「宇宙葬」ということばを聞いたことはありますか?
亡くなった人の遺骨を宇宙空間に打ち上げる供養方法で、散骨の一種に分類されます。
散骨とは、海や山や川などに粉末状にした遺骨をまく葬法ですが、遺骨はついに宇宙にまで還っていく時代が来たのです。
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宇宙葬には主に2つの方法があります。
ひとつはロケットに遺骨を搭載して打ち上げる方法。
もう1つは、バルーンの中に遺骨を納めて天高く飛ばし、成層圏で散骨にする方法です。
目次
宇宙葬のタイプと気になる費用
では、実際に宇宙葬にはどれくらいに費用がかかるのでしょうか?
銀河ステージ
国内で数少ないロケットによる宇宙葬を手がける「銀河ステージ」(東京都港区)では、4つのプランが用意されています。
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「宇宙飛行プラン」では、遺骨を納めたカプセルをロケットに搭載し、宇宙空間に打ち上げます(価格は45万円)。
「人工衛星プラン」では、遺骨を人工衛星に搭載して宇宙空間に打ち上げるため、宇宙空間に到着してから最長で240年間、軌道の上を周回します。
まるで、宇宙から私たちの住む地球を見守ってくれているようです(価格は95万円)。
その他にも遺骨を月面にまで運ぶ「月旅行プラン」や、深宇宙探査機に搭載して宇宙の果てを目指していつまでも飛び続ける「宇宙探検プラン」などもあり、ともに価格は250万円です。
バルーン工房
宇宙葬には、ロケットや人工衛星を用いて遺骨を宇宙空間に打ち上げる以外にも、風船を用いた宇宙葬もあります。
「バルーン工房」(栃木県宇都宮市)では、バルーン宇宙葬を日本全国で展開中です。
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遺灰(粉末化した遺骨)を風船の中に入れて宇宙に向けて飛ばします。
風船は約2時間後、成層圏付近で膨張し、一瞬のうちに散骨されます。
基本費用は24万円。その他、粉骨や動画撮影などのオプションサービスもあります。
お墓よりも安い宇宙葬の今後
お骨を宇宙に届けて散骨するだけであれば、銀河ステージの宇宙飛行プラン(45万円)や、バルーン工房のバルーン宇宙葬(24万円)で十分でしょう。
30万円前後で遺骨の供養ができるのであれば、お墓は納骨堂などよりもはるかに安くつきます。
宇宙葬は新たなタイプの供養法で、いまはまだ社会に認知されているとは言いがたい状況です。
また、日本人の死生観になじんで人々に受け入れられるかどうかどうかももまだまだこれからです。
しかし、ロケット技術が進化することでコストダウンが進み、人々の中でより宇宙が身近な場所に感じられるようになれば、いま以上に広く普及する可能性も秘めています。(執筆者:五十嵐 信博)