2019年の8月12日、香港国際空港が航空当局によって同日の全ての便の運行を取りやめることを発表しました。
理由は香港の逃亡犯条例の改正案を巡る大規模な抗議活動デモです。
香港は日本からでもLCCで片道4~5時間で気軽に行ける観光でも人気の街です。
香港国際空港を利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
メディアやSNSには香港のデモ隊と警察との衝突の様子や生々しい写真もたくさん挙げられています。
一国二制度の特別行政区として世界の金融センターとして君臨してきた香港は自由だからこそ世界中のお金を集めてきました。
しかし香港は現在、歴史的な転換点にあるのかもしれません。
投資家としてアジアの金融センター香港の動向には注視するべきです。
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目次
香港を揺るがす2019年逃亡犯条例改正案
香港のデモのきっかけは「逃亡犯条例改正案」でした。
大切なポイントは2つです。
・ 中国大陸から要請を受けて資産凍結と差押えができる
このような改正案が出てきた背景は香港人の男性が台湾旅行中に香港人のガールフレンドを殺害して台湾警察から指名手配を受けたこと。
本来、台湾で起きた殺人事件は台湾当局で裁かれるべきですが現時点では香港から台湾に容疑者を引き渡せないのです。(アメリカやイギリスなど約20か国とは引き渡しはできる)
これでは中国本土、マカオ、台湾で犯罪をしても香港に逃げ込めば裁かれないということになってしまいます。
そこで犯罪者を引き渡せるようにという逃亡犯条例の改正案が浮上しましたが、逃亡犯条例が可決させると
・ 香港の資産を予告なしに中国政府に凍結されるのでは?
という懸念が高まり大きな反対デモが行われることになったのです。
そしてデモは過激化し警察との衝突も次第に激化し香港の政情は一気に不安定化しました。
香港が中国本土の地方都市の一つになりつつある
香港は2047年に一国二制度の期限が切れ中国本土と一体化する流れが進んでいます。
西九龍駅には北京にもつながる高速鉄道の駅ができました。
駅の中には香港と中国本土の国境ができました。
さらに香港・マカオ・深センが橋で結ばれ物流的に一体化が進んでいます。
香港は少しずつ中国本土の地方都市の一部のような立ち位置になっているのです。
香港でも言論の自由を大切にする市民からしてみれば不安に感じるのも無理はありません。
そこに「逃亡条例改正案」が浮上したことでデモも大規模なものになりました。
自由な香港のお金はシンガポールに流れる
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香港のデモ隊には過激な活動をしているものもいます。
一方で香港警察も治安維持にしては行き過ぎなのではという批判もあります。
ただ香港は歴史的な転換点を迎えているのは間違いないでしょう。
香港にお金が集まる理由は香港が自由の街だからです。
香港は海外からお金を呼びこむ政治的に自由で税制もビジネス投資に有利という理由で世界中からお金が集まっていました。
しかし政情不安や逃亡犯条例改正で資産を中国本土に抑えられるのではという懸念が広まればお金はリスク回避の観点から香港から逃げていくのが自然です。
資金の逃避先は日本ではなく同じ中華圏のシンガポールでしょう。
香港の大手銀行のHSBCやスタンダードチャータドも同じ中華圏のシンガポールに広く営業展開しています。
シンガポール自体が金融センターとして香港と同様アジアの金融ハブとして地位を確立しています。
富裕層が香港からシンガポールに資金を移しているという報道もあります。
日本人で香港にキャピタルフライトした人はどうするべき?
日本でも10年以上前から香港に銀行口座を開設するのがブームになりました。
借金で国家破産するかも?
と煽っていた影響もあるでしょう。
しかし日本のリスク回避で香港にお金を移動したら、今度は香港のカントリーリスクが顕著になりました。
かつては香港の金融機関ならではの外国株やファンドなどもありましたが、今では日本のネット証券や金融機関の海外投資のラインアップも充実しており、あえて香港で資産運用する理由も現地に住んでいたり海外在住だったりでもない限りはメリットは少ないでしょう。
もしも香港が不安ならシンガポールに資金を移すか(シンガポールの方が口座開設のハードルは高い)おとなしく日本にお金を戻した方が良いかもしれません。
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香港に資産のある人はそのままおいて置くべきかどうかを検討する時期でしょう
香港は逃亡犯条例の改正案をきっかけに政情不安になりました。
逃亡犯条例が可決されれば香港にいても中国政府に拘束されたり資産を凍結されたりする可能性も出てきます。
その嫌気もあり香港のマネーはシンガポールなどに流れつつあります。
香港に資産を移している人も一度、本当に香港に資産をおいて置くべきかどうかを検討する時期でしょう。
資産運用でも日本在住者なら香港から運用するメリットは現在ほとんどありません。
香港は世界の金融センターのひとつですから直接、関係のない投資家も注意深く香港の動向を見ておきましょう。(執筆者:田守 正彦)