養育費の支払い請求権にも消滅時効があります。

ご存じの方でも、何年で時効消滅するのかを正確に理解している方は多くないかもしれません。

さらに、2020年4月1日から施行される改正民法では、一般的に消滅時効期間が短くなります

最近は主要な法律の改正がめじろ押しで付いていくのも大変ですが、今回の法改正によって養育費の消滅時効期間も短縮されてしまうのでしょうか。

この機会に、養育費の支払い請求権の消滅時効について正しく理解しておきましょう。

養育費の「消滅時効」

現行法上の養育費の時効は原則として5年

現行法における養育費の消滅時効期間を確認しておきましょう。

養育費は通常、「毎月〇万円を支払う」という形で取り決められます。

このようなスパンで定期的に支払うことを取り決めた債権の消滅時効は、民法第169条により5年です。

(定期給付債権の短期消滅時効)
第百六十九条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。e-Gov

ただ、「養育費の消滅時効は一律5年」と理解するのは正しくありません

養育費の取り決め方によって時効期間は異なる

養育費を取り決めるには、離婚協議書を交わしたり、公正証書を作成したり、裁判手続きで決めるなどの方法があります。

それぞれの方法による養育費の消滅時効期間は、以下のとおりです。

・ 離婚協議書や公正証書で取り決めた場合 → 5年

・ 訴訟や調停、審判で定められた場合 → 10年

原則は5年ですが、裁判手続きで確定した債権の消滅時効期間は民法第174条の2第1項によって10年となります。

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百七十四条の二 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。e-Gov

注意が必要なのは、公正証書を作成した場合は「5年」ということです。

公正証書は強制執行が可能という意味では確定判決と同じ効力がありますが、時効期間との関係では裁判手続きを経ていない債権と同じ扱いになります

2020年4月の民法改正で養育費の時効期間は変わるのか

4月の民法改正で養育費の時効期間は変わる

2020年4月1日から施行される改正民法で消滅時効期間がどう変わるのかというと、原則として10年だったものが5年に短縮されるのです。

現行法では「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」とされているものが、改正法では「債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき」に時効消滅するとされます。

その上で、さまざまな短期消滅時効の制度が廃止されます。

例えば、医師の診療報酬債権は3年、生産者や小売商人の売掛代金債権は2年、月またはそれより短い期間で定めた使用人の給料債権は1年などと細かく定められていますが、それらが全て廃止され、5年の消滅時効期間に統一されます。

養育費の時効期間に変更はなし

改正民法によって養育費の消滅時効期間がどう変わるのかという、変更はありません。

離婚協議書や公正証書で取り決められた養育費の消滅時効期間はもともと5年なので、法改正による影響はないのです。

ただ、時効期間というと単純に10年だと思っていた方もいらっしゃるかもしれません。

養育費の消滅時効期間は裁判手続きを経て確定したものでない限りは「5年」なので、ご注意ください。

支払い能力の問題に直面するので早めの対処が必要

離婚相手が養育費を滞納しても、離婚協議書または公正証書による場合は5年、裁判手続きをへて確定している場合は10年までは支払いを請求できます。

しかし、未払い分がたまると相手が全額を支払えるかという支払い能力の問題に直面することになります。

養育費を滞納された場合は、2020年4月1日から施行される改正民事執行法で強化される強制執行手続きをとれます。

早めに対処することが、少しでも多くの養育費を確保するコツです。(執筆者:川端 克成)