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意外と知らない、投資と投機的の違い
読者の皆様は、投資と投機的、どちらに興味があり、どちらをしていますか。
金融庁の経済レポート(平成28年度9月)の中で「貯蓄から資産形成へ」という見出しがあります。
これは、政府の方から「貯蓄だけでは資産形成が不十分な世の中になってきましたから、投資などで資産形成をしてはどうですか」と優しく表現しています。
また、それ以前のスローガンは、よりダイレクトに「貯蓄から投資へ」でした。
つまり、「貯蓄から投機へ」ではないのですね。
ただ、じつは本人は投資をしているつもりでも、投機的なことをしている方は意外と多いものです。
そのようなことを避けるためにも、投資と投機的の違いとはどのようなものか見てみましょう。
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全体が増えているかどうかが問題
まず、投資とはどのようなものでしょうか。
それは、成長に参加している資産にお金を働きに出すことです。
たとえば、(分散した状態で長期間行う)株式投資です。
株式投資をするということは、企業に私たちのお金を出して、生産活動に参加している、ということです。
ここで重要なのは、成長に参加しているわけですから、長期で見た場合に、株式市場全体(分散投資した状態)が成長する可能性がある、ということです。
また、世界全体の株価の推移を長期間で見ると、成長しています。
未来は不透明ですが、過去から見ると、お金が大きく成長する可能性があるわけですね。
そのため「貯蓄から投資へ」と言えます。
短期の投資は投機的になりやすい
では、次に投機的について見てみたいと思いますが、ここで注意点があります。
じつは「ここからここまでが投機ですよ」というように、投機を厳密に定義するものはありません。
そのため、ここでは投機「的」という表現にさせていただきます。
また、投機的なことが悪いわけでもありません。
ただ、合理的な資産形成・運用を考えた場合に、投機的よりも投資の方がより理にかなっているのではないか、と考えることができます。
ここでは、投機的は全体の総和が増えないもの、として考えてみましょう。
先ほど、投資は成長に参加しており、長期で見た場合に全体が大きくなる可能性があるもの、と述べました。
しかし、投機的はそうならずに、全体が大きくなっていない状態なワケです。
ちょっとわかりにくいですね。分かりやすい解説のために、実験してみましょう。
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密室で博打をしても全体のお金は増えない
実験です。あなたと私の二人が、密室でお互いのお金を賭けて博打をしたとします。
持ち金はそれぞれ5万円ずつで合計は10万円です。
博打の結果は、あなたの予想が当たるかどうか、というあやふやなものです。
このとき重要なのは「密室の中のお金の総額が増えたかどうか」です。どうなったでしょうか。
当然ですが、合計は10万円のままです。増えていません。
これはどういうことかと言いますと、成長に参加していないので全体の総和が増えていない(成長していない)状態です。
これが投機的です。すなわち、誰かが勝って(喜ぶ)、誰かが負ける(悲しむ)という仕組みです。
これでは合理的な資産形成が難しくなってしまいます。
この仕組みの代表的なものとしては、短期間での株式や通貨などの頻繁な売買が挙げられます。
どっちを選ぶかはあなた次第
すでに資産運用を始めている方は、ご自分の行っていることが、果たして自分の行いたいスタイルなのかを冷静に分析してみると、新しい気づきがあるかもしれません。
また、これからできるだけ着実に資産形成を目指したい方は、最初から投資へと軸足を置いて勉強や運用を行うと、合理的な知識が身に付きやすいかと思います。
政府が言っているのは「貯蓄から投機へ」ではなく、「貯蓄から投資へ」です。
どちらが「良い・悪い」ではなく、大切なのは、投資と投機的、それぞれの特徴をご自分でしっかり理解して行うことではないでしょうか。(執筆者:佐々木 裕平)