金融相場が覆い隠す弱含みの実体経済

足元の米国株式市場は、ダウ工業株30種平均株価やS&P500種指数、ナスダック総合指数はそれぞれ過去最高値を更新しています。

これは、昨年まで利上げとバランスシートの縮小を進めてきたFRB(連邦準備理事会)が、7月、9月、10月と3会合連続で利下げに転じたことに起因していると考えられます。

実体経済自体は、良好な雇用環境が個人消費を増やし、減速気味の製造業を支えるという構図がここのところ続いています。

もっとも、雇用関連指標は引き続き堅調なものの、個人の購買動向を測る小売売上高指数が軟化してきており、個人消費がいつまで米国経済を牽引していけるかは疑問です。

実体経済がこのような状況にもかかわらず、主要株価指数が過去最高値を更新しているのは、今年に入りFRBが金融緩和姿勢へと転換したことによる金余りがもたらす金融相場が到来していると考えられるからです。

すなわち、実際の経済状況や企業の業績に関係なく株価は上昇している、すなわち金融相場が実態経済の悪さを覆い隠しているといえます。

その結果、

何らかのきっかけで株価が大きく調整する可能性は高まっているということを頭に置いておく

必要があるでしょう。

FRB(連邦準備理事会)の利下げが世界経済に及ぼす影響

低金利下で進む債務比率の上昇と信用リスク

FRBの利下げにより、比較的信用力の低い企業までもが、現在は低利で資金調達できる環境にあります。

これは、企業業績が減速している今、企業経営を支える効果を発揮するものの、本来は高金利で資金調達すべき企業ないし市場では資金調達が困難な企業まで、容易に資金を調達できる状況を作り出しているといえます。

言い換えれば、景気が悪化した際には、もともと業績が芳しくない(返済能力が高くない)企業は、すぐに返済に行き詰まり不良債権が増加してしまうということです。

従って、FRBの利下げは、そう遠くないであろう

景気悪化局面でデフォルトを起こす企業を増加させ、景気の谷をより深くしてしまうリスクをはらんでいる

と言えます。

景気後退・デフレ時に切れるカードが限られるFRB

FRBの直近の3会合連続利下げのうち、直近2回ないし少なくとも10月の利下げは不要であったと思われます。

FRBのパウエル議長は否定していますが、3回の利下げはトランプ大統領からの利下げ圧力が影響したと言わざるを得ません。

直近の9月のPCEデフレーターは、「総合」、「コア」ともにFRBが目指す2%には届いていないものの、食料・エネルギー除く「コア」の消費者物価指数は2.4%と2%を上回るところまで回復してきています。

このような状況で金融緩和をすればインフレを助長し、コントロールをより一層困難にする

可能性が高くなります。

また、このように利下げの必要がない状況下で利下げカードを使ったということは、今後実際に景気が後退し、デフレが進んだ際に切ることができる手持ちのカードを減らしたということであり、今後のFRBの金融政策の手足を縛ることとなったといえます。(執筆者:土井 良宣)