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現物株・先物横断型損益通算の税制改正構想 仮想通貨も加わるか?

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現物株・先物横断型損益通算の税制改正構想 仮想通貨も加わるか?

現物株取引・先物取引の税制が分かれていて、両者をまたいで損益通算を行うことができない状況です。

しかし平成31年度自民党税制改正大綱の「第三 検討事項」には盛り込まれており、実際に実現しそうな気配もあります。

一方で仮想通貨にも現物株・先物取引のような20%の固定税率(申告分離課税)を望む声もあり、業界団体から税制改正要望が出ています。

総合取引所構想の実現を背景に

握手する人

日本取引所グループ(JPX)と東京商品取引所の経営統合により、現物株取引も先物取引も可能な総合取引所が2020年度にも実現の見込みです。

海外では、現物株取引と先物取引が同一の取引所で行えるほうが一般的でした。

2007年には日本でも総合取引所構想が閣議決定されていたのですが、10年以上を経てようやく実現にこぎつけました

損益通算不可で繰越控除も別々

現物株・投資信託取引と先物取引・FX取引は税制が別々で、損益通算ができません

FXの店頭取引に申告分離課税が適用されるようになったのは2012年であり、現物株取引に比べて優遇された時期も後でした。

現物株取引に関しては、2016年に上場株式等と非上場株式(一般株式)等のグループに分かれて損益通算できるように、税制が変更されました。

上場株式等のグループには公募型の債券取引も加わり、損失と利子・配当の損益通算も可能になりました。

2016年の改正は金融所得課税の大型改変とも言えましたが、上場株式と非上場株式のようにむしろ通算できなくなってしまったものもあり、横断型の損益通算には至りませんでした

現物株・先物は別々に繰越控除も計算され、両方の取引を行っている場合は別々の管理が必要です。


≪繰越損失計算は株式譲渡(左側)と先物取引(右側)で付表が異なる≫

一体化で税率はむしろ上昇の可能性も

ただ横断型の損益通算を認める代わりに、税率が20%→25%~30%に増税となる可能性もあります。

金融所得増税は2019年参院選でも一部の野党が公約にしていましたが、固定税率は高所得者(合計所得金額1億円超)の所得税負担率を低減させるというデータがあったからです。

野党の増税公約の土台は、財務省や政府税制調査会でなされていた議論であり、平成31年度税制改正で実現してもおかしくないものでした。

仮想通貨取引でも要望のある申告分離課税化

暗号資産(仮想通貨)取引は、総合課税の雑所得に該当することで、最高税率が55%(所得税+住民税)にも及ぶことが大きな不満の種になっていました。

そこで暗号資産に関わる複数の協会・連盟が、暗号資産でも申告分離課税の適用を求めるなど主に下記項目の税制改正要望を出しています。

1.申告分離課税の適用
2.3年間の繰越控除を認める
3.仮想通貨同士の交換を非課税にする
4.20万円以下少額決済非課税制度の創設

なお上記要望の前段階的な位置づけで、暗号資産取引が雑所得ではなく譲渡所得に該当するという立場の議員が税制改革に向けて動いていましたが、2019年参院選で改選を果たせませんでした。

上記のうち1・2については現物・先物取引にはすでに適用されている制度であり、税制の簡素化を考えると、暗号資産取引も現物・先物と一体化して損益通算・繰越控除の制度にしていくことも考えられます。

ただ店頭FXの申告分離課税化に数年では済まなかったことを考えると、暗号資産を金融商品と位置付ける金融商品取引法の改正があったとはいえ、暗号資産の税制改正は先が長いように思えます。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)

《石谷 彰彦》
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石谷 彰彦

石谷 彰彦

1977年生まれ。システム開発会社・税理士事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じFPの資格を取得。行政非常勤職員や個人投資家としての経験もあり、社会保障・確定申告・個人所得税関係を中心にライティングやソフト開発を行う。近年は個人の金融証券税制に重点的に取り組み、上場株式等課税方式有利選択ツールを公開。お得情報の誤解や無知でかえって損をする、そんな状況を変えていきたいと考えている。 <保有資格>AFP・2級FP技能士・日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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