「82万円の壁」出現か…103万円すら下回る壁は何を意味するのか?

「〇万円の壁」に関しては、税と社会保険の扶養範囲を意味する「103万円の壁」、「130万円の壁」が長らく有名でした(少し知名度が下がるものとしては、住民税所得割非課税に関する「100万円の壁」や配偶者特別控除に関する「141万円の壁」)。

しかし近年になって「141万円の壁」が「201万円の壁」に引き上げられた上、「106万円の壁」「150万円の壁」とどんどん増えていきました

さらに2018年8月の最終週になって、「82万円の壁」という103万円すら下回る壁の登場をにおわせる報道がされています。

8月27日に日本経済新聞朝刊の1面で報道された他、その前後に複数の報道機関で報じられた「厚生年金の適用拡大」が関わってきます。

「106万円の壁」を下げる方向

106万円の壁を下げる方向

≪引き上げられる壁と引き下げが検討されている壁≫

改めて「106万円の壁」とは?

社会保険の扶養範囲は、60歳未満であれば年収130万円未満等の要件があり、いわゆる「130万円の壁」として知られていました。

ここに2016年10月からは「106万円の壁」が登場しました。

短時間労働者であっても雇用契約で下記の条件を満たした場合は、従来健康保険・厚生年金加入者の扶養に入れた場合でも、扶養からは外れ職場の社会保険に加入することになりました。

(1) 月収8.8万円(年収106万円)以上
(2) 勤務先の従業者数501人以上
(3) 契約期間1年以上
(4) 週20時間以上 ※週30時間以上は2016年9月以前でも社会保険の加入対象
(5) 学生ではない

月額8.8万円以上→6.8万円以上

今回報道された「厚生年金の適用拡大」の大きなポイントは、(1) の月収8.8万円以上の要件を2万円下げて、6.8万円以上とすることです。

ここから推計すると「106万円の壁」は24万円下がることになり、103万円すら下回る「82万円の壁」ができることになります。

事業所の従業員数要件の撤廃も検討の方向

(2) 勤務先の従業者数501人以上の要件があるために、中小零細企業の短時間勤務者は106万円の壁を意識せずに済んでいました(500人以下でも、労使の合意で加入することはできます)。

中小零細企業の側も、社会保険料の会社負担が重くのしかかるという事情もあったからです。しかし従業者数をもっと引き下げるような変更が検討される方向で、最悪撤廃も考えられます

最速で2021年から実現見込み

壁出現

「82万円の壁」ができる(法改正)まで下記の流れで進んでいくため、最速では2021年内に実現することが見込まれます。

2018年:社会保障審議会・年金部会で、検討会設置を提案
2019年:2018年に提案した検討会を開き、有識者の意見を聴取
2020年:国会に法案提出・審議

所得税・住民税非課税者も社会保険負担が発生することに

「103万円の壁」を下回るということは、所得税負担の無い専業主婦(夫)でも職場の社会保険に加入することが考えられます。

年収額を抑えるいわゆる「就労調整」が進む懸念があった一方で、厚生年金に加入したほうが老後の年金額が増えるためパート・非正規労働者側が加入を望む動きもあったわけですが、対象者が拡大することになります。

年収82万円となると、住民税非課税の最低ラインである年収93万円(地域差がありますが、最も低い地域)よりも下回ります

住民税非課税者は社会福祉で優遇されることが多いですが、それでも厚生年金など社会保険負担が発生することになります。

年収82万円の場合、年間10万円程度は社会保険料負担の発生が想定されます。

手取りベースで82万円を維持するためには、ギリギリ住民税非課税のラインである93万円まで年収をあげないといけなくなります

(注)「82万円」の数字や、実現に至る時期は、2018年8月末時点での合理的な推計・推論に基づくものです。

今後の政府・国会の動き次第では数字や実現時期が変動することは想定されますので、関連報道に着目してください。(執筆者:石谷 彰彦)

この記事を書いた人

石谷 彰彦 石谷 彰彦»筆者の記事一覧 (156)

1977年生まれ。保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じFPの資格を取得。非常勤での行政事務の経験もあり、保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングや国家試験過去問の解説作成を行う。お得情報の誤解や無知でかえって損をする、そんな状況を変えていきたいと考えている。
<保有資格>AFP(CFP試験一部科目合格)・2級FP技能士・日商簿記2級
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