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「リバースモーゲージは危険」は本当か? 3つのリスクと真実を、商品として扱う銀行員が話します。

ローン 住宅ローン
「リバースモーゲージは危険」は本当か? 3つのリスクと真実を、商品として扱う銀行員が話します。

リバースモーゲージ(Reverse mortgage)

リバースモーゲージとは

ウィキペディアでは次のように説明しています。

「リバースモーゲッジ(Reverse mortgage)とは、自宅を担保にした融資制度の一種。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保するための手段。」

引用:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)

サイトでも多く取上げられているリバースモーゲージ、情報は多くなっていますが認知度はまだ充分でないと思います。

それゆえに、ネットでリバースモーゲージを検索すると、

「リバースモーゲージ ヤバい」  
「リバースモーゲージとは?」 
「リバースモーゲージ 相続」

 
このようなキーワードがヒットします。

しかし「高齢者」と「借入」これらはだれもがいつかは直面し、避けては通れない問題であり、それに密接しているのがリバースモーゲージです。

そこで今回は、リバースモーゲージの基本事項から問題点、そしてリバースモーゲージは本当にやばいのかを、銀行員としての考えと、実例も紹介しながらお話ししたいと思います。

本文は情報を客観的に判断し、一部私見を交えた内容となっております。

リバースモーゲージ、リバースモーゲージに類する特定の銀行や融資商品等を肯定、否定するものではありません。

また、内容説明で参考にしたいくつかの銀行融資商品は、その名称を記載しません。

私の勤務する銀行でもリバースモーゲージを取り扱っております。その銀行員が書いた記事である点を念頭に置いて読み進めてください。

そしてリバースモーゲージを検討、選択するときは、銀行等金融機関にかならず確認してください。

リバースモーゲージをわかりやすく説明

リバースモーゲージは、高齢者が自宅を担保にお金を借りる融資商品の名称です。

もともとは公的年金だけで生活費が不足する高齢者に、地方自治体が自宅を担保に貸付けた公的融資がその始まりです。

現在は商品性を変え、銀行や信金など多くの金融機関で取り扱っています。

ローンの代表格と言えば住宅ローンですが、毎月返済していけば残高は当然少なくなっていきます。

ところがリバースモーゲージの場合、借入残高はゼロ円からスタートし、利用するたび増えていきます

残高が増えていくという、住宅ローンなど一般的なローンとは逆(リバース)の性格があり、自宅を担保(英語でモーゲージ)にする融資なのでリバースモーゲージと呼ばれています。

リバースモーゲージの基本的な内容

金融機関により内容は異なりますが、リバースモーゲージの基本的な商品内容は以下の通りです。

1. 担保評価:担保にする自宅を銀行が評価する(評価額は相場の5割くらい)

2. 担保設定:評価をもとにして自宅に根抵当権(担保)を設定する

3. 利用可能額:担保評価をもとに「利用可能額」を決める 根抵当権は利用可能額の120%(1.2倍)で設定する

4. 貸越極度額:利用可能額の50%程度の「貸越極度額」を決め、契約する

貸越極度額は1億円までが主流(極度額は担保価値に左右される)

5. 借入:貸越極度額の範囲内で借入、返済が自由にできる

6. 返済:貸越極度額の範囲内なら、原則元金も利息も支払い不要

借入残高と利息は貸越極度の中で蓄積され、極度を超過しない限りは支払が不要

逆に言えば、範囲内なら返済はないが、長く利用するほど利息は中でどんどん膨らんでいく

7. 借入金利:金利は変動金利で銀行独自に決める 〇〇金利にプラス▲▲%上乗せなど

例)住宅ローン基準金利2.35%+0.6%=適用金利2.95% など

8. 融資期間:債務者(借りている人)が死亡するまで

9. 死亡したとき:債務者が死亡してから6か月以内に下記の方法から選択する

・ 配偶者が借入を引き継ぐ(条件や審査あり)
・ 相続人(子供など)が自己資金で一括返済する
・ 相続人が担保の自宅を売却して借入を完済する(任意売却)
・ 銀行に担保を渡す→銀行は売却処分した代金で融資を回収する(代物弁済)

