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「お金の無料相談」こそが高くつく FPに相談する際の5つの注意点

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「お金の無料相談」こそが高くつく FPに相談する際の5つの注意点

金融マンに会うと高くつく!

金融マンに会うと高くつく!

ある大手金融グループの役員さんから面白い話を聞いた。

先般金融庁から投資信託販売に関する数値指標(いわゆる「KPI」)を出すように指示を受けたことを切っ掛けにこのグループでは投信販売に関する社内のデータを収集したのだが、その際に

「グループの社員と顧客の接触回数が多いほど、顧客の運用成績が悪い」

という明確な関係が見つかって、会議で問題になったのだという。

「本来、顧客の運用を改善するために働いているはずの、我が社の社員が、顧客と多く接触するほど顧客の運用リターンが悪化するというのは本末転倒ではないか」との声が上がったらしい。

しかし、

1. 金融マンは自分の時間を使う以上は時間のコストを手数料で回収しようとするはず

2. 金融マン自身にリターンを改善するような能力は無いのだから、彼らとの接触回数が多い方が、運用が悪化するのは全く当然のこと


金融機関の店頭には、「何でも相談に乗ることができます」といった趣旨のキャッチ・コピーと共に有名な俳優さんが優しい顔で微笑んでいるようなポスターが貼られているが、無料だからといって、不用意に相談に出掛けない方がいい。


タダほど高いものはない」という諺を思い出そう。

FPのビジネスモデルを知れ

お金の相談に乗る職業というとFP(ファイナンシャル・プランナー)が思い浮かぶ。

金融機関にもFPの有資格者がたくさんいるし、金融機関に所属していない独立系のFPも存在する。

金融機関のFPは、もちろん試験に合格して資格を持っているし、大手金融機関の情報を持っているので、率直に言って独立系のFPよりも立派そうに見えるかも知れない。

率直に言うと、金融機関の社員の方が独立系FPよりも金融知識のレベルが高いことが多い印象もあるのだが、彼らは、金融機関から報酬を貰っているのであり、金融機関を稼がせなければいけない立場の人達であり、「接触するほど、損をする」可能性が大きい、近づかない方がいい相手だ。

独立系FPならいいかと言うと、2つ注意が必要だ。

注意点1:保険を売ると報酬が貰える

直接金融機関に勤めていなくとも、例えば、生命保険会社と代理店契約を結んでいて、保険を売ると報酬を貰えるビジネスを営んでいるFPが少なくないことだ。

生命保険会社から受け取る報酬はケースによって異なるが、保険料の数か月分から1年分程度が渡るようだ。

こうしたビジネスを営むFPは、顧客に不必要な保険、より手数料の高い保険、有利にならない保険の見直しなどを勧めるインセンティブ(誘因)を持っているので、相談相手としてふさわしくない。

生命保険以外にも、証券会社と証券仲介業の契約を結んでいるケースもあるし、近年は、不動産業者と結託して、マンション投資などを顧客に紹介して、制約に至った場合に謝礼を受け取る(成約額の1~3%程度と聞く)FPもいる。

注意点2:見解が「金融機関」寄り

生命保険会社その他の金融機関が主催する講演・セミナーなどの講師として指名されて報酬を受け取るFPは、生命保険、投資信託などについて概して甘く、金融機関寄りの見解を述べることが少なくない

金融商品等を販売すること、金融機関に協力することから報酬を得ているFPは、利害の上で「中立」とは言えないことに注意して欲しい。

商品販売に関わっていないかFPに率直に訊いてみて、商品販売に関わっているFPだと分かった場合に、

「あなたから、商品は決して買わない。しかし、相談料はしっかり払うから、純粋に相談だけして貰えないだろうか」

と交渉してみる手はあるかも知れない。

但し、人は、普段言っていることと別の事を言いにくいものだし、普段の活動に対する自己正当化の心理が働くものでもあるので、厳密に言うなら、やはりこうしたFPは相談相手として不適格だ。

