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国際会計基準「IFRS」の影響 ~グローバル化はTSUNAMIのように~

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国際会計基準「IFRS」の影響 ~グローバル化はTSUNAMIのように~

上場企業が決算書を作成する場合のルールとして、会計基準がありますが、実はその会計基準は4つもあり、多くの企業が日本独自の基準で作成されています。

かつてはグローバル化≒アメリカ進出みたいなイメージがあり、国内の決算では日本基準、アメリカの決算はアメリカの基準(USGAAP)で決算書を作成しています。

しかし近年、世界標準となりつつある国際会計基準(IFRS)を採用する企業が増えてきて、それがついに日本の代表的で象徴的ともいえる、トヨタ自動車やソニーが導入の検討を始めているようです。

世界標準となりつつある国際会計基準のIFRS

国際基準の必要性

そもそも企業の1年間の収支の状態を示す、いわば「企業の通知表」が会計基準です。

過去において、企業は国の中に存在するもの、つまり企業は国家に比べて小さい存在なので、それぞれの国ごとに基準で評価して通知表を作成すればそれでよかったのです。

しかし、複数の国に渡るいわゆるグローバル企業が出現し、そしてその企業に出資するグローバルな投資家が出現することで、同じ企業なのに、A国の経済活動の評価とBの国の経済活動の評価が異なっているようでは、企業全体の本当の価値がわかりにくく、投資が判断ができないことから国際基準の必要性が生まれたと思います。

企業のグローバル化は今に始まったことではないのに、いまだに各国の個別事情とか考え方とか違いから世界的に統一されていないというのは、むしろ会計の世界はかなりノンビリと国際化が進んでいるという印象です。

国際基準IFRSの必要性

事実、日本においては、かなり以前からIFRSについては完全導入が検討され、2007年8月にはIASB(国際会計基準審議会)とASBJ(企業会計基準委員会)が、国際会計基準と日本基準の違いを2011年までに解消しましょうという「東京合意」を現在から10年以上前に締結しています。

しかし、その後の震災や、経済環境の悪化から導入が先延ばしにされ、いまだに完全な解消はみられていません。

トヨタのIFRS導入の影響

一方、企業の方は日本基準が国際基準に統一される前に、国際基準そのものに乗り換える会社が徐々に増えました。

コストや環境面においても先延ばしする理由がなくなったので、製造業の本丸ともいえるトヨタでさえ、導入に踏み切らざるえない状況になったのだと考えます。

もちろん企業のIFRS導入は今に始まったことでないのに、なぜトヨタの導入に着目しているかというと、特に私のホームタウンの愛知県ではトヨタの影響が大きく、トヨタの制度の変更はその子会社はもちろん、孫会社やひまご会社に対しても影響が及ぶと考えられるからです。

そしてさらにひまご会社と付き合いがある、およそグローバルとは関係ないような末端の中小企業にさえも、将来はIFRSという言葉がじわじわ浸透し、その対応にせまられるような気がするからです。

TOYOTAもIFRSの導入に踏み切る

このIFRSに関連し思い出すのは、日本が世界のグローバル化の潮流から外れて独自に進化した様子を、限られた生態系で独自の進化をとげ、固有品種となったガラパゴス諸島の亀やイグアナに例えた「ガラパゴス化」という言葉であります。

そしてこの「ガラパゴス化」を使って、日本独特の機能で進化した携帯電話は「ガラケー」と言われるようになりました。

しかし、今はそのガラケーそのものがほとんどなくなり、スマホではたえず世界中の最新情報が入ります。

そして、秘境の地であったはずのガラパゴス諸島は、今やすっかり観光地化して、インスタで観光客が投稿するおかげで、亀やイグアナの毎日の状態がわかります。

もし、仮に「イイね」の数でえさの量が変わるならば…、将来はインスタ映えするカメこそが進化の過程で生き残るようになるかもしれません。

ガラパゴス諸島の亀

「グローバル化の波」

よく「グローバル化の波に乗り遅れるな」といわれます。

その流はどこからともなくやってきて、時間とともにどこかに行ってしまう、満ち引きがある波や海流のようなイメージなので、「乗り遅れるな」という表現がされます。

逆にいえば「グローバル化なんて俺には関係ない」と、わが道を行き、波に乗らない選択肢も選べそうにも思えます。

しかし、大企業のIFRS導入や近年のガラパゴスの状況を考えると、本当のグローバル化の波とは、地球のどこに行こうが絶対に逃れられず、誰に対してもゆっくりと確実に押し寄せ、そして一度飲み込まれたら決してもう元には戻れない…そんな恐ろしい津波のようなものではないかと思わざるをえません。(執筆者:田井 能久)

《田井 能久》
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田井 能久

執筆者:不動産鑑定士 田井 能久 田井 能久

株式会社 タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/専任不動産鑑定士 大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドに転職し、資産評価業務を担当。全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。1,000件以上の評価実績を有し特に相続や訴訟に関連する案件を得意とする。海外事業では滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」業務を行い、2015年にマレーシアの企業と業務提携開始。MM2H取得アドバイス業務や海外不動産投資アドバイスを行い(https://malaysia-longstay.com/)自身も2018年にMM2Hを取得。元愛知大学非常勤講師で現在セミナー活動もしながら各種WEBメディアに記事提供を行う。 <保有資格>:不動産鑑定士 寄稿者にメッセージを送る

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