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「デジタルファースト法案」閣議決定 将来、ほとんどの行政手続きは電子申請に統一される

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「デジタルファースト法案」閣議決定 将来、ほとんどの行政手続きは電子申請に統一される

自民党は3月7日、行政手続きの100%オンライン化を目指す「デジタル手続法案」を部会で了承し、それを受けて政府は15日、行政手続きを原則、電子申請に統一する「デジタルファースト法案」を閣議決定しました。

マイナンバー制度から見えるIT社会が、この法案で完全に見えてきましたね。

まず「デジタル手続法案」とはなにかから見ていきましょう。

「デジタル手続法案」とはなにか

デジタル手続法案とはなにか

デジタル手続法案は、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が中心となっているもので、「デジタルファースト法案および各省庁デジタル・ガバメント中長期計画」に基づくものです。

この法案は業務改革(BPR)の徹底とデジタル化の推進が基本コンセプトとなっていて、具体的にはオンライン化の徹底と添付書類撤廃となっています。

この法案策定に関するヒアリングとして

・関連する手続について、関係する省庁で官民共用システムを構築している事例
・国及び自治体で連携してワンストップサービスシステムを構築している事例
・定款について、当該法人のホームページに掲載されている定款を確認することにより添付を省略している事例
・住民票の写しや課税証明書について、行政機関間の情報連携により添付を省略している事例
・同時に求めている複数の添付書類で同じ情報を確認していることが判明し、重複を排除した事例

が挙げられています。「なるほど」と思う部分はありますね。

これらに基づき、情報通信技術を活用した行政の推進の基本原則として

・デジタルファースト
 個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する
・ワンスオンリー
 一度提出した情報は、二度提出することを不要とする
・コネクテッド・ワンストップ
 民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する

が掲げられました。

つまり「オンライン化」を徹底することで、行政手続きの簡素化や添付書類の撤廃を図ろうとするものです。

ただしオンライン実施は「原則」であり、地方公共団体には努力義務となっています。

「オンライン化」実現には、本人認証の強化としてマイナンバー制度の徹底が必要とされています。

電子申請に統一、具体的には?

電子申請に統一

行政手続きを原則「電子申請」に統一することとなりました。


具体的には、引っ越しや法人設立などの際、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット上で申請できるようにします

2019年度から引っ越しに伴う電気やガス、水道の契約変更を一元化することも決められています。

ネットで住民票の移転手続きをとれば、住所などの情報がそのまま転用されるため、電気やガスの契約の際に改めて入力する必要がなくなるとのことです。

同時にデジタル化を促すマイナンバーカードの普及へ、一人ひとりに番号を知らせる紙製の「通知カード」は廃止します

マイナンバーカード普及の一環として、今まで証明証として活用してきた紙製の「通知カード」を廃止することを政府は決めました。

閣議決定した「デジタルファースト法案」では、マイナンバーを連携させるために戸籍法改正案も決定させ、マイナンバーを提示すれば婚姻届の提出、パスポート(旅券)の発給申請、児童扶養手当の請求手続きなどできるようになるようです。

本籍地ではない自治体でも戸籍情報を照会できるようになります。要介護・要支援認定の申請もネットで完結させます。

さらに将来は、死亡届をネットで届けるだけで、年金事務所への手続が完了し、相続の手続も簡素化されることが予想されます

国民の利便性もありますが、死亡者への年金支給継続といった不正給付対策にもなりそうですね。

2020年度には法人設立の負担を軽くするともしています。

登記事項証明書の添付の手間をなくし、ネットで申請できるようにするようです。

これまでは法務局に出向いて証明書を取得し、書類を複数の窓口に持参しなければならず、手間がかかっていました。

この法案には当初、法人を設立する際に必要な印鑑の届け出の義務化をなくす案が盛り込まれていましたが、印鑑業界の反発などを受けて見送られました。

「印鑑レス」社会実現は見送り

「印鑑レス」社会実現は見送り

日本伝統文化に切り込む「印鑑レス化」には、印鑑業界から「待った」がかかりました。

それでも政府は、「印鑑レス」協議を参議院選挙後には行うという報道もあります。

いまや電子署名が普及していて、様々な契約の場で印鑑不要で行われる場面が増えていて、まさに海外では「サイン」中心で、印鑑を使っているのはごくごく少数派で、そもそも海外では印鑑などは存在しないでしょう。