リバースモーゲージでいくらまで借入できるか

リバースモーゲージでいくらまで借入できるか

銀行は相場の5割程度で担保評価をし、その5割程度を「利用可能額」として担保設定し、さらにその5割程度の「貸越極度額」を決めます。

利用可能額とは担保評価で決まった理論上の上限額で、その5割程度の「貸越極度額」が実際に借入可能な金額となります。

(例)相場1億円の自宅

担保評価は5,000万円


利用可能額は2,500万円(担保は1.2倍の3000万円)



貸越極度額は1,250万円


このように、相場1億円の自宅を担保にして借入できるのは、8分の1の1,250万円です。

以上がリバースモーゲージの基本的内容です。

リバースモーゲージ「3つのリスク」

リバースモーゲージには3つのリスクがあると言われ、「リバースモーゲージはやばい」という論調の記事が見受けられます。

このリスクを銀行員が考えて出した異論(持論、私見)も合わせてお話しします。

1. 金利が上昇するリスク

リバースモーゲージは変動金利です。

将来金利が上昇すると利息負担が大きくなるリスクがあります。

現在は長引く低金利ですが、過去歴史を見れば景気不景気は交代、繰り返してきました。

いつになるかは予想できませんが、金利が上昇する局面ではリバースモーゲージの借入残高があることはリスクと言えるでしょう。

自論1. 金利が上昇するリスク

これはリバースモーゲージに限ったことではなく、変動金利のローンが等しく抱えるリスクです。

リバースモーゲージだけ、ことさら金利上昇リスクがあるという論調には賛同できません。

そもそも金利上昇はリスクだけではなく、例えばバブル期を思い起こしてください。

1980年の水準では都市銀行住宅ローン金利は年約8.7%、いっぽう預金金利は1,000万円以上の大口定期1~2年もので年8%(サイト記事出典を参考)です。

預金とローン金利の差(いわゆる利鞘)はわずかでしたが、もととなる単位のケタがちがうので、銀行も多分に漏れずとても儲かりました。

これは一般人にもいえることで8.7%という、今では信じられないローン金利ですが、

・ 預金金利も高く
・ バブルなので給料も高い
・ 忙しいので残業手当も多くもらえる

といったように、出て行くお金は多いが、入ってくるお金も多かったのでローンを払えていたのです。

金利上昇局面では、それなりに収入も増えると考えられるので、リスクばかりではないことをぜひ覚えておいてください。

2. 長生きしてしまうリスク

「してしまう」とは語弊があるかもしれませんが、これは文字通りの意味です。

リバースモーゲージには明確な融資期間がなく「債務者(借りている人)が死んだら終わり」という、他の融資にはない特殊な形態です。

融資利用があると、枠内で利息が膨らんでいく仕組みが、本人が長生きすることで借金する期間も伸びてしまいます

その意味では利息が嵩んでいくリスクもあると言えるでしょう。

自論2. 長生きしてしまうリスク

こちらはリバースモーゲージの性質上、確かにリスクがあると言えます。

もちろん借り入れするか、使わないで済ませるかは考えかた、状況も左右しますが、長生きするということはお金に困る可能性も長く抱えることだからです。

3. 担保評価が下落するリスク

これが1番のリスクだと、私は考えています。

リバースモーゲージでは原則、毎年担保評価額を見直します。

見直した結果担保評価額が増減すると、それに応じ

担保評価額減少


利用可能額減少



貸越極度額減少



利用できる額も減少


となります。

融資利用が少なければ良いのですが、極度ギリギリまで借りていた場合は問題です。

例えば貸越極度が500万円で借入450万円(+その利息)を利用中の人がいたとします。

担保評価額を見直したところ、下落してしまい貸越極度額も500万円から450万円に減ってしまう可能性があるのでケースでは、もう借入はできません。

そしておそらく翌月に利息が増えると貸越極度を超過してしまうので、その超過額を自分で返済しなくてはいけません

また上記のケースで貸越極度が500万円から400万円に減ってしまうと、超過する50万円と利息を速やかに払わないといけないことになります。

毎年見直しがあり借りているリバースモーゲージの極度額が減ってしまうことが、理論上は増えることもあり、これは実に恐ろしいことです。

自論3. 担保評価が下落するリスク

これは上記したとおりです。

3つの中でもっともリスクがあると考えています。

リバースモーゲージはやばいのか

リバースモーゲージがやばいという記事が増えている

上記した3つのリスクに代表されるように、リバースモーゲージはデメリットも多く抱えています。

