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会社員と年金受給者は2年か5年で公的年金、保険給付などが時効になる 請求できるものとできないもの

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会社員と年金受給者は2年か5年で公的年金、保険給付などが時効になる 請求できるものとできないもの

確定申告は自営業者やフリーランスなどが行う手続きのため、会社員や年金受給者にとっては、関係がない話と思っている方がいるかもしれません。

しかし例えば次のような所得控除により、所得税の還付を受ける場合には、会社員や年金受給者であっても、確定申告を行う必要があります

・ 医療費控除(支払った医療費が、一定額を超えた時)
・ 寄附金控除(一定の法人や団体などに、寄附金を支払った時)
・ 雑損控除(災害、盗難、横領などで、資産に損害を受けた時)

ただこのようなケースでは、2~3月頃の税務署が混雑している時期に、書類を提出したり、相談に行ったりする必要はありません

その理由として所得税の還付申告の期限は、医療費や寄附金を支払った年の、翌年の1月1日から5年になるからです。

これだけ期間が長いと、余裕を持って手続きができますが、5年を過ぎてしまうと、所得税の還付を受けられなくなるため、きちんと期限を守って手続きをする必要があります。

受給できなくなる場合もあります

公的年金は請求が遅れてしまうと、受給できない年金が発生する

公的年金の保険料を納付した期間や、免除を受けた期間などを合算した期間が、原則10年以上ある場合には、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの「老齢年金」が、原則65歳から支給されます。

その他に一定の障害状態になった時には、障害基礎年金や障害厚生年金などの「障害年金」が支給されるのです。

また公的年金の加入者などが死亡した時には、所定の遺族に対して、遺族基礎年金や遺族厚生年金などの「遺族年金」が支給されます

これらを受給する権利である「基本権」は、請求が遅れても消滅しない取り扱いになっているのですが、支払期月(偶数月)ごとに年金を受給する権利である「支分権」は、5年が経過すると時効により消滅します

要するに公的年金は原則として、請求した時点から過去5年分しか受給できないので、請求が遅れてしまうと、受給できない年金が発生するのです。

年金記録の誤りが訂正された場合には、5年より前の分も受給できる

老齢年金については通常であれば、日本年金機構などから請求に必要な書類が送られてくるので、これにきちんと目を通せば、請求忘れが起きにくいのです。

それに対して障害年金や遺族年金については、ぞれぞれの年金を受給できる権利が発生した方が、自分で書類を準備する必要があるので、老齢年金より請求忘れが起きやすいのです。

ですから請求忘れを防ぐため、障害年金や遺族年金もあることや、5年という時効があることを、頭の中に入れておいた方が良いと思います。

ただ年金記録の誤りが訂正され、年金額が増えた場合には、過去5年より前の分もさかのぼって受給できます

一方で国民年金から支給される「死亡一時金」は、年金よりも請求期限が短く、2年になっております。

公的医療保険などの保険給付は、2年を目安にして請求を済ませる

会社員であれば厚生年金保険以外に、労災保険、雇用保険、健康保険、介護保険(40歳以上)などに加入していると思います。

また年金受給者であれば、国民健康保険、後期高齢者医療(75歳以上)、介護保険などに加入していると思います。

これらの保険給付を受ける権利は、2年が経過すると時効によって消滅するため、この期間内に請求を済ませる必要があるのです。

ただ一部の例外があり、労災保険から支給される障害(補償)給付や、遺族(補償)給付は5年、二次健康診断等給付は3か月が期限になります。

各保険の本来の目的から離れた保険給付は、請求忘れが発生しやすい

請求忘れが発生しやすいので注意

病気やケガで診療を受けた時は、健康保険や国民健康保険から、所定の保険給付が支給されますが、出産した時や死亡した時にも、保険給付が支給されます。

また失業した時は雇用保険から、所定の保険給付が支給されますが、再就職した時や教育訓練を受けた時にも、保険給付が支給されるのです。

こういった本来の目的から離れた保険給付は、請求忘れが発生しやすいため、注意する必要があると思います。

それに加えて例えば健康保険の移送費は、緊急に移送された場合などに限られますが、労災保険の移送費は通院も含むというように、労災保険は健康保険より保険給付の範囲が広い点にも、注意する必要があると思います。

なお公的医療保険には二重加入できないため、例えば国民健康保険と健康保険の保険料を、どちらも支払った期間がある場合には、国民健康保険の保険料は請求により還付されるのです。

この還付請求の期限も2年になるため、住所地の市区町村などから手続きに必要な書類が届いたら、必ず目を通しておきましょう。

未払賃金の立替払制度を利用する場合にも、2年という期限がある

公的年金の請求期限は上記のように5年になりますが、未払いの給与の請求期限は2年になります。

ですから例えば2年以上前の残業手当などは、時効により請求できなくなってしまうのです。

このようなルールがあるため、現在や元の勤務先から支払われていない給与がある場合には、早めに行動した方が良いのです。

ただ元の勤務先と交渉したいと思っても、すでに倒産しているケースがあります。

こういった時には独立行政法人労働者健康安全機構が実施している、「未払賃金の立替払制度」の利用を検討してみるのです。

この制度を利用すると、退職した日の6か月前から、立替払を請求する日の前日までに、支払日が到来している定期賃金(基本給や各種の手当など)や退職手当のうち、未払になっているものの、8割くらいが立替払いされます。

ただ裁判所による破産手続開始の決定がなされた日や、労働基準監督署長による倒産認定日の翌日から2年という期限があるため、この期間内に手続きを済ませる必要があります

このように未払賃金の立替払制度を利用する場合でも、2年という期間が重要になってくるため、忘れずに覚えておきたいところです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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