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1,000万円貰えるかも?
父が亡くなり、四十九日法要も終え帰ろうとした時のことです。
兄の真一さんが弟の博さんを呼び止め、遺産分割のことを話しておきたいという。
父の相続人は、兄と弟の二人。
兄・真一さんの分割案は…
この自宅の不動産が2,000万円
預金が1,000万円
合計で3,000万円
・自宅は、父と同居していた兄が相続
・預金1,000万円は、弟が相続
その時の弟・博さんの気持ち
相続する1,000万円を法定割合でみると、3,000万円 × 1/2=1,500万円。
本来なら、あと500万円(1,500万円 ― 1,000万円)は兄が自宅を売却してでも請求できると、先日テレビでやっていました。
と、分割協議書に判を押しました。
兄の説明によると…
不動産(2,000万円)+ 預金(1,000万円)= 3,000万円。
葬儀のため直前に出した現金(200万円)をたして、3,200万円。
ここから、葬儀とお寺さんの費用(200万円)をひいて、3,000万円。
相続税の基礎控除は、3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円。
課税財産は3,000万円なので、4,200万円 > 3,000万円
だから、相続税申告は不要。つまり、相続税もゼロ。
ところが半年後、税務署からお尋ねが…
一応、回答書を持参し相談に行くと
そのお金は何に使われたのですか?」
と聞かれ、真っ青になって帰ってきました。
実は、相続税対策のつもりで2年前に土地売却したのです。
税引き後でも2,000万円がありました。
銀行の方に勧められ投資信託を購入し、名義は父ではなく、真一さんと真一さんの妻名義にしておいたのです。
弟は騙せても、税務署は騙せません。
といううわさを聞いて、売却したのに…
何故、税務署に分かるのか
税務署は、土地の売却の情報を調べて所得税の申告を促します。
当然、それは相続税の大切な資料にもなります。
つまり、弟の博さんには内緒でしたが、本当の遺産は3,000万円ではなく、
わけです。
兄・真一さんとしては、土地の売却のことは内緒にしておきたかったのです。
実家を守るのにはそれくらいのお金はかかるだろうと。
結局、博さんは、自分の相続した1,000万円は遺産の1/5だったことを知り、何だか騙されたような、損をしたような気がしたのです。
その上、ゼロだったはずの相続税も、真一さんに64万円、博さんに16万円かかることになりました。
打つ手もあった対策だけど…
・生命保険の非課税枠を利用し、終身保険の一時払いに入る。
・非課税の住宅資金贈与や教育資金贈与を活用する。
など手はあったものの、もっと大切なことは、土地売却の事実を兄ではなく、税務署の指摘で発覚してしまったことです。
おかげで博さんは真一さんに不信感をもつ事に。
遺産分割の手順は、財産目録の作成から
相続財産を、兄弟間で隠そうとする所から相続争いは始まってしまいます。
遺産分割をする手順は、財産目録の作成し、相続人全員に公開するところから始まります。(執筆者:橋本 玄也)