2020年3月18日より、「モバイルPASMO」がスタートしました。
首都圏の私鉄を通勤・通学の足として利用している人にとっては、待望のサービスかもしれません。
新規発行手続きも比較的簡単なモバイルPASMOですが、本当に使うべきなのでしょうか?
今回はモバイルSuicaとの比較を交えつつ、モバイルPASMOの特徴を解説しましょう。
目次
スマホから定期券を購入できる

モバイルPASMOなら、時と場所を問わずスマホから通勤・通学の定期券を購入できます。
JRを含まない路線の定期券もスマホから購入できる
JR東日本の「モバイルSuica」でも、エリア内の私鉄の定期券は購入できますが、JR東日本の路線を含まない定期券を購入できません。
そのため、私鉄だけの定期券を購入する人は、どうしてもカードタイプのPASMOが不可欠でした。
しかし、モバイルPASMOならばJRを含まない路線の定期券も購入可能で、主な首都圏の私鉄だけでなくバスの定期券も購入可能です。
また、これまでカードタイプPASMO定期券の購入には窓口に並ぶ必要がありましたが、これからは窓口に並ぶ必要もありません。
通学定期券の新規申込方法は多少面倒
モバイルPASMOの通学定期券を新規に申し込むのも窓口へ行く必要はありませんが、多少手続きが面倒です。
1. モバイルPASMOをインストール、会員登録
2. 専用申込フォームで申し込む
3. 専用申込書と通学証明書モバイルPASMO サポートセンターへ郵送
4. モバイルPASMOサポートセンターで内容を確認
5. モバイルPASMOアプリから通学定期券を購入できる
定期券利用開始日の14日前から申し込めますので、早めに申し込むといいでしょう。
通学定期券は大学・専門学校生相当のみ
ただし、モバイルPASMOで購入できる通学定期券は「大学・専門学校生相当のみ」(4月1日現在で満18歳以上)で、高校生以下の学生がモバイルPASMOの通学定期券を購入できません。
これはモバイルSuicaでも同じなのですが、それはモバイルPASMOで定期券を購入するには、本人名義のクレジットカード情報を登録する必要があるからです。
高校生はクレジットカードを持つことができませんので、これは仕方ないですね。
PASMOカード定期券の情報をモバイルPASMOに移行することはできない
すでにカードタイプのPASMO定期券を購入した方は、「せっかくだからモバイルPASMOに定期券情報を移行したい」と思うでしょう。
しかし、カードタイプのPASMO定期券情報をモバイルPASMOに移行させられず、モバイルPASMOの定期券情報をPASMOカードやSuicaカードに移行もできません。
一方のモバイルSuicaは、モバイルSuicaの新規登録時の1回に限られるものの、カードタイプのSuica定期券をモバイルSuicaに移行できます。
バス利用者にはメリットが多い
モバイルPASMOは、鉄道利用者よりバス利用者にメリットが多いかもしれません。
バスの定期券も営業所に行かず購入できる
バスにおけるモバイルPASMOとモバイルSuicaの最大の違い、それはバス定期券の購入場所です。
モバイルSuicaもバス定期券の情報は記録できますが、定期券はバス会社の営業所・支所・定期券の発売所でしか購入できず、営業所の場所が遠かったり営業時間が短かったりすると、なかなか買えません。
一方のモバイルPASMOは、バス会社に足を運ばなくてもスマホからバスの定期券を購入できるので、非常に便利です。
「バス特」の状況を確認できる

首都圏の主なバス会社・都電荒川線・東急世田谷線では「バス特」というサービスを実施しています。
PASMO・Suicaの電子マネー分(定期券での乗車は対象外)を利用してバスに乗車すると、1円につき1ポイントの「バスポイント」が付くサービスです。
毎月1日~末日に獲得したバスポイントが1,000ポイント貯まるごとに、100円~330円の「バス特チケット」(有効期間10年)がもらえ、次回のバス利用時に自動的に運賃から割引されるサービスです(翌月になるとバスポイントはリセットされる)。

