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どうなるマクドナルド株価 カサノバ社長辞任でも株価上昇を期待するにはまだ早い

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どうなるマクドナルド株価 カサノバ社長辞任でも株価上昇を期待するにはまだ早い

日本人新社長に注目集まる

日本マクドナルドホールディングスの株価は2月、好調な前期決算・今期業績計画の発表を受けて大きく上昇した。

そして株価が5,000円ほどに到達した際、同社は続けざまに新たな計画を発表。

それは事業子会社である日本マクドナルドの代表取締役社長兼CEOに、これまで上席執行役員CSOを務めていた日色保氏が就任するというものだった。

従来社長を務めていたサラ・カサノバ氏は代表取締役会長に就任する。

マクドナルドはハンバーガーの知名度はもちろん、株主優待の魅力もあって株式市場での注目度も高い。

結果、今回の人事計画はメディアで大きく取り上げられ、さらに世間の注目を集めることとなった。

日本人新社長に注目

新社長の施策を推測

新社長の施策を推測

日色氏の経歴や発言から、今後の施策を考察してみる。


まず、同氏は2018年9月に日本マクドナルドの執行役員に就任する以前は、製薬や医療機器などを取り扱う米ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人の代表を務めていた。

2月21日付の日経新聞によると、新社長としての目標について。

「2018年9月に入社し、徹底的に現場のオペレーションを学んだ。前職でも営業からのたたき上げ。現場を理解することが何よりも重要だ」
「ミッションは中期経営計画をしっかり達成すること。デリバリー、カフェ、デジタル化など現在の取り組みをさらに加速する」
「前職では、いかに従業員のモチベーションを高めるかに注力した。ピープルビジネスである日本マクドナルドでもその経験を生かしたい」(日経新聞の記事を引用)

とコメントしたという。

また、旧社長のカサノバ氏は日色氏を人や組織の開発にたけたピープルリーダーと捉えているとした。

これらをヒントに考えると、日色氏は新社長として「現場の従業員のモチベーションアップなどを図ることで組織を強化していくほか、デリバリー、カフェ、デジタル化などの取り組みを加速させる」という計画を意識していることが見てとれる。

なかでも、これまでの経歴やカサノバ氏の期待からして従業員のモチベーションアップによる組織強化にはひときわ精力的に取り組んでいくと思われる。

組織・人事変革の分野は報酬体系や社内風土醸成、人材獲得、リーダー育成など裾野が広い。

日色氏が思い描く具体的な施策はまだ不透明だが、会社の3大資産であるヒト・モノ・カネのうち、「ヒト」に焦点を当てた改革が進められる可能性は非常に高いだろう

業績・株価にどれほど影響するのか?

業績・株価への影響は?

では、今回の件が業績・株価に与えるインパクトはどれほど大きいのだろうか?

結論をいってしまうと、少なくとも短・中期的には影響は軽微であるように思われる。

まず、想像に難くないように人事マネジメントは即効性のある施策ではない。

なかでも、従業員のマインドを変えることは難しいとされ、その集合体である組織の風土、心理的ベクトルを変えるには長期継続的かつ効果的な施策が必要となる。

この点で、短・中期的に業績に寄与するようには考えづらい。

そして、長期的な効能にも多少不安感がある。

投資家の中で、日色氏がいうようにマクドナルドを「ピープルビジネス」と考える人はどのくらいいるだろうか?

ピープルビジネスとは読んで字のごとく、業績がヒトの質に大きく依存している商売だ。

資産運用会社(ファンドマネージャーに依存)や美容院(腕のいい美容師に依存)などがイメージしやすい例だろう。

メディアや投資家の中では、マクドナルドは時間を過ごす場を提供するサービスと捉えられている。

今筆者はこの記事をマクドナルドの店舗にて執筆している。

周りを見渡すと、パソコンを叩くサラリーマン、友達と勉強する高校生、テキストを開いて資格の勉強をするOL、世間話に花を咲かせるおばちゃん達といったように、皆それぞれ店舗の中で各々の時間を過ごしている。

「ハンバーガーが食べたいから」「従業員の対応がいいから」という理由ではなく、時間を過ごす場所としてちょうどよいからマクドナルドを選んだという印象が強い

これは筆者の主観的な感想であって客観性に欠ける部分もあるが、世間に語られる「マクドナルドは時間を費やす場を提供するサービス」という捉え方に間違いはないように考えられる。

要は、世間・株式市場的にはマクドナルドを、ハンバーガービジネスでもピープルビジネスでもなく、プレース(場)ビジネスとみているということだ。

ここに、経営陣と市場との認識のかい離があるように思える。

煎じ詰めれば何事もヒトに行き着くので、「マクドナルド経営にはヒトが大事」と論じることもできなくはないが、現状多くの利用者がその「場」を求めてマクドナルドを訪れている以上、「ヒトが業績の最大決定要因」とみることには無理があるように思える。

もし経営陣が「マクドナルド経営のボトルネックはヒト」と断じる客観的根拠があるならば、それをまずしっかり投資家に説明し、認識のギャップを埋めた上で計画を進めるべきだろう。

こうした効能が不透明という状況を踏まえ、人事改革の長期的寄与も不安感があると考えている。

また、旧社長のカサノバ氏の発言も注意が必要とみる。

同日経新聞でカサノバ氏は

「会長として長期的な成長に向けた計画や課題の確認などに取り組む。また会長職の任期は2年で、ホールディングスでも引き続き仕事をする。辞めるというプランはない」

とコメントしたという。

ホールディングスレベルでの長期的な経営戦略を立案するのは、引き続きカサノバ氏ということだ。

その点で、全体的な経営方針がさほど大きく変わらない可能性も多かれ少なかれあるとみている。

今後の注目ポイントは?

まずはやはり日色氏が考える計画の詳細情報と、効能の明確な説明だろう。

即効性のあるクリエーティブな人事計画が発表されればポジティブサプライズか。

そして、カサノバ氏が全社的経営戦略にどの程度関与するかも要注目だ。

業績拡大・株価上昇を期待して今から株を買うより、上記の点の確認を待つことが賢明と考える。(執筆者:高橋 清志)

《高橋 清志》
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外資系投資会社にて株式アナリストとして勤めております。主に「株式投資」の分野で具体的な企業の例を交えながら、資産運用に役立つ生きた知識をお伝えしたいと思います。話題のテーマを取り上げ、噛み砕いてご紹介することで、企業経営や金融に対する「知的好奇心」を満たしたり、数字ベースの堅実な投資スタイルを身に付けられたりできるような記事をご提供していきます。 寄稿者にメッセージを送る

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