米国大統領選挙の前半最大のイベントが、3月2日のスーパーチューズデーです。
トランプ現大統領(共和党)の対抗馬を決める民主党の候補者選挙は、バイデン候補(オバマ政権時の副大統領)の躍進があり混戦状況がさらに高まりました。
今年最大の政治イベントであるのがこの大統領選挙ですが、大統領選にはさまざまなジンクスがあり、中でも景気の実態が大きく左右されることが知られています。
では、今年は、現職が再選するほどなの景気なのでしょうか。
その時、株価はV字回復しているのでしょうか。
選挙年の過去データを振り返り、株式相場の波を予想します。

目次
米国大統領選挙は「再選」がメインシナリオ、その時株価は
現職のトランプ大統領が選挙を戦った2016年は、何かと大波乱が起きた年でした。
その年の6月にはイギリスが国民投票でEU離脱を決定、11月にヒラリー・クリントンを負かして不動産王トランプ氏が大統領に当選したのです。
今回はトランプ大統領の再選がおおかたの見方で、NY株式相場は今年に入って史上最高値をつけました。
株式相場が1番敏感に反応するのが、政治イベントです。
ここでは景気と株式相場をポイントに、再選の可能性や上昇トレンドを維持する株式相場の水準を検証したいと思います。
米国大統領選挙は現職が有利
過去50年間で再選が叶わなかった米国大統領が何人いるか、皆さんはご存じでしょうか。
実は、たったの3人なのです。
1976年のフォード、1980年のカーター、1992年のH.W.ブッシュ(息子)なのですが、この3人には1期目の4年間で景気を上げられなかったという共通点があります。
もちろん経済面だけで選挙に負けたということではないものの、経済指数で表すインフレ率と失業率の両方ともが高いことが敗因だったと言われています。
1976年(フォード)、1980年(カーター)の年は、インフレ率と失業率を足すと合計20%を超えており、過去50年間ではこの2回だけでした。
また、H.W.ブッシュの再選時にはインフレ率と失業率が合計で10%超と比較的高かった訳ではなかったのですが、その前年に始まった湾岸戦争が泥沼になり、その後景気後退に陥ることとなりました。
では、今年の状況はどうでしょうか。
インフレ率は2%未満が続き、デフレが常態化しています。
また、失業率は直近1年間は4%未満で、史上最低水準を継続している好景気です。
トランプ大統領は何かと異端児であることは確かですが、こと経済面では再選できないはずがない水準を維持してきたと言えます。
米国大統領選挙の年の景況感を振り返る
近年はインフレ率が低位安定し、景況感を計る指数が変わってきました。
いま最も注目されているのは、景気に先行する「ISM製造業景況指数(以下、ISM指数)」でしょう。
製造業(350社以上)の購買・供給管理責任者を対象に、各企業の受注や生産、価格など10項目についてアンケート調査し、「改善・同じ・悪化」の3択から選んだ結果を指数としているものです。
ISM指数は50を超えると景気拡大、50を切ると景気後退を表します。
トランプ大統領が就任してからずっと50を上回っていましたが、昨年8月に50を割り込み、その後50前後を行き来しています。
しかし、米国大統領選挙の年を振り返ると、
があるのです。

これを見ると、今後ISM指数が低下しても、それは過去にもあった事象と同じで、夏頃に底を打ち、年内には回復する傾向が見られると言えます。
新型肺炎の影響が出てISM指数が50を切っても、再選できないほどの景気後退に陥る危険性はないようです。
株式相場の波を知る
現在進行中の新型肺炎による株式相場の下落、ISM指数の前半低下傾向を考慮すると、
と思われます。
具体的には、新型肺炎の感染者数が世界的に低下をはじめることがポイントとなり、その後WHOから終息宣言が出されて、東京オリンピックが無事に開催できることをメインシナリオと考えます。
よって、
と考えられます。
一方、最悪のシナリオは、
です。
こうなると世界経済が混乱し、トランプ大統領の再選も危ぶまれ、株式相場の乱高下が予想されます。
今は
と、投資タイミングを逃さないと思います。

ここ数年のトレンド維持+新型肺炎終息でV字回復の期待大
新型肺炎は新型だけに未知の部分が多く、終息までには時間を要します。
各国が金融刺激策を発動しており、日本も大型経済対策を含む予算案が国会を通過しました。
米民主党の候補者選びでは、中道派のバイデン候補が躍進したことで安心感が広がり、3月4日にはNYダウが1,100ドル超の値上がりとなりました。
中長期の投資スタンスを考えると、ここ数年の上昇トレンドが維持されていれば、新型肺炎の悪影響が取り除かれた際に「もとの軌道に戻る=V字回復」の期待大ですね。(執筆者:中野 徹)