モバイルSuicaでも利用できますが、バスポイントやバス特チケットの情報を確認ができず、「いつの間にか貯まっていつの間にか引かれている」といった感じです。
モバイルPASMOは、バスポイントのポイント数やバス特チケットなどの情報をスマホから確認でき、能動的にバス特を利用できます。
クレジットカードでチャージができる
モバイルPASMOは、スマホを使ってクレジットカードによるチャージも可能です。

これまで、カードタイプPASMOにクレジットチャージするには、PASMOオートチャージサービスに対応したクレジットカードを使って、
・ オートチャージ
・ クイックチャージ(東急線の銀色の券売機のみ利用可能)
をするしかありませんでした。
自分の好きな金額をクレジットチャージするには、東急線の銀色の券売機に足を運ぶ必要があり、東急線を利用していない方にとっては、非常に面倒ですね。
しかし、モバイルPASMOならばオートチャージやクイックチャージだけでなく、スマホからいつでもどこでもクレジットチャージが可能なのです。
会員登録&カード登録で使えるサービスが広がる
モバイルPASMOは会員登録やクレジットカード登録をしなくても利用できますが、登録をしておくと以下のように使えるサービスが広がります。

会員登録の際は、
・氏名(漢字・カナ)
・生年月日
・性別
・郵便番号
・端末電話番号
・メールアドレス
・ログインパスワード
の登録が必須となり、自宅電話番号・クレジットカード情報の登録は任意です。
モバイルSuicaは会員登録が必須なので、「チャージは現金でいいし定期券も使わないから登録はしたくない」という方は、会員登録しなくても使えるモバイルPASMOでいいでしょう。
会員登録とクレジットカード登録をしておくと、使えるサービスが大幅に広がりますので、登録しない手はありません。
登録可能なクレジットカード
モバイルPASMOにチャージ可能なクレジットカードは、
・VISA
・Mastercard
・JCB
・アメリカン・エキスプレス
が搭載されたカードで、ダイナースではクレジットチャージができません。
登録(2枚まで可能)の際には3Dセキュア(本人認証サービス)の登録が必要なため、3Dセキュアに未対応のカード、海外発行のカードも利用できません。
定期券購入時のクレジットカードは、バス会社・鉄道会社によって個別の制限を行う場合があります。
そして、チャージが可能だとしても、クレジットチャージでポイント還元があるかどうかは、カード会社に確認してください。
オートチャージの際は対応クレカを設定する必要あり

モバイルPASMOでもオートチャージを利用可能ですが、利用の際は登録カードとは別に、PASMOオートチャージサービスに対応したクレジットカードを設定しなければなりません。
主な首都圏の私鉄で発行されているカード(『TOKYU CARD ClubQ JMB PASMO』など)がオートチャージサービスに対応していますので、事前に用意しておくといいでしょう。
リスクを減らせる
平日の通勤・通学で使うカード型PASMOを定期入れに入れておく人は、休日にその定期入れを忘れてしまうことがあります。
特に、通学用のバッグなどに定期入れを付けている大学生などは、その可能性が高いかもしれません。
しかし、スマホを平日用・休日用で使い分けている人はいないでしょうから、休日でもモバイルPASMOを忘れることはありません。
万が一、端末の故障・紛失などで再発行したい場合も、モバイルPASMOならば窓口などに行かなくても再発行が可能、再発行手数料もかかりません。
モバイルPASMO再発行の方法

