「人生50年 + α」モデルというのは、人生は50年が潮時、50歳を過ぎるとそれは「おまけ」のようなものということです。
江戸時代の井原西鶴の辞世は、「浮世の月見過ごしにけり末二年」、意訳をすると「寿命の50歳を過ぎて2年あまり、そろそろ、この世からあばよ」というところでしょうか。
「末」という一字に50歳、+ αは2年という感じです。
江戸だけでなく、明治になっても夏目漱石は49歳で亡くなっています。
人生50年、華のあるなかで人生を閉じるというイメージでしょうか。

ところが、人生100年からみると、「人生50年 + α」モデルというのは、いかにもあわただしく性急で、短期決戦型に思えてきます。
本当に、「人生、楽しいですか」と思わず突っ込みをいれたくなります。
世の中、かなりの方がこの「人生50年 + α」モデルに留まっているように思えます。
そろそろ、不幸に陥る洗脳から解き放たれてもよい時代になってきたのではないでしょうか。
今回は、第1回ということで、「人生100年」モデルを考えるにあたり、優れた実践者(実践者というのは私が勝手に考えているだけですが)にご登場いただいて、具体的な人生100年を考えてみたいと思います。
「自分は130歳まで生きるつもりだ」と公言しているスーパーボランティア
昨年8月に山口県周防大島町で2歳の男の子が行方不明になったものの、捜索が難航。
約68時間たってから78歳(当時)のボランティアが見つけたという報道で有名になった方です。
テレビなどで詳細に報道されたので覚えていらっしゃる方も多いと思います。
その災害ボランティアをされていたのが大分県生まれの尾畠春夫さんです。

雑誌などで詳しく報道された記事を読むと、被災地や現場へは軽自動車で向かい、宿泊は車中でし、現地での移動は主に自転車、車内は災害救援用の道具の百貨店という写真は、まさに「スーパー」と名がついてもおかしくないボランティアです。
ボランティア活動がいきがいであり生活の中心にあるように思えます。
新潟県中越地震を皮切りに災害ボランティアをスタートしたとありますから、2004年10月で、65か66歳のときでしょうか。
尾畠さんは、1939年生まれなので今年80歳。
28歳のときに大分で自らの意志で鮮魚店を開業し65歳で閉店するまで37年間自営業で生計を立てていました。
40歳から登山を始め、60歳で登山道整備のボランティア活動を開始し、66歳のときに徒歩で日本縦断。
以後、四国遍路、日本一周徒歩旅行など抜群の体力・歩行力があるようです。まさに健康そのもののようです。
ご家族は、妻、子、孫がいらっしゃいます。
鮮魚店の開業の資金は、東京で土木業に従事とありますから出稼ぎで資金を作り、自営業者として立派に生計を立て、家族を養い、子どもを社会に送り出していらっしゃいます。
店を畳んでからは、店の売却資金による現在所有の住宅があり、国民年金の月5万5,000円の生活だと家計簿を公開しています。
月5万5,000円で生活した上で、ボランティア活動に従事するということが、金銭的に可能なのかと思ってしまいますが、実際に実行されているようです。
当然、家計もシンプルそのものです。NHKの支払いや固定資産税の支払いがある月は意識して食費を削るとあります。
「人生100年」モデルからみると
人生100年モデルは簡単なものです。
人生100年として、20歳までと80歳(これは個人差がかなり出てしまいますので「およそ」です)以後は養育や支援・介護が必要になる時期です。
すると、20から80歳までが自立人として活動できる期間です。
20から50歳までは家族を持ちたい方は、まさに家族のために働く、泥まぎれの30、40代になります。
人生後半のための資金も、人生後半に用意するとなると、より一層の頑張りが必要になるわけです。
しかし、50歳以降の人生後半になると、子どもが独立し、夫婦関係もお互いひとりの人間に戻ります。
やりたいことがあれば自由にすればよいのです。

人生前半では、自分が好きでやりたいことを見つけ出しておくこと、自分にとってなにが「居心地」がよいのか見極めていくことが、非常に大切です。
ここで、もう一度、尾畠さんを振り返りたいと思います。
まず、人生に、ご自分の意志を強く感じます。魚屋という自営業を選び、37年間営んでいます。
40歳のときから好きな登山やボランティアに動き始めています。
そして、25年間の経験をもとに、ボランティア活動の本格実施となります。
お金に関しては、自己規律がすばらしいものです。
私も自営業者なのでお金の管理はすべて自分でするわけですが、お金に支配されない、お金を支配できる方だとも思えます。
次回から、より詳しく「人生100年」モデルを考えていきたいと思います。(執筆者:井戸 美枝)