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本業の後にバイトをすると本当は「残業代」がもらえる ただし自己責任が大きい「兼業」のリスク

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本業の後にバイトをすると本当は「残業代」がもらえる ただし自己責任が大きい「兼業」のリスク

消費税が10%に増税されて1か月以上がたちました。

収入を増やすために本業の後にバイトをしたり、パートをかけ持ちしたりする「兼業」をする人も増えたのではないでしょうか。

ただ、2つ以上の職場で1日に合計8時間を超えて働いた場合、もらえるはずの残業代をもらえていないケースがほとんどです。

働き方改革関連法が2019年4月1日から順次施行されていますが、副業や兼業をしている人へのサポートが強化されたのかというと、実態は全く違います。

この記事では、兼業で残業代がもらえるというのはどういうことなのかをご説明し、副業や兼業をするときに覚悟しなければならない自己責任についても解説します。

自己責任が大きい兼業のリスク

バイト先では残業代がもらえる

たとえばA社で8時間働いた後にB社で3時間バイトをしたような場合、残業代との関係では両社での労働時間が通算されることになっています(労働基準法第38条1項)。

その結果、B社での3時間分は所定の時給の25%アップの割増賃金(残業代)をもらえるはずです。

午後10時以降の深夜まで及んだ場合は50%アップの割増賃金になります

この場合、A社とB社のどちらが残業代を負担すべきなのかという疑問が生じると思いますが、労働局の見解として「法定時間外に使用した事業主」が支払わなければならないということを発表しています。

したがって、この例ではB社が支払うべきです。

しかし、現状ではB社の立場にある雇い主が残業代を支払っている例はまずないでしょう。

B社に残業代を請求しようと考えている人もまずいないと思われます。

雇い主も労働者もこのような場合に残業代が発生することを知らない人が多いのも大きな原因ですが、仮に知っていたとしても非常に請求しづらいでしょう。

労働者にしてみれば、バイト先のB社に応募する時点で「残業代を請求させていただきます」とは言えないです。

そんなことを言えば採用してもらえないと思うのが普通の人で、雇い主にとっても、残業代を請求する人は雇いたくないでしょう。

もし残業代を支払わなければならないと思ったら、所定の時給を下げて募集をかけるはずです。

あとから残業代を請求するという裏技もある

残業代は給料日の翌日から 2年間請求できる

裏技としては、残業代については一切口にすることなくB社でしばらく働き、あとになって未払い残業代を請求するという方法もなくはありません。

残業代は給料日の翌日から2年の時効期間が過ぎるまでは請求できます

なお、残業代の時効期間については今後の民法改正によって最長5年にまで延長される見込みです。

この方法をおすすめするわけではありませんが、全国で多くの人がこの方法を実践すれば、B社の立場の雇い主が残業代を支払うのが当たり前の世の中が実現するかもしれません。

しかし、そうなるとB社の立場の雇い主は採用に慎重になったり、所定の時給を下げたりするでしょう。

労働者にとっていいことばかりではないので、何とも言えないところです。

働くのはいいけれど、自己責任を忘れずに

政府も副業や兼業を推進するのなら、B社の立場の雇い主が残業代を支払わなければならないことを広めてほしいものです。

実は、2つ以上の職場で1日に合計8時間を超えて働いた場合に残業代が発生することは、働き方改革とは無関係に大昔から労働基準法で決まっていたことなのです。

しかも、残業代以外にも手つかずの問題がたくさん残っており、深刻な問題としては、労災と失業保険の問題があります。

過労死しても労災はもらえない

長時間労働で過労死した場合、労災保険の補償を受けるためには1か月平均で80時間を超えて残業していたことが目安のひとつとされています。

しかし、この要件は1つの勤務先で満たしていなければなりません。

A社で1日1時間残業し、その後にB社で1日3時間バイトをした場合、出勤日数が月21日だとすると、

・ A社での残業時間は21時間

・ B社での労働時間(=残業時間)は63時間

2社分を合計すると84時間となり、過労死ラインと言われている80時間を超えてはいますが、1社あたりで80時間を超えていません

現状の労災の運用では認定を受けられないことになります。

過労死とまではいかなくても、労災事故に遭って仕事を休まなければならなくなった場合にも十分な休業補償が受けられない恐れがあります。

2社以上で働いている場合でも、休業補償の1日あたりの金額は労災事故に遭った職場の給与のみで算定されます

B社で業務上の事故に遭った場合は、B社の給与のみに基づいて算定される休業補償しか受けられないのです。

休業補償としてもらえるのは「休業補償給付」と「休業特別支給金」の2つ合計で平均賃金の80%です。

A社での平均賃金が30万円であっても、B社での平均賃金が5万円であれば、休業補償は5万円の80%にあたる4万円しかもらえません

これではしばらく仕事を休んでしまうと、たちまち生活に困ってしまう人も少なくないでしょう。

労災と失業保険の問題

仕事を辞めても失業保険はもらえない

雇用保険の失業給付も、2社以上で働いている場合でも1社のみで適用要件が判断されます。

失業給付の適用要件は、週に20時間以上雇用されていることです。

本業のA社でフルタイムで働いていれば通常は失業給付が受けられますが、それでも給付日額の算定基礎になるのはA社での給与のみです。

B社での給与は考慮されないので注意が必要です。

パートのかけ持ちで生計を立てている人なら失業給付を一切もらえないこともあります

3つのパートをかけ持ちして合計で週に40時間働いていたとしても、どこのパート先でも週20時間未満であれば失業給付をもらえません

このように、兼業している人の労災や失業保険については働き方改革によってもなにも改善されていないのが実情なのです。

兼業・副業が解禁されたとはいっても、「自己責任で働いてください」と言われているに過ぎません。

兼業するならわかっておこう

働き方改革によっても、実際にはもらえるはずの残業代が確実にもらえるようにはなっていませんし、労働者を保護する政策もあまり進んではいません

翻って考えてみると、労働時間を原則として「1日8時間、週40時間以内」に定めている労働基準法の規定は、事業者が守るべき義務というだけではなく、労働者自身も心身の健康を維持するために守るべきものなのかもしれません。

これを守っていたのでは生活が苦しかったり、貯蓄ができないという人も少なくないと思いますが、兼業するなら上記のような自己責任は覚悟しなければなりません。

働き方は多様化しているので、在宅ワークなど心身の負担の軽い働き方を考えてみてもいいかもしれません。(執筆者:川端 克成)

《川端 克成》
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川端 克成

約15年間弁護士をしていましたが、人の悩みは法律だけでは解決できないことに悩み続けて、辞めてしまいました。現在はフリーライターとして活躍中です。読んで役に立ち、元気が出るライティングをモットーに、法律問題に限らず幅広いジャンルで執筆しています。これまでの人生では、ずいぶん遠回りをしてきました。高校卒業後は工場などで働いて二部大学に入り、大学卒業後も工場で働いて司法試験の勉強をしました。弁護士を辞めた後も工場で働きながらライティングの修行を重ねました。そんな人生経験にも基づいて、優しい心を執筆を通じてお伝えするのが理想です。 寄稿者にメッセージを送る

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