アパートなどの不動産への投資は、不労所得や節税などさまざまなメリットをもたらします。
ただ、それは「満室」である場合の話。
常に想定通りにいくわけではありません。そして、他の投資と同じくリスクが伴います。
「空室の発生」はそんなリスクの一つです。

目次
空室には収益減のほか、「減価償却ができない」というデメリットも
不動産投資を行う際、「空室リスクも考えよう」と言われます。
なぜなら、空室が発生すると、その分不動産賃貸による収入は減るからです。
ただ、デメリットはそれだけではありません。
空室が発生した場合には、計上できる経費も減ります。
空室分についての減価償却費は計上できません。
空室分についての固定資産税や火災保険料、不動産事業のための借入金の利息も、同様に経費計上できません。
空室で減価償却ができない理由は「空室になっている間は事業に貢献していないから」
それは、税務会計における経費の考え方にあります。
経費は税務会計で「事業を営むのに直接必要な努力」と考えます。
売上は努力した「成果」です。
そのため、
となっています。
結果、5年分の経費を1回で払ったとしても、全額その払った年の経費になりません。
通常、月数などで按分し、5年間にわたって費用計上します。
事業用の雑誌代は経費にできても、プライベートの雑誌代を経費にできないのも同じ理屈です。
プライベートの雑誌代は売上を作るための努力ではないのです。
減価償却とは、「資産が摩耗することで売上に貢献している」という考えに基づき、一定期間にわたって少しずつ発生する「目に見えない経費」です。
ただし、経費になるのは「事業が営まれている間のみ」。
つまり、お金を払ってくれる賃借人がいて、その賃借人向けサービスに貢献している間だけの話です。
空室になっていて売上がなければ、その部屋は事業用とはなっていません。
したがって、その分の減価償却費は計上できないのです。

これをやれば、空室が出ても減価償却は計上できる
ただし、
があります。
次の要件を満たしている場合です。
特に(2)と(3)が重要になります。
(2) 入居者の募集を継続して行っている(入居者募集の広告や看板を貼る、不動産屋に賃貸物件として登録するなど)
(3) いつでも稼働しうる状態に置かれていること(維持補修や清掃がなされていることなど)
(2)と(3)は、不動産賃貸の事業を営む意志があり、実際にその努力をしていることを意味します。
そのため、この2点をきちんと行っていれば、空室分の減価償却やその他の経費も計上して差し支えありません。
ただし、空室期間があまりに長い場合や入居者の見込みがない場合などは、また別途経費計上の是非を考える必要が出てきます。
税務判断は杓子定規的ではなく、その場その場の状況に応じて検討しなくてはなりません。(執筆者:鈴木 まゆ子)