終了となる2つの「年金担保貸付」とは

年金担保貸付の申込期間は「2022月3月末」まで 制度の終了理由や代わりの制度について解説

・ 国民年金や厚生年金保険などの公的年金から支給される各種の年金

・ 労災保険から支給される各種の年金を受ける権利

については、譲り渡し、担保に供し、または差し押さえることができません

そのため、これらの権利を担保にして、金融機関などからお金を借りられません

ただ、独立行政法人福祉医療機構(以下では「WAM」で記述)では、これらの権利を担保にして、お金を借りることができるという特例的な制度があります

年金担保貸付

そのひとつは、公的年金から支給される各種の年金を対象にした、「年金担保貸付」になります。

この制度を利用する際に担保にできるのは、原則65歳から支給される老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金も含まれます

ただし、

・ 厚生年金基金

・ 国民年金基金

・ 確定給付企業年金

・ 企業型や個人型の確定拠出年金

といった私的年金から支給される年金は、担保にできません

また、

・ 年金の支給が全額停止されている場合

・ 生活保護を受給している場合

には、制度を利用できません。

労災年金担保貸付

もうひとつは、労災保険から支給される各種の年金を対象にした、「労災年金担保貸付」になります。

労災保険から支給される年金には、「障害(補償)年金」や「遺族(補償)年金」があります。

そのため、これらの年金を受ける権利を担保にして、WAMから貸付を受られます。

受給年金が返済に充当され残りが振り込まれる

受給年金が返済に充当され残りがが振り込まれる

年金担保貸付や労災年金担保貸付を利用できるのは、

・ 保健

・ 医療

・ 介護

・ 福祉

・ 住宅改修

・ 冠婚葬祭

・ 生活必需物品の購入

などの支出のために、「一時的に小口の資金が必要な場合」に限られます

そのため次のような3つの要件を満たす額の範囲内で、WAMから貸付を受けられます。

(1) 1万円単位で「10万円~200万円」の範囲内で、資金使途が生活必需物品の購入の場合には、「10万円~80万円の範囲内」になります。

(2) 受給している年金(年額)の、0.8倍以内で、所得税額に相当する額は除きます。

(3) 1回あたりの定額返済額の15倍以内で、融資額の元金相当額を、おおむね2年6か月以内で返済します

要件は以上のようになりますが、(2)の中に記載されているように、貸付を受けられる額は、受給している年金額によって変動します

この理由について考えてみると、WAMが年金支給機関(例えば日本年金機構)から年金を直接受け取り、借入金の返済に充て、余った分を利用者の口座に振り込むからではないかと思います。

具体的な返済額は1万円単位で、利用者が指定した額になりますが、

・ 1回あたりの年金支給額の3分の1という「上限」

・ 最低1万円という「下限」

があります。

また2018年10月3日以降の貸付利率は、

・ 年金担保貸付 … 年2.8%

・ 労災年金担保貸付 … 年2.1%

になります。

なお、貸付を受ける際には、連帯保証人が必要になります。

ただし、信用保証機関(公益財団法人年金融資福祉サービス協会)に保証料を支払って、信用保証制度を利用することもできます。

年金担保貸付は「2022年3月末」で申込受付終了

年金担保貸付は「2022月3月末」で申込受付終了

年金担保貸付と労災年金担保貸付は、2010年12月の閣議決定で、制度の廃止が決定しました。

このように決定された理由について調べてみると、次のような3つの点が挙げられております。

・ 年金担保貸付を利用した方が、その借入金を返済している期間中に、生活保護を受給することにより、生活保護費という公費が、返済のために使われてしまう点

・ 年金を担保にして貸付を受けるという仕組み自体に、問題があると考えられる点

・ 年金担保貸付が創設された当時(1973年~1974年)と比較すると、代わりになる制度が整備されているため、必要性が薄れている点

しかし事業規模の縮減を図りながら、制度を継続してきたので、当面は廃止されないと思っていましたが、2022年3月末の予定で、申込受付を終了する旨の方針が、厚生労働省から示されました。

そのため、年金担保貸付と労災年金担保貸付を利用できるのは、あと2年くらいになります。

ただ、2022年3月末の予定で、申込受付が終了するという話なので、この時点で残っている借入額を、繰り上げて返済する必要はないようです。

収入不足をカバーする「公的医療保険の保険給付」

収入不足をカバーする「公的医療保険の保険給付」

年金担保貸付と労災年金担保貸付が終了した後の受け皿としては、各都道府県にある社会福祉協議会が実施している「生活福祉資金貸付制度」が、候補に挙げられております。

これは高齢者世帯に限定した制度ではないため、教育支援資金の貸付も受けられます。

また自己所有の土地や建物に、将来に渡って住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯が、その土地や建物を担保にして、生活資金の貸付を受けらます。

その他に児童を扶養している母子家庭や父子家庭、寡婦などに対して、修学資金などを貸付する「母子・父子・寡婦福祉資金貸付制度」が、候補に挙げられております。

こういった公的な貸付制度の他に、

・ 健康保険

・ 国民健康保険

・ 後期高齢者医療

などの公的医療保険の保険給付を活用して、収入の不足をカバーするという方法もあります。

収入の不足をカバーできる公的医療保険の保険給付には、同一月に支払った医療費の自己負担が、一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた部分が払い戻しされる、「高額療養費」があります。

また一定の遺族などに対して、葬儀費用の一部を補助するために支給される、「埋葬料・埋葬費(健康保険の場合)」があります

公的制度を活用して借入を防ぐ

まずはこういった公的な制度を十分に活用し、民間の金融機関のカードローンなどを利用するのは、公的な制度だけでは足りない時にした方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)