高齢者に借金をさせる仕組みに問題がある、といった道義的な意見もあるでしょう。

こうした理由から、リバースモーゲージはやばい、リバースモーゲージは危険という論調の記事が増えているようです。

しかし、そうした記事の大半は「リバースモーゲージはやばいので、こちらをおすすめします」と別のサイトが貼り付いています。

それは「任意売却」、「リースバック」などです。

任意売却

自分が売主になり、不動産業者などに依頼して買主を探してもらい売却すること。

一般的な売買を銀行など金融機関では任意売却と呼びます。

「自分の納得できる価格で売れるか?」

「いつ売れるか?」

はわかりません。

また住宅ローンなど、すでに自宅が担保になっている場合はその借入を完済できる金額以上でないと、住宅ローンのある銀行は売却を許してくれません

仮にローンの金額と同じくらいで売れたとしたら、借金はなくなりますが住むところもなくなり、手元にお金は残りません

また高額で売却できたとしても、今度は税金を払わなくてはいけない場合があります。

子供たちに内緒で任意売却した場合、どこかで相手にはわかるでしょうから、いくら自分の家だと言ってもトラブルになる恐れがあります。

厳しい表現ですが、すべて常識であり、事実です。

リースバック

自宅を専門業者に売却してお金を受け取ったあと、こんどはその業者と賃貸契約を結び「元自宅」に住み続けるというものです。

リースバックの場合、死亡すれば契約も終了となりますが、元自宅であっても、今は賃貸なのでアパート住まいで死んだのと同じです。

奥さんが残された場合、再契約できなければ「元自宅」からも出て行かなくてはいけません

これら経緯を子供たちが知らなかったとしたら、奥さんの行く末が心配ですし、後々子供たちも困るでしょう。

結論:リバースモーゲージはやばいものではありません

介護施設の入居費や生活費など資金が必要なら、リバースモーゲージはもちろん選択肢のひとつです。

しかし、銀行が高齢者から利息を得るローン商品であることもまた事実です。

自宅を担保に借金するのがイヤなら、いっそのこと任意売却するか、リースバックも否定しません。

とはいっても、子供にのこす予定のない自宅がある高齢者は、任意売却やリースバックをあつかう業種から見れば優良な「見込み先」でしょう。

リバースモーゲージを取り扱っている銀行も立場は同じ

「商売になるので売却させたいのに、リバースモーゲージを組まれたら死ぬまで自宅は手放せなくなる」

こうした考えが記事の根底にあるとしたら、その内容は冷静に受け取る必要があると思います。

そして、あとに残る人たちのことを考えていただきたいです。

リバースモーゲージを選択する前に考える

リバースモーゲージを選択する前に考える

将来自分の相続人になるのは子供たちです。

疎遠、あるいは親子仲が悪く絶縁状態だとしても、自分が死んだあとに、彼らが相続人になることを忘れないでください

リバースモーゲージでは、自分が死んで代物弁済を選ぶとしても、それを選ぶのは子供たちで、代物弁済するまでにもいろいろな手続きをさせられます。

奥さんが借金を引き継げば問題は先送りになっても、奥さんが死んだときには同じように選択を迫られます。

リバースモーゲージではこうした死後のトラブルを防ぐため、契約するときは相続人全員を来店させ、リバースモーゲージを契約することを承知してもらい、また死亡後の手続きへの協力を約束してもらいます

確認書など署名捺印を求める銀行もあり、将来の相続人に確認が取れないと融資してもらえません

家をきっかけに家族で話し合う

リバースモーゲージを申込みたいと考えるなら、これをひとつのきっかけにしてはいかがでしょう?

どんなに仲が悪くても、一緒に銀行に行かないと話が進まないので、連絡をするでしょう。

そのときは、銀行へ行く前に話し合いの場を持つことを強くおすすめします。

もしかしたら、子供が一緒に重荷を背負ってくれるかもしれません…

そこまでできなくても、他に方法はないか考えてくれるかもしれません…

逆に会っては見たが溝が埋まらなかったり、もっと仲が悪くなったりしても、相応の意義はあると思います。

子供が一緒に銀行に行ってくれなければ、あるいはリバースモーゲージに承知してくれなければ契約はできません

そでれも黙って借金を作って死ぬよりはぜんぜん良いと思います。

まずは家族で話し合うことから始めてください。(執筆者:加藤 隆二)

《加藤 隆二》
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加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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