手が離婚に応じなければ離婚はできません

もちろん民法の定める離婚原因があれば裁判で離婚はできますが、そのことを証明しなければなりません。

・ 「言葉の暴力を受けている」これも証明が難しいですよね。

・ 子供の親権もめますよね。

先ほどの、愛人と一緒に別れたいと相談に行っている人も、

その事実が配偶者にわかれば、夫に不貞行為があったとみなされ民法の定める離婚原因にあたる

かもしれません。

「一緒にいたくない=離婚」がお互いの幸せになると限りません。

離婚できても、そこはスタート地点です。

離婚は相続のことも考える

みんなが幸せになれる相続

相続は遺産分割協がまとまればお互いが幸せになれます

きょうだい間の比較(気持ち)の問題はありますが、分割の話を放置している間は原則、相続人全員が預金の払い出しもできませんので、お互い歩み寄らざるを得ません

また平成27年に相続税の基礎控除が引き下げとなり、相続税の申告が必要な方が多くなりました。

期限内に納税も必要

相続預金の名義変更には期限がありませんが、相続税申告には10か月という期限があります

未分割でも納税義務は発生し遅れれば延滞金もかかります

むしろ期限内に分割がまとまれば、配偶者の税額軽減も小規模宅地の評価減といった軽減も受けられます。

そういった期限のメリットが相続にはあります。(執筆者:橋本 玄也)