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レオパレス21問題から「サブリース契約」を考える 強引なセールストークや借地借家法との関連

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レオパレス21問題から「サブリース契約」を考える 強引なセールストークや借地借家法との関連

かつて「かぼちゃの馬車」問題を取り上げました。


そのときにも問題となったのが「サブリース」という契約ですが、昨年発覚したレオパレス21に関する問題で、再びクローズアップされることになりました。

まずは、昨年発覚した「レオパレス21」問題を整理してみましょう。

この問題は、大きく二つの要素に分けて検証されると思われます。一つは「施工不良」、もう一つは「サブリース契約」です。

レオパレス21問題から「サブリース契約」を考える

施工不良~組織的、構造的な問題と国の責任

レオパレス21は、オーナーの物件を一括で借り上げてそれを転貸、いわゆるまた貸しをすることを主な業としています。

今回の件で言えば、レオパレス21の収益は

・投資物件の建築
・賃貸業務および物件管理

から得る仕組みとなっています。

物件建築においては、建築コストを抑えることで収益幅は大きく得られます。

建築会社に対しては、違法にコストを抑えることによる収益確保に対しては、国は常に目を光らせなければならないという部分では、国家としての責任が問われるのではとの指摘もあります。

この施工不良問題は、創業者の深山祐助元社長がかかわっているのではとの指摘があり、レオパレス21という会社の組織的・構造的な問題が問われています

施工不良を調査している外部調査委員会中間報告書では、2006年まで社長を務めた深山祐助元社長の直轄部署だった商品開発部門で、施工業務の効率化などを目的に、仕様と異なる部材を使う方向性が示されたとしました。

また、アパートを開発する段階において、物件が建築基準法といった法規適合性を満たすかどうかの判断を、専門的に行う部署がなかったとしています。

当然のことながら報告書では、屋根裏の界壁が未設置だったことをアパート施工時に見抜けなかったチェック体制を問題としています。

実はレオパレス21は2012年ごろから、オーナーとの民事訴訟を抱えていました。

オーナーは裁判で、屋根裏の界壁が施工されていないことを「建物の瑕疵にあたる」と主張していて、昨春にレオパレス21がこの問題を公表する以前から、経営陣は、界壁問題を認識していたのではないかとの疑いがあります

知らなかった…深山英世現社長の主張ですが、経営陣が把握していたかどうかも今後問われることになりそうです。

事実として、天井の耐火性に問題のある物件で7700人の入居者が引っ越しを迫られることになり、全国32都府県にわたり、問題のある物件があるということです。

国土交通省は他社物件でも同様の問題がないかを調査するとしています。

施工不良~確認の不備、監理の不備

欠陥住宅に関しては2つの不備が指摘されます。

・建築確認システムの不備
・建築監理の不備

前者がまさに国の責任が問われることにもなります。

たしかにレオパレス21側の組織的な施工不良を行った経緯はありますが、それらの建物はすべて第三者機関による完了検査を受けて合格し、「検査済証」が交付されているはずです。

不正を見抜けなかった検査体制に対する疑問や非難が声高に上がってこないのはなぜでしょうか

建物の検査には「中間検査」と「完了検査」があり、中間検査に合格しなければ「完了検査」を受けることができず、当然検査済証が発行されることもありません。

最低でも二度にわたる検査が行われたにもかかわらず、界壁などの不法行為が見逃される検査体制に問題はないのでしょうか。

検査員は行政庁からの天下りが多く、建築関連退職者の再就職先の大口受け皿となっているのが現実だそうです。

行政庁の建築関係部署を定年退職した人が何人も民間建築確認審査機関に再就職しており、大半の検査員はそれらの人が占めているという指摘もあります。

この事実と、今回のレオパレス21の施工不良の問題と関係があるのかどうかはわかりませんが、昔から、官僚の天下りという構造問題、民間企業と官僚の関係を紐付ける意見はあります。

地方公共団体の建築主事のみが建築確認、検査事務を行なってきたものを、人手不足等から生まれる杜撰な検査から欠陥住宅が生まれるという指摘から、1998年に当時の橋本内閣は、「建築確認、検査事務」を民間の指定確認検査機関に門戸を開放するべきと主張し、民間の指定確認検査機関を創設することにより、株式会社を含む民間機関に開放された検査体制を構築しました。

