中小企業の財務諸表に多いのが「役員貸付金」。
役員の生活の補填としての役割の他、新規事業の立ち上げや資産運用などに用いられることがあります。
社長としては「第二のポケット」として活用しがいのある項目ですが、注意も必要です。

目次
「役員貸付金」とは?
「役員貸付金」とは、会社から代表取締役や取締役、理事といった会社役員に対して貸し付ける金銭のことです。
「会社のお金は運転資金なのに、そんなものを個人に貸してしまっていいの?」と感じるかもしれませんが、法人税法上に特段規制はありません。
中小企業には「会社の運転資金を社長から借りる」のと同じく、役員貸付金はよくあることです。
役員貸付金の活用法も色々で、社長個人の自宅を建てるための一時的な借金目的もあれば、新規事業の立ち上げのためのものもあります。
また、新しく事業を立ち上げるために会社からお金を借りることもあります。
創業間もない会社の場合、資金繰りがうまくつかないため、役員報酬を設定していない会社もありますが、0円だと社長の生活がカツカツになってしまいます。
そんな場合の生活資金として、社長が会社から借りることもあるのです。
役員貸付金のメリットとは
役員貸付金のメリットとして、「低利で借りられること」、「場合によっては無利息でもOKなこと」があります。
どんなローンにも利息がついてくるように、役員への会社の貸付金も利息をつけなくてはなりません。
利息計算については所得税法上、次のように規定されています。
2.その他の場合:貸付を行った日の属する年(暦年)に応じた特例基準割合
ちなみに、平成30年1月1日から12月31日までの特例基準割合は1.6%となっています。
特例基準割合の利率は、平成25年以前4%台と高かったのですが、平成26年以降は1%台で推移しています。
個人の借金として捉える場合、銀行のカードローンの金利は4~15%、消費者金融のカードローンでは4~18%程度です。
会社からの役員貸付金の金利の方が、ずっと低いことが分かります。
上記の金利よりも低い利息あるいは無利息で役員に貸し付けた場合、その分は役員賞与として課税されてしまいます。
ただし、
・上記の金利と実際の利息の年間差額が5,000円以下の場合
は、役員賞与としての課税はしなくてもよいこととなっています。
役員貸付金のデメリット
ただしデメリットもあります。

最大のデメリットは、融資を希望した場合の金融機関の査定が下がるリスクです。
融資査定でチェックされる項目は「返済能力」、「融資したお金の使途」です。
決算書上に役員貸付金の金額が多いと、「この会社に貸しても事業に使わずに役員に私的流用されるのではないか」という疑いをもたれやすくなります。
その他、会社に受取利息が発生するため、その分課される法人税などが高くなるおそれがあります。
社長にとっては便利な「役員貸付金」ですが、甘く見ると会社の資金繰りが危うくなり、結果社長の首を絞めることにもなりません。
活用する場合は節度を持つようにしましょう。(執筆者:鈴木 まゆ子)