金融機関に協力するFP

FPの知識不足をどう補うか

仮に、金融商品販売に関わらず、金融機関と癒着もしていない独立系FPが見つかったとしよう。幸運である。

しかし、次の問題は、

自分が相談したい問題について、FPが十分な知識を持っているかどうか

FPがカバーする分野は広く、分野によって得意不得意があるし、FPが講習等で教え込まれている金融知識は、突っ込みが足りなかったり、時に誤っていたりすることがある。

例えば、生命保険や投資信託などの個々の商品については、保険会社や運用会社から聞いた説明以上の知識が無いFPが少なくない。

金融機関が催す商品説明会のような場にのこのこ出掛けるFPが少なくないことについて、筆者は日頃から少なからず不思議に思っている。

「売り手に都合のいい話だけ聞いて、面白いのだろうか?」

「あのFPたちは大丈夫なのか?」

という疑問が湧く。

しかし、相談をする側は、もともと十分な知識を持っていないから相談するのであり、FPの知識レベルを判定することは困難な場合が多いだろう。

「セカンド・オピニオン」

この問題に、決定的な対策は無いが、1つの方法は医療の世界で言う「セカンド・オピニオン」を取る事だ。

つまり、別の独立系FPに相談して回答を比較するのだ。

一方のFPの見落としや誤りについて、別のFPの話を聞いて分かるというケースは少なくないはずだ。

FPの相談料の多くは、1時間当たり1万円、せいぜい2万円くらいのものだ。

相談が2、3回に及ぶとしても、せいぜい数万円であり、運用、家計管理、税金、相続などの改善効果が数十万円、場合によっては数百万円に及ぶことを考えると、相談料はそう高いものではないが、無料相談よりも安心だ。

無料相談は、別のところで手数料を取られかねないし、アドバイスの内容がビジネス上の利害で歪みやすい。

無料の相談こそが高くつくのだ」ということを再度強調しておこう。

相談はテーマ別に、相談料をしっかり払って

さて、FPにお金の相談をする場合のポイントをまとめると以下の5点だ。

(1) 金融機関と利害関係の無い「独立系FP」に相談する

(2) 「セカンド・オピニオン」を利用する

(3) しっかり相談料を払う意思を表明して相談する

(4) テーマを具体的に決めて相談する

(5) 答えではなく「考え方」を教えて貰う

本気ならムダではない

(4)「テーマを具体的に決めて相談する」について補足

具体的に何について納得したいのか相談のテーマをはっきりさせてから、個々のテーマ毎に相談するべきだ。

例えば

「NISA、iDeCoの使い方と手続きについて教えて欲しい」

「必要な貯蓄額と、その達成方法について相談に乗って欲しい」

といった具合に、テーマを予め明確にして相談に臨むべきだ。

会社のコンサルタント契約などと同様に、継続的な顧問契約のような契約形式を望むFPが時にいるのだが、継続的な契約の場合、先方は契約を続けるために、知識を小出ししにしたり、新しい問題を見つけてビジネスを作ったりすることがあるので気を付けたい

コンサルタントというものは、本来は問題を無くするためにいるのであって、会社に寄生するがごとく継続的な契約を取りたがる者は概して能力が低い

FPについても、同様な問題が起こりうる。

(5)「答えではなく「考え方」を教えて貰う」について補足

「今、どういう商品で運用したらいいですか?」と答えを聞くのではなく、

「運用計画を組み立てる方法と、運用商品を評価する方法について、理由も含めて教えて下さい」

といった具合に、「方法」と「考え方」について納得が行くような説明を得る事を目的として相談したい。

最後にもう一言言っておこう。

お金に関するたいていの問題は、適切な本を2、3冊読んで、自分の頭でよく考えたら分かるはずだ。

特に、金融の問題は、前提条件を明確にすると損得の比較が出来、答えが1つに決まる

「相談」をすることは、例外的な事態なのだ

と心得ておきたい。


「相談」に依存しない心構えが大切だ。(執筆者:山崎 元)

《山崎 元》
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山崎 元

山崎 元

経済評論家 株式会社マイベンチマーク 代表取締役 1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、野村投信、住友生命保険、住友信託銀行、シュローダー投信、NBインベストメントテクノロジー、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、第一勧業朝日投信投資顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所に勤務。楽天証券経済研究所客員研究員、国家公務員共済組合連合会資産運用委員会委員。1994年東洋経済高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。2005年1月に株式会社マイベンチマークを設立し代表取締役に就任。 寄稿者にメッセージを送る

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