ゼネコンやハウスメーカーなどの株式会社(施工業者)が集まって指定確認検査機関を作ることもできる法案であることから、公正中立な確認検査が本当に担保されないという指摘がある中で、検査業務の民間機関への開放した後に、2005年に耐震偽装問題が発覚しました。

このときも、国が認めた機関が「検査済み」のお墨付きを与えていた物件に問題があったことは、大きくは取り上げられませんでした。

耐震偽装問題の根本は、「経済設計」というもっともらしい言葉によるコスト削減で、物件価格を低く抑えることで、消費者にもメリットがあるような印象を与えていたものでした。

後者の「建築監理」とは、設計図どおりに作業が進められているかを、建築士が現場に赴いて監督するものですが、これが十分になされていれば、こんな屋根の界壁未設置などは防げたはずなのです。

建築監理者である建築士は、レオパレス21側が選んだ人なのでしょうかね。

サブリース契約の問題点~歴史から考える

「かぼちゃの馬車」のコラムにも書きましたが、サブリースとは、賃貸オーナーに代わり不動産会社が賃貸住宅を借り上げ、入居者の応募や建物メンテナンスまで一括して不動産会社が請負家賃保証や空室保証などを行うところもあります。


平たく言うと「転貸」、いわゆる「また貸し」のことですね。

レオパレス21という会社は、このサブリース契約による事業最大手と言えます。

千葉商科大学国際教養学部太田昌志准教授がラジオ番組で、サブリース契約の歴史について語られていました。それを要約しますと「サブリース」制度とは…

もともとはアメリカで生まれた制度で、

「地主さんの使っていない土地を集めて、使っていないなら自分達でテナントを探すから貸して…」

という業者が現れ(今で言う「仲介業者」ですね)、

「使っていないのだから安く貸してね…」

という感じで取引がなされ、

「地主さんにしても税金分が浮けばいいや…」

という感覚で始まったものだそうです。

「どちらかというと、大きく儲けるよりも、使っていない土地からお金が生まれるだけで十分…」

という感じでした。

ところがこの制度が日本に上陸したとたんに、

「これで一発あててやろう…」

という「儲け」の仕組みに変わったのだと、太田准教授はラジオ番組で語っていました。

使っていない土地の有効活用というサブリース制度を、不動産には絶対的な価値がある日本においては、「積極的な儲けの道具」となっていったようです。

そもそも土地に大きな価格がつくという日本社会では、土地を持っている者と持っていない者との間には絶対的格差が生じます。

土地を持っているだけで「金持ち」となり、土地を持つ者と持たない者との格差は、バブル経済とともに大きく広がっていきました。

土地を持ちたくても高くて買えない人たちが、土地を持っているだけで「金持ち」に属している人たちに逆転勝利を狙う(この場合「勝利」は金持ちになるという意味で使っています)手段として「サブリース」手法が使われたところがあると太田准教授はおっしゃっておられました。

詳しいことは後述しますが、サブリース契約が広まった経緯を知る上で、サブリース制度が「夢のある博打」的な要素があったということです。

また「支配床(ゆか)」という概念も、サブリース制度普及にかかわっています。

自分の裁量でテナントを見つけられる面積を「支配床(ゆか)」と表現するそうです。

自分たちの力でこの支配床を広げるには限界があり、仲介業者に頼めば、手数料はかかりますが、支配床を広げることができるという大手企業の思惑も、サブリース制度拡大につながったようです。