日本での契約や商取引で印鑑が登場する場面を考えて見ますと

・実印・・・土地購入、車の購入、ローン契約など
・銀行印・・・銀行口座開設、預金の引き出しなど
・認印・・・履歴書、婚姻届、請求書、郵便物の受け取りなど

がありますね。

これらの印鑑は実印を除き、100円ショップやホームセンターなどでも売られている大量生産の安価な、いわゆる「三文判」で事足りる現状で、そんな程度の形式は、本当に必要なの科と言う議論もあります。

三文判がないだけで手続が止まってしまうことに、なんの合理性があるのかという指摘です。

世界で普及しつつあるデジタルな本人確認手段には、「電子署名」、「ID・パスワード」、「フォーム入力」といった方式があります。

今後日本にどんどん海外の方がやってくる中で、日本固有の印鑑文化を守ることの是非が問われそうです。

ちなみに、日本土産として外国人観光客に「はんこ」が人気があるそうですよ。漢字そのものがデザインとして人気だそうです。漢字の意味は関係ないようで、また自分の名前を漢字で表記する「当て字」が楽しいようですよ。

税理士業務、司法書士や行政書士業務に変革

税理士業務、司法書士や行政書士業務に変革

確定申告における場面でデジタル化が進み、領収書添付などの添付書類の不要および簡素化が進みます。

税申告のデジタル化の未来像で言われていることは、キャッシュレス社会が進んで、クレジットカードやデビットカード、さらに電子決済による情報がビッグデータに集積され、そのまま自動的に確定申告される世界がやってくるとも言われているようです

確定申告の簡素化は、株式取引やFX取引、更には海外口座での取引においても、いまよりも簡単でスピーディーに、それこそ取引決済時点で自動的にビッグデータに集積されて申告が完了することになるのでしょうね。

イメージですが損益通算がしやすそうですね。

国税庁ホームページの確定申告作成コーナーを利用して書類を作成している人も多いでしょうが、その作業すら不要になってくる世界が待っているかもしれませんね。

行政手続きのデジタル化が更に進めば、今以上に手続や申請がスマホでできるようになり、マイナンバーカード活用で添付書類がなくなることでしょう。

いずれにしても社会生活のデジタル化の背景には、マイナンバーカード普及が前提となっているようです。

IT先進国エストニア共和国に学ぶこと

IT社会構築での先進国はエストニア共和国と言われています。ロシアから独立したバルト海三国の中のひとつです。

ITを行政に活用する「電子政府」を構築しており、国外の外国人にもインターネット経由で行政サービスを提供する「電子居住権」(E-Residency)制度に1万5000人以上が登録しています。

エストニアでは、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット上で申請できないものは「結婚」、「離婚」、「不動産購入手続」だけだと言われています

「結婚」、「離婚」は、ワンクリックでは決めてはいけないということと、不動産取引は高額になることが多いからだそうですよ。

それ以外だと99%のことが、インターネット上で手続ができるそうです。

個人情報は自分で管理するもの

個人情報は自分で管理

ITリテラシーの高さは、自己情報を自分で管理する能力とも言えます。


つまり、何を見せるか見せないかは自分自身で管理するものだというのが、IT社会での重要な心構えとなるべきなのでしょう。それが「自己情報コントロール」と考えているようです。

エストニア国民にとっては、「情報管理は面倒でも、役所に並ぶというどうでもいいことをなくすたけには我慢できる」という発想が、根柢にあるようです。興味深いですね。(執筆者:原 彰宏)

《原 彰宏》
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原 彰宏

原 彰宏

株式会社アイウイッシュ 代表取締役 関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP 寄稿者にメッセージを送る

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