さまざまな理由から、転職先を決めないまま、会社を辞める(離職する)人も多いでしょう。
そのような時に頼りになるのが、雇用保険のいわゆる失業手当です。
失業手当をもらうまでには、離職の理由がなんであれ、7日間の待機期間があります。
自己都合で離職した「一般の受給資格者」の場合、さらに3か月の給付制限期間があり、失業手当の受給を待たなくてはいけません。
自己都合での離職でなければ、3か月待つ必要はありません。
離職理由によっては、「特定受給資格者」、「特定理由離職者」に該当しますので、給付制限なしに失業手当をもらえます。
どういう離職理由であれば、特定受給資格者・特定理由離職者になるのでしょうか。

目次
特定受給資格者に該当する人とは
特定受給資格者とは、例をあげると、次のような理由で離職した人です。
「倒産」など
・ 会社の倒産
・ 事業所で大量雇用変動(1か月で30人以上が離職予定)の届出がされた、または、雇用保険の被保険者の3分の1を超える人が離職したため
・ 事業所の廃止
・ 事業所の移転で、通勤が難しくなったため
「解雇」など
・ 解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由があって解雇された場合はのぞきます)
・ 労働の実態が、明示されていた労働条件と大きく異なったため
・ 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われない月が、2か月以上続いたため
・ 賃金が85パーセント未満に低下した、または低下することとなったため(低下を予見できなかった場合にかぎります)
特定理由離職者に該当する人とは
特定理由離職者とは、例をあげると、次のような理由で離職した人です。
有期労働契約が更新されなかったため
労働者が更新を希望したにもかかわらず、更新されなかった場合にかぎります。
以下の正当な理由のある自己都合
・ 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷など
・ 妊娠、出産、育児など(受給期間の延長措置を受けた人にかぎります)
・ 配偶者や扶養すべき親族との別居を続けることが難しくなったため
・ 結婚に伴う転居で、通勤が不可能に、または難しくなったため
特定受給資格者・特定理由離職者のメリット
一般の受給資格者と、特定受給資格者・特定理由離職者では、失業手当の給付に関する定めが異なります。
単純に言ってしまえば、特定受給資格者・特定理由離職者の方が手厚いです。
失業手当をもらえる条件
一般の受給資格者は、離職日以前の2年間に12か月以上、雇用保険に加入していた期間(被保険者期間)が必要です。
特定受給資格者・特定理由離職者は、離職日以前の1年間に6か月以上の被保険者期間があれば、失業手当をもらえます。
失業手当をもらえる日数
失業手当をもらえる日数(所定給付日数)は、離職理由、年齢、被保険者期間によって決まります。
年齢と被保険者期間によっては、特定受給資格者・一部の特定理由離職者は、一般の受給資格者よりも、所定給付日数が多くなります。
失業手当の給付を3か月待たなくていい
一般の受給資格者には、7日間の待機期間に加えて、3か月の給付制限期間があります。
特定受給資格者・特定理由離職者なら、この給付制限がありません。
7日間の待機だけで、失業手当をもらえるようになります。
退職届には本当の理由を書きましょう

「最後の最後に、会社ともめるのも…」と、退職届に本当の理由を書くことをためらう人もいます。
「事業所の廃止」のせいで離職するにもかかわらず、退職届には「一身上の都合」と記入するなどですが、そんな遠慮や気遣いは、無用ですし無意味です。
ハローワークで失業手当を申請するためには、離職票を提出し、離職票には離職理由を記入する欄があります。
多くの場合、会社で離職票を作成する担当者は離職理由を「社員本人が書いた退職届」をもとに記入します。
ですから、退職届にきちんと本当の理由を書いておかないと、たとえ特定受給資格者・特定理由離職者に該当する人であっても、一般の受給資格者として扱われることになってしまいます。
失業手当をもらう上で、離職理由はとても重要なポイントです。
離職理由を偽り、特定受給資格者や特定理由離職者になりすまして失業手当をもらうことは、もちろんいけませんが、もらえる失業手当をもらうことは、雇用保険に加入していた人の正当な権利です。
何も恥ずかしいことではありませんし、不当な行為でもありません。
堂々と受給して、失業中の暮らしに役立ててください。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)