大手企業は、東京の一等地を手にすることができ、その土地があるだけで常に優位に立てますが、中堅企業には高い値段が付く土地を持つことができません。

そのため、中堅企業が大手企業に肩を並べるには、土地の再開発を進めて価値をつけるしかなく、その際にサブリース制度が用いられた経緯があります。

この「再開発」という言葉もポイントで、大きく成長するために強引な手法がとられたことも、レオパレス21問題の背景にあったとも言えそうです。

地主とテナント側が直接契約するよりも、サブリースでは、仲介業者への手数料がかかります。

仲介会社の手間賃、いわゆるコストをそれぞれ少しずつ「損」として我慢しようというのが米国制度での考えですが、日本ではこれが少し違ってきます。

仲介業者のコストは、テナント側の賃料に転化されています。通常の賃料よりかは割高に設定されているようです。

またオーナー側は銀行融資で投資物件(アパート等)を建てますので、テナント賃料から仲介会社の取り分を除いたオーナー分は、銀行返済額よりも多くなければなりません。

賃料は、それらの思惑で決められるので割高になる傾向にあります。

今回、このバランスが崩れたことにより問題が表沙汰になったと考えられます。

少し高めの賃料でも、経済環境が良ければ許容範囲であったものが、景気悪化でより安い賃料のところが求められるようになると、賃料割高のサブリース物件は空室が目立つよになり、他物件に対抗して賃料を引き下げることが求められてきます。

そうなるとオーナーは銀行への融資返済ができなくなる、いわゆる「赤字」に陥ってしまう恐れが出てきます。

この「賃料引き下げ」にいたる過程が、大きな問題となっています。これが、サブリース問題の本質ともいえる部分で、それが「契約問題」です。

サブリース契約の問題点~契約から考える

セールス・トークと契約内容の違いが問題に

レオパレス21等の仲介業者とサブリースをお願いする側(一応オーナーと表現:オーナーの詳細は後述)との間の契約事項が問題になっています。

というよりも、セールス・トークと契約内容の違いが問題になっているとも言えます。

米国では、もともと「使っていない土地」にテナントをつけてもらうことでサブリース契約を結びますが、日本の場合は、仲介業者が積極的に土地を持っている人(土地持ちオーナー、いわゆる地主さん)にサブリース契約を勧める、サブリース契約を武器に投資用物件を建てさせるのが目的となっています。

「サブリース契約を武器に」と表現しましたが、武器にするには、オーナーさんにメリットがあるように見えなければなりません。

それが

・自動増額特約
・空室保証特約 or 最低賃料保証特約

です。

土地を持っているオーナーには、アパート経営には二の足を踏む人が多く、不動産投資の難しさや面倒さを嫌う人が多いのはよくわかります。

具体的には、地価が上がり固定資産税が上がっても家賃を引き上げられるのかという不安や、もし空室になったときはどうするのかという不安があります。

将来の修理に大きな出費がかかるのではとの心配もあります。

そこでサブリース契約では、将来の賃料値上げに対応する自動増額特約と、一定期間は空室があっても定額を払うという空室保証特約あるいは最低賃料保証特約があり、この特約でオーナーを安心させていました。

サブリース制度が日本に普及した頃はバブル経済に突入する頃で、毎年発表される地価は上昇していました。土地の価値は上がり続けるものという妄想が蔓延していましたね。

オーナーへのセールストークは

「儲かる・任せる(任せられる)・保証する」

だと、荻上チキ氏がラジオ番組で表現していました。実に本質を言い当てた表現ですね。

この空室保証あるいは最低賃料保証特約ですが、ずっとではなく一定期間だけとなっています。

「30年間一括借入れ」という言葉にオーナーは安心するのですが、実は業者側には「中途解約権」が認められているのです。契約書にも書いてあります

中途解約権は一定の予告期間をおいていつでも契約を解約できる権利で、企業として採算が合わなくなれば撤退できるようにしてあるのです。

契約書は字も小さいですし、契約書を隅々まで読まないでしょうからね。でも読まないほうが悪いのですがね…

サブリース契約の問題点~強引なセールストーク

セールストークが強引であることも指摘されています。

裁判ではオーナー側から「聞いた話(セールストーク)と契約書が違う」と訴えているようです。

契約書に書いてある「賃料を見直す」可能性については、契約書の表現を「増減」としていて、「減ることばかりを考えていますが増えることだってある」とか「今まで減額した経験がない」と表現していたようです。