モバイルPASMOの利用停止手続きには「再発行」と「退会」の2通りがあり、再発行は会員メニューから以下の流れで行います(駅・営業所での手続きは不可)。
1. モバイルPASMO会員メニューにログイン(PC・スマホ)
2. 「会員メニュー」→「再発行登録」と進む
3. 内容を確認し「次へ」→「再発行登録する」と進む
4. 新たな端末からおサイフケータイアプリを起動
5. 「マイサービス」→「モバイルPASMO」→「受け取る」と進む
6. 内容を確認して受取後、モバイルPASMOアプリを起動
モバイルPASMOに定期券が含まれている場合は、以下の手続きも引き続き行ってください。
7. 「定期券購入・PASMO管理」をタップ
8. 「SF移行」→「実行する」と進む
9. 登録クレジットカードを再設定する(クレカ情報は削除されているため)
モバイルPASMOとPASMOカードとの比較
モバイルPASMOとPASMOカードを比較した際、
・ スマホからチャージ
・ スマホからPASMO定期券を購入
・ スマホでオートチャージの申込・設定変更
・ スマホで残高・履歴の確認
・ スマホでバス特の情報確認
はモバイルPASMOのみできることですが、
・ 一部の自動券売機で現金チャージ
・ Suicaグリーン券売機でのグリーン券購入
・ エクスプレス予約のEX-ICカードと重ねての新幹線乗換改札機通過 (スマートEXを除く)
はモバイルPASMOではできず、PASMOカードでのみ利用可能です。
電源が入らないとモバイルPASMOは利用できない
カードタイプとの大きな違いとして、スマホの電池残量が完全に消耗された状態になっていたり、電源をオフにした状態ではモバイルPASMOを利用できません。
予備電力がある状態で乗車中に電池切れになりそうなときには、1度電源をオフにしてから改札通過時に再度オンにすれば、改札を通過できます。
どうしても電池が回復しない場合は、現金精算してください(前払い式のバスは乗車中に電源がなくなっても問題なし)。
対応端末はAndroidのみ
モバイルPASMOを利用するには、
・ 購入時にAndroid6.0以上がインストールされている
・ 最新版のおサイフケータイアプリがインストールされている
という条件を満たしたAndroidスマートフォンが必要ですので、対応機種をモバイルPASMOの公式サイトで確認してください。
・ iPhone、Apple WatchなどのApple社製端末
・ Androidのバージョンが古いスマホ
・ おサイフケータイ(FeliCa)が搭載されていないスマホ
・ ガラケー
はモバイルPASMOを利用できません。
SuicaがAndroidスマホ・iPhone・ガラケーに対応しているのと比較すると、利用できる人は限られます。
1台の端末でのモバイルSuicaとの併用について

すでにモバイルSuicaをインストールしてあるスマホにモバイルPASMOをインストールすると、改札通過時にどちらが優先されるのか、気になるところです。
これについては、おサイフケータイアプリを「v8.2.1」にアップデートすることで、併用が可能です。

アップデート後のおサイフケータイアプリの画面から「マイサービス」へ進むと、「メインカードを切り替える」という表示が出るようになり、これによってモバイルPASMO⇔モバイルSuicaの切り替えが可能になります。
ただし、スマホによって
・ モバイルPASMOとモバイルSuica、それぞれ1枚ずつ発行可能
・ モバイルPASMOとモバイルSuica、いずれか1枚のみ発行可能
・ モバイルSuicaのみ発行可能(モバイルPASMOは対象外)
とタイプが分かれますので、こちらもモバイルPASMOの公式サイトで確認してください。
バス利用者はモバイルSuicaとの併用もあり!

サービスが開始されたモバイルPASMOを使えば、これまでモバイルSuicaで乗車できなかった
・ 私鉄のみの定期券利用者
・ バスのみの定期券利用者
・ 私鉄+バスのみの定期券利用者
もスマホだけで乗車でき、任意でのクレジットチャージもスマホからできます。
モバイルSuicaとの切り替えも同じスマホ内で可能のようなので、モバイルSuicaとの二刀流でも悪くありません。
しかし、バス利用が多い方はモバイルPASMOの方が利便性は高いと思います。(執筆者:角野 達仁)