2020年の株式相場は、中東紛争に端を発したジェットコースター相場で始まりましたね。
1月3日に米軍がイラン革命防衛隊司令官の殺害を実行し、7日にイラン軍がイラクにある米軍施設をミサイル攻撃しました。
日本では6日の大発会で株式相場は大きく下がり、7日は戻し、8日はまた下がり、9日は昨年末終値を超えて上がりました。
軍事衝突に対する危機感から株式相場が乱高下するのは当然ですが、中東という要所で起きたイベントでも結果的に相場が上昇基調を維持したのはなぜでしょう。
ここでは原油価格と株式相場の関係をひも解き、2020年前半の相場の波を考えてみたいと思います。
目次
夏までは「下がれば買い」の相場が継続
1月のジェットコースター相場を乗り越えれば、年末から続く上昇相場に回帰しました。
世界の株式相場で出遅れていた日本に、海外の投資マネーが流入している現状はいつまで続くのでしょうか。
2020年の相場の波、特に前半を日米のイベントを考えながら解説します。

イランの立場を理解したトランプ大統領の政治ショー
政治や宗教、軍事、経済など、どの点を見ても中東地域は世界の弾薬庫であることは間違いないでしょう。
その中東地域を舞台に「強い大統領」という印象を与えられればと、今年11月の大統領選挙での再選が近くなるとの目測で軍事作戦にゴーサインを出したのがトランプ大統領です。
その後のコメントから見ても、長期ビジョンに沿って中東地域の紛争を解決するために行った軍事作戦ではないようです。
あくまで政治ショーだったのです。
イランとしては軍事面での大黒柱を殺害されて全面的な軍事報復も選択肢にあったのでしょうが、そこは人的被害が出ないミサイル攻撃だけに留める冷静さがあって世界を震撼させた1週間は終了しました。
その後、民間航空機を誤射してしまったこともあり、いわゆる全面的な軍事衝突に向かう選択肢は消えました。
イランの軍事力は世界第14位と言われ、正規軍同士で戦った場合にはイランのサダム・フセインの二の舞になることが分かっていたため、自制したのでしょう。
しかし、もしこの民間航空機に「アメリカ人が搭乗していたら…」、「イスラエル人が搭乗していて死亡していたら…」、そのような一触即発の事故が起きてもおかしくなかったことを考えれば、トランプ大統領は政治ショーに勝ったことになります。

中東の原油が及ぼす影響力が低下
イランが位置するホルムズ海峡は、世界の原油供給の約2割が通行する要衝です。
その原油利権を求めて第2次世界大戦後も4回に渡る中東戦争が起きましたが、中東産の原油は現在では世界の約3割程度の存在感に縮小しています。
また、中東産の原油は主にアジア地域に輸出され、アメリカは自国産のシェールオイルを、欧州は北海油田を中心にしているため原油を中東産に頼っている先進国は少ないのが現状です。
昨年9月にサウジアラビアの原油施設が攻撃を受けて供給障害があった際には、WTI先物が1バレル50ドル台から63.38ドルまで急上昇しましたが、数週間で50ドル台に下落しました。
今回も65.65ドルまで急上昇しましたが、現在では50ドル台に戻っています。
一方、日本の原油の輸入依存度は99%です。
うち
しました。
もちろん原油価格が上昇すれば経済にも悪影響が出ますが、高値が続かない限り日本の株式相場への影響はないでしょう。
具体的に
ですので、今のところ心配なさそうです。
今年の相場は米国大統領選挙に左右される

この政治ショーに勝利したトランプ大統領の再選が、現時点では市場関係者のおおかたの予想です。
しかし、米国大統領選挙は2大政党制の相手となる民主党の候補者が誰になるかによって、11月までの間に株式相場へ大きな影響力を持ちます。
ましてやトランプ大統領への弾劾裁判が始まったこともあり、世論が急変することも可能性として考えておかなくてはなりません。
しかし、今回のイラン問題、北朝鮮の非核化交渉、中国との貿易交渉など、全ては再選のためにいつカードを切るか、トランプ大統領のツイッター砲が決めるのです。
このような相場環境を踏まえ、
2. 急落した際の買い時
を想定しておき、1年を通じての相場の波を捉えましょう。
1. メインシナリオ
2月:
1月からの米国株式最高値更新の勢いを維持、米国企業の決算発表に合わせ高値へ
3月:
3/3米国スーパーチューズデーを挟み、株価は頭打ちへ
4・5月:
日本企業の新年度資金が相場に入り、政府の経済対策が実行され株価再上昇
7月:
消費増税対策が6月末で終了、東京オリンピック後の景気低迷を視野に株価下落
※日米の主なイベント
2. 急落した際の買い時
3月:
大きな下落にならない可能性もあるが、その後の再上昇ありと見て下がったら買い
その他:
政治・経済イベントで急落した場合、底値のめどは日経平均で2万2,000円付近
夏までは下がれば買い
中東での火種が消えた訳ではありませんが、株式相場に影響を及ぼす懸念はなくなりました。
今は景気後退に向かう中で、金融政策による株価上昇という弱気の相場観に沿ったシナリオがメインシナリオだと考えておくべきでしょう。
とにかく今年は、前半勝負の年だと思って「夏までは下がれば買い」をおすすめします。(執筆者:中野 徹)