またサブリース契約自体を拒んでいるオーナーには「空室になったらどうするんですか」と詰め寄っていたとのことです。

将来の修繕費に関しても、小さく表現し、場合によっては触れないでいることもあるようです。

サブリース契約の問題点~借地借家法との関連

借地借家法とは、 賃貸人に比べて立場も弱く、経済的にも不利がある借家人や借地人を保護するために、民法の規定を修正したり補った法律です。

サブリースで問題にあるのが「32条」で、これは経済環境が大きく変動し、あるいは物件の周辺環境が変わったことで賃料を見直すことができるというもので、家主の方から賃料を増減することができることが書かれています。

この「増減」という表現を、セールストークでうまく使っていることは紹介しました。

そもそもサブリースにおける定額保証で問題となるときは経済悪化による景気後退時で、最初にサブリースが社会で問題になったのがバブル崩壊時で、その次はリーマンショク後です。

バブル崩壊後のサブリース契約での悪質な例として、仲介業者が勝手に賃料を減額してオーナーに減額後の取り分を支払うというケースがあります。

このときの仲介業者の言い分は

・バブルが崩壊したから仕方がない
・予想できない出来事が起きた
・契約内容変更が妥当とされる重大な事態が起きた

でした。

しかし、これは正当化される理論ではないという判断がされています。

裁判所では、経済は波であり、乱高下するのは当たり前で、バブル崩壊が予想できないということに説得力はないというものです。

これはオーナー側も反省すべきことで、10年保証とか30年保証といっても、経済環境が変われば賃料が保証されることはありえないことは想像できたはずです。

サブリース契約は、平成4年、5年に契約されているものもたくさんあります。

もう既にバブルははじけている時期です。それでも家賃保証もしっかりと謳っているのです。

業者の方は、投資物件を建築して引き渡しただけで収益は十分に得られます。

まさに「売り逃げ」とも取れる行為ですが、オーナー側も経済状況を考えれば、将来にわたって定額支払が約束できるのかは疑えたはずではないでしょうか。

平成15年10月21日最高裁判所判決では、サブリース契約が賃貸借契約であることを明言していて、借地借家法が適用されるとしています。

よって自動増額特約があっても借地借家法32条1項が適用されるという結論を下しています

家賃は下げられるということになります。

業者側は、この判例を知っていながら自動増額特約をつけている、つまり自動増額特約は単なるえさで、いつでもはずすことができると思っていたなら悪意を感じざるを得ません。

バブル崩壊後は不良債権が社会問題となっていて、仲介業者が破綻したらオーナーも困るだろうということで、賃料減額を認めています。

ただし地価下落による固定資産額減額分と変動金利での銀行融資における金利低下分の範囲としました。

この範囲だと約1割ほどの減額となります。業者は4割の賃料減額を求めていました。そうでないと、空室による賃料減とオーナーへの定額支払分では逆ザヤになってしまうのです。

中途解約権を行使する業者が増えました。

サブリース契約から10年経過したものは、大きく家賃を下げる提案をして、それに応じなければ一方的に契約解消を迫っていたようです。

オーナーは、銀行への返済額を下回る賃料は認められない。そうなるとサブリース契約は解消される。

レオパレス21は、物件自体が施工不良で、部屋を借りている人は出て行くことになり、信用失墜で新しい入居者は見込めないでしょう。

結局残るのは銀行ローンだけということになります。

オーナーって誰?

オーナーって誰?

ここで「オーナー」という表現をしましたが、オーナーにも3通りあります。

・土地を持っているオーナー
・ワンルームマンションオーナー
・土地も建物もないオーナー

米国で始まったサブリースは、土地を持っているオーナー向けのものです。

繰り返しますが、米国では「使っていない」土地の有効活用目的のサブリースですが、日本では土地持ちオーナーに上物(アパート等の投資用物件)を建てさせるためにあるのがサブリースです。

土地がなくてもワンルームマンションを持っていたり、あるいは新規で購入してもらうオーナーもいます。

ワンルームマンションだと、購入と言ってもアパートを建てるよりも何とか手が届く金額になっているでしょう。

アパートを建てるよりも身近に考えやすいのかもしれません。この一種の値ごろ感も「曲者」と言えそうですけどね。

ワンルームマンションであっても立派な不動産オーナーですからね。でも、ワンルームマンションであってもサブリースのスキームは同じです。

問題とされるのは、土地を持っていない人に土地を購入させて上物を建てるオーナーです。サラリーパーソンに多く、十分な資産がなくても不動産投資ができるというスキームにサブリースが使われています。

