このところ目につく金融商品があります。

それはじぶん銀行の「スイッチ円定期預金」。

円預金を名乗っておきながら、利率は驚異の7.5%(豪ドルタイプの税引き前)だなんて。

外貨っぽい匂いを出しておきながら、預金保険制度の対象だなんて

じぶん銀行の「スイッチ円定期預金」

預金というよりは利用者が胴元になる為替ギャンブル

じぶん銀行「スイッチ円定期預金」

詳しく見てみましょう。

申込期間が2019年2月7日~13日のものを解剖してみます。

(1) 米ドルタイプ(金利5.0%)と豪ドルタイプ(金利7.5%)の2種類。

(2) 高金利ですが、預入期間は1か月と短い。

(3) 利息は円で受け取る。

(4) 特約判定日(満期日の3営業日前)の為替が預入日の翌日より円高なら、元本は外貨で払い出し。

(5) 特約判定日(満期日の3営業日前)の為替が預入日の翌日より円安なら、元本は円で払い出し。

(6) 10万円以上、10万円単位での取引。

(7) 中途解約は原則不可で、それでも中途解約する場合は元本割れする。

まず気になるのは(4)でしょう

円高になると外貨預金に切りかわるということなのですが、外貨預金は円高になると円ベースでは元本割れします。

「定期預金」と言われてしまうとすごく安心な商品のように感じてしまいますが、それは間違い。

じぶん銀行だってきちんと「元本割れとなるリスクがあります」とことわっています

ということで円高時には元本割れするリスクがあるのですが、円安時にはその分利益が出るのが外貨預金のウマ味ですよね。

そこをギャンブルするのがFX取引でした。

しかしここで(5)がそれを阻む

円安時には受け取りは円なのですから。

つまりこういうことです。

(4) 為替相場のマイナス面である為替差損を受ける。

(5) 為替相場のプラス面である為替差益は享受できない。

…すごく割に合わない取引ですね。

しかし、ここで(1)の高金利が活きてきます

(4)、(5) だけだと損しかありませんが、どの場合でも(1)の高金利という得は一律でゲットできるということ

しかも(2) 超短期の運用だからそんなに為替リスクはないでしょう?

という売り方なわけですね。

これは安心資産である定期預金というよりは(そんなことじぶん銀行も言っていませんが)、利用者が胴元になる為替ギャンブルだと考えるのが妥当でしょう。

銀行側が利息という掛け金をベットして、円高に賭けているというイメージです。

…もしかしたら、おもしろい賭け事かもしれませんね。

もう少し突っ込んでみましょう。

勝敗の分かれ目は0.5%以下

為替がこれ以上円高になったらだめ

より高金利の豪ドルタイプに100万円預ける例を考えてみます。

金利は7.5%ですがこれは税引き前で、税引き後には5.97%になります

ただしこれは年率ですので、1か月間の短期預金ゆえ12か月で割り算をしなければなりません。

100万円 × 5.97% ÷ 12か月 = 4,975円

こちらが、先ほど掛金に例えた利息です。

この4,975円が、この「スイッチ円定期預金」を開始した時点で1か月後に約束されるので、為替相場が円安なら利用者は4,975円もうけられるってわけですね。

そして円高になったとしても、為替差損がこの4,975円以内なら、やっぱり利用者には利益が残ります

とはいえ4,975円は100万円にとっては0.5%以下

為替がこれ以上円高になったら、利用者の負けなのです。

2018年の月終値なら、勝率は五分五分だが期待値は圧倒的に損!

さて。それでは実際にこの「スイッチ円定期預金」に100万円を預け入れるとどのようなことが起こるのでしょうか。

2018年の月終値を例にとってシミュレーションしてみましょう。

なお、実際には判定は預入日翌日と満期日の3日前の為替相場だし、預入期間は月の初めから終わりとは全然限らないのですが、あくまでもイメージをつかむためにそのあたりの細かいことをいいかげんにしてしまっていることを断っておきます

下の表の左2列はYAHOO!ファイナンスのウェブページからいただいた、2018年の各月の終値です。

前月と当月の終値を比較して円高/円安を判定し、円安の場合には払出元本が100万円となります。

円高の場合には豪ドルでの払い出しになるので、即時に日本円に両替するとしてじぶん銀行の為替手数料1豪ドルあたり0.25円を差し引いて、払出元本を算出しました。(「スイッチ円定預金」は円に換える片道のみ為替手数料がかかります)

最後に最右列で利息の4,975円を加算して、この金融商品の最終的な損益が導き出されます

2018年の月終値を例にとってシミュレーション

上の表を確認すると、為替の判定は円高も円安も6か月と、勝率が五分五分になっていることが分かります。

しかし、この商品のミソは、利用者が勝ってもその

勝ち分は利息の4,975円に固定される

ということでした。

そのあたりを気にしながら最終的な損益を確認すると…がく然。

ひどいときには6万円以上も損しているじゃありませんか!

円高の6か月中、実に5か月が1万円以上の損となっています。

得は5,000円足らずに固定なのに…

普通の外貨預金なら、11月なんて為替変動だけで3万円を軽く超えるビックゲインなのに…。

なお12か月分の最終損益のプラスマイナス合計は17万2,819円となりますので、この金融商品の期待値は次の式でマイナス1万4,402円となります。

17万2,819円 ÷ 12か月 = 1万4,402円

超玄人むけ商品!

超玄人むけの商品です

ここまで書いてしまうと、この「スイッチ円定期預金」がとんでもない悪徳商品のように思えてしまいますね。

しかし誤解しないでください。

じぶん銀行様は悪徳金融機関ではありません。

私はこの時点で2つ、重大なことを書き漏らしています。

・ 2018年は通年で1豪ドルあたり10円も円高になる、この金融商品の利用者にとって厳しい状況だったこと。

・ 円高となり外貨で払い出されたとしても、すぐさま円に換える必要はなく有利な為替相場への変動を待てば良いこと。

そうです。2019年は「スイッチ円定期預金」の利用に適した市場になるかもしれません

もし「スイッチ円定期預金」という賭けに負けたとしても、一般の外貨預金として持ちつづければ良いのです。

この外貨預金は預金保険制度の対象外です。

しかも外貨預金なら必要な、預入時の為替手数料がかからないというのもこの商品の魅力です。

そう考えると、絶対に手を出してはいけない商品だとは、言えませんよね。

しかし、これだけは断言しておきます。

誰もが手を出してはいけないとは申しませんが、金融に明るくない素人は手を出してはいけない商品です。

だって為替相場の変動を読まなければなりませんし、五分五分の確率でリスク資産である外貨預金の保有者になるのですから。

まちがっても、高金利のうたい文句にほだされて余裕資金でない資金を投入してはいけません。(執筆者:徳田 仁美)