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「公的年金は破綻しない」が、負担が増えてもらえなくなる可能性はゼロではない。

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「公的年金は破綻しない」が、負担が増えてもらえなくなる可能性はゼロではない。

公的年金は、破綻するのか

公的年金は破綻するのか

金融庁が、「人生100年時代。年金では満足な生活水準に届かない可能性があり、老後は2,000万円不足するので、そのぶんを投資で確保するべきだ」という報告書を出し、大騒ぎとなりました。

いままで厚生労働省は、建前として

「年金は100年安心」

「公的年金は大丈夫」

などと言ってきただけに、この金融庁の報告書で、みんながうすうす感じていた年金への不安が、一気に吹き出したようです。

そんな中、「年金は、破綻するのではないか」、「一銭ももらえなくなるのではないか」という声も多く聞かれるようになりました。

以前から、「年金は、実質的には破綻している」と言われていますが、本当に破綻するのでしょうか?

結論からいえば、国が破綻しない限り、年金が破綻するというのは現実には起きないでしょう。

なぜ、国が破綻しない限り公的年金が破綻しないかといえば、年金をもらう権利をすでに持っている人が大量にいるからです。

国が破綻しない限り、年金は破綻しない

日本では、10年以上年金に加入している人には、年金の受給権(国から年金をもらう権利)が発生ます。

この受給権は、現在700兆円あると言われていて、もし年金が破綻したら、みんな一斉にこの受給権を縦にして国を相手取って訴訟を起こす可能性があります。

そうなると、国は負ける可能性があり、賠償金の支払いだけで一気に700兆円を超える債務を抱えることになり、それだけで国は財政破綻してしまうでしょう。

自分で国家破綻を引き起こすようなことを国がするとは考えられません。

まだまだ国家基盤が強い日本ですから、そういうことにはならないでしょう。

日本の年金は若者がお年寄りを支える相互扶助と言われています。

若者がお年寄りを支える相互扶助

けれど、実態は年金保険料だけではまかなうことができず、みなさんがもらっている基礎年金の中の半額は、税金から出ています。

現在、基礎年金は40年加入した場合には月に約6万5,000円もらえますが、この半分は税金なのです。

以前は、この税金の割合は3分の1だったのですが、2004年の法律改正で税金での負担分の引き上げきが決まり、2009年から2分の1になっています。

将来的に年金財政がさらに悪化していくと、この税金での負担分が、3分の2、4分の3と引き上げられていく可能性があります

逆にいえば、そうしていけば「破綻はしない」ということです。

破綻はしないが、負担が増えて、もらえなくなる

現在支給されている基礎年金の半分は税金で賄われていますが、ただ、無尽蔵に税金を投入するわけにはいきません。

そこで、税金投入の他にも、さまざまな破綻しない対策が取られています。

これまで取られてきた対策は、主に3つの方法。

第1の方法は、保険料を上げる

第2の方法は、給付額を減らす

第3の方法は、支給年齢を引き上げる

第1の方法「保険料を上げる」

厚生年金

2004年10月から2017年まで毎年0.354%ずつ引き上げられ、13.58%(本人ぶん6.79%)から18.3%(本人9.15%)に上がっています。

年収500万円の人なら、この間に年間約12万円の保険料負担増です。

国民年金保険料

2005年4月から2017年まで毎年280円ずつ値上げして、月1万3,300円の保険料が月1万6,900円へと上がり、年間4万3,200円の負担増となりました。

*経済状況によって数字は微妙に変わっています。

第2の方法「給付額を減らす」

この15年間で、2つの大きな減らすテクニックが取り入れられました。

「マクロ経済スライド」

それまでの年金は、物価が上がると、上がった物価にスライドして上がっていったので、インフレにも年金が対応できるようになっていました。

けれど、「マクロ経済スライド」という、物価が上がっても年金がそれほど上がらない仕組みができて、インフレには対応しにくくなりました

「年金カット法案」

賃金が下がったら年金も下がるというのが「年金カット法案」です。

これは、年金を賃金変動と物価変動の低い方に合わせるという仕組みです。

物価が上がっても、賃金が下がれば、下がった賃金に合わせて年金が支払われるというもので、これによって国民年金なら年間約4万円、厚生年金なら年間約14万2,000円減少すると言われています。

第3の方法「支給年齢を引き上げる」

ガンガン 上がる 支給年齢 支給年齢

1956年以前は、年金の支給年齢が男性55歳、女性55歳でした。

これが、1957年から男性だけ16年かけて4年に1歳ずつ支給年齢が引き上げられ、1973年には60歳支給となりました。

さらに1985年の改正で、男性が65歳支給、女性が60歳支給に引き上げられ、1994年の改正では、女性も65歳支給になりました。

会社員は、老齢基礎年金の上に報酬比例部分という上乗せ(特別支給の老齢厚生年金)がありますが、こちらも支給年齢を徐々に引き上げ、男性は2025年、女性は2030年には、完全に65歳支給となります。

年金の支給年齢は引き上げの最中ですが、すでに「70歳支給でどうか」という話が出始めています。

実は、ここに最近、第4の方法が出てきました。

これについては、皆さんの働き方にも関係してくるので、次回に説明しましょう。(執筆者:荻原 博子)

《荻原 博子》
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荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

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