「かぼちゃの馬車」問題では、この不動産投資を小口に分けて、少額で投資できるようにして、資産を持たない人に不動産オーナーになれる「夢」を与えたもので、前述しましたが、弁護士の中には「夢ある博打」と表現している方もいます。

小口と言えど不動産投資です。経済環境や投資環境によりスキームが崩れることを想定しないで、資産が持てる・殖えるというところに目を奪われた人(あえて投資素人と呼びますが)が多かったのでしょう。

あなたも不動産オーナーになれる。

サラリーパーソンの虚栄心をくすぐるのでしょうか。

サブリース問題が表に出てくるのは景気後退局面に多く、バブル崩壊後には多く見られましたが、最初のうちはサブリース契約者は土地持ちオーナーが多かったようです。

銀行融資も正常に手続が行われていました。

リーマンショック以降のサブリース問題での登場人物は、土地を持たないサラリーパーソンが多くなりました。

土地をローンで買い、アパート建設にもローンを組むとなれば、仲介業者、不動産会社、銀行がチームとなる必要があります。

この間に不正手続があったのが「かぼちゃの馬車」問題です。スルガ銀行の融資書類改ざんは記憶に新しいでしょう。

「サブリース問題は性質が悪くなっている。」

ある弁護士の方の言葉です。

銀行から融資を受けて投資を行う、このスキームで思い出すのは、保険会社によるバブル期の変額保険販売手法です。

バブル期では、土地と株が、持っているだけで利益を生んでいました。右肩上がりに上がる土地と株を横目に、保険会社は熟知たる思いでいたところに開発されたのが、特別勘定で保険料を株運用を行う変額保険です。

あろうことか、銀行から融資を受けさせて変額保険契約を勧める手口がとられ、銀行としても手数料がはいる、銀行・保険会社・契約者の「三方良し」の構図ができ上がったのですが、バブル崩壊で株価下落、変額保険評価額も下がり、変額保険を担保に銀行融資を受けていたので、追加の担保が求められ、結局はローンだけが残った契約者だけが損をする構図であったことは、後で気付かされました。

確か法人契約だと法人税の節税にも有効というセールストークがあったのではないでしょうか。

今回のケースと全く同じです。

銀行融資でアパートを建てて、家賃保証のえさに飛びつき、経済環境変化によりその契約も解約されローンだけが残るというパターン、まったく同じですね。

保険会社が不動産会社に変わっただけで、このスキームのパートナーが銀行であることは変わりません。

厳しい言い方ですが、常に損をするのは「欲に絡んだ無知な消費者」なのです。

相続税対策と年金不安が殺し文句

相続税対策と年金不安が殺し文句

「土地を持っているオーナーに向けては相続対策」
「土地を持たないサラリーパーソンに向けては年金不安による自助努力」

これが殺し文句となっています。

でもこれは不動産業界に限らず金融業界全般に言えることで、節税対策は弁護士や税理士も好んで使っている手法と言えます。

相続対策を謳ったサイトも多く見られ、更地のままよりもアパート等の投資用物件を建てたほうが、土地の相続税評価額は大きく下がるとしています。

ただ節税対策は、その効果はその時だけで、納税額を抑えることは魅力ですが、その後の投資という要素を考えると、長期安定を第一に考えるべきです。

節税目的で融資を受けることが、長期スパンで考えて得策なのかを熟考するべきです。節税効果は単年で、必ず副作用があることを忘れてはいけません。

自己資本で行うならともかく、融資を受けてまで行うべきことなのでしょうか。

年金不安から、給与以外の収入確保手段として不動産投資を行うのはわかりますが、年金代わりとなれば、やはり長期安定を求めたいところです。

世の中に長期安定が確約されている投資手法なんて存在しません。

投資だからこそ、収益を得たら撤退しやすい方法を選ぶべきで、そのためには、換金性が良い手法が求められます。

不動産投資には換金性、つまり現金化に難点があります。

投資は「生もの」で、経済環境で投資環境は変化するものです。

繰り返しますが、長期安定の投資手法は、絶対に存在しません。

イギリス貴族が用いる手法には長期安定手法があるとは聞きますが、私たちは手にすることができるのでしょうかね。

目先の利益(節税等)にとらわれず、リスクもしっかりと把握して、リターンとリスクを冷静に天秤にかけることが大事です。

目先のメリットばかりを大きく捉えないようにしたいものです。

立地は大事~駅近物件しかダメ

そもそも全ての土地の投資物件が、収益物件になることはありません。

やはり立地が重要で、一般的に相続税対策を必要とする人の土地は、駅から遠いところにあることが多いです。

「不動産はどれ一つおなじ価値のものはない」

法政大学大学院真壁昭夫教授はこう指摘しています。立地条件が全部違うので、価値が同じ不動産は存在しないとのことです。

立地条件が悪くてもオーナーの努力次第で収益を安定化させている物件もあります。人任せで何もしないオーナーの物件では、安定収益を得られるはずがないとも言えます。

国交省が毎年発表する公示地価が上がっているのは、外国人観光客によるもので、商業地区が上がっていると言われています。

これらの発表数字をもとに不動産投資の将来を計ってはいけません。

楽して儲けようという考えでは、絶対に投資では成功しません。

サブリース事業を規制する法律がない

賃貸住宅管理者登録制度というのがあります。

賃貸住宅管理業務に関して一定のルールを設けることで、借主と貸主の利益保護を図ることを目的としたもので、登録事業者を公表することにより、消費者は管理業者や物件選択の判断材料として活用することが可能となります。

ただ登録は任意であり、ずっとレオパレス21は登録していませんでした(現在は登録)。

国土交通省としても登録は任意なので、全ての業者の状況を把握できているわけではないとコメントしています。

宅地建物取引業法により、不動産取引に関しては厳しい規制を設け指導もされていますが、サブリース事業に関しては、特別な規制はなく、監督指導する法制度はありません。

いまだに国交省による仲介業者へは、監督指導が届かない状況にあると弁護士は指摘しています。

消費者を保護する制度の重要性は言われています。消費者庁もできました。

大家と店子の関係は、持つ者と持たざる者との間の力関係がはっきりとしているので、持たざる者である店子が守られる、いわゆる弱者救済措置が取られます。

では土地を持っているオーナーは消費者なのでしょうか。

これがサブリースにおけるオーナー保護をややこしくしています。オーナーは、土地の所有者ではありますからね。

でもある弁護士は、仲介業者は資金力から情報知識にいたるまで明らかに長けていて、オーナーとのビジネス関係であっても、力の差は歴然だと主張しています。

二度とこのような問題が起こらないように、国としても法整備を急ぐことを望みたいですね。

うまい話なんかない そんなにすんなりと信じるな

うまい話なんかない

性善説はもうやめよう。一つの土地には、それぞれ立場の違う人の思惑が幾重にも交差しています。土地の活用目的が、かかわる人の立場で全然違ってきます。

その土地から得る利益の取り方も違います。

土地を、お金を生む道具と見るのか、親からの引継ぎ物と見るのかでも違います。

「人任せ」

投資する以前の話ですね。

「難しいから、ややこしいから、面倒だから」

このような考えで投資を行えば、財産をなくしても仕方がありません。

「説明を受けたが良くわからなかった」
「契約書をきちんと読んでいない」

自己防衛意識の欠落以外のなにものでもありません。

「うまい話なんてない」
「そんなにすんなり信じちゃいけない」

前述の真壁教授は力説されています。

「儲かる・任せる(任せられる)・保証する」

そんなうまい話はありません。

投資リテラシーという言葉が登場して久しいですが、私たち消費者や投資家が、もっと賢くならなければならないという指摘はずっと訴えてきました。

とにかく、都合の良い解釈をしてはいけません。情報を冷静に判断し、くれぐれも自分都合にアレンジして解釈しないようにしましょう。(執筆者:原 彰宏)

《原 彰宏》
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原 彰宏

株式会社アイウイッシュ 代表取締役 関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP 寄稿者にメッセージを送る

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