新型コロナウイルスの影響で、毎日状況が変わっています。

現在は5月2日ですが、掲載されるときにはまた違う状況かも知れません。

「今のローンをどうやって返すか?」、「返せそうにないけど、どうしたらいいの?」この部分に焦点を当てたいと思います。

【銀行員としての結論】
「支援策はあるのでひとまず安心してください」

超柔軟な銀行の支援体制とその理由

超柔軟な銀行の支援体制

「保証会社付きの住宅ローンなら、リスケしたあとに保証会社へ事後報告でOK!」

「返済が苦しいと言われたら、とりあえず、よほどのことがない限りはリスケしろ」

現時点で、私の勤務する銀行で指示されている内容です。

今回の対応は、30年の銀行員生活で私も初めて経験する超柔軟な対応です。

リスケとは「ローン返済額を毎月1万円だけにする」など、一時的に返済を軽減することです。

スケジュールを組み直す「リスケジュール(Reschedule)」の略で、事業資金でも住宅ローンでも用いられています。

監督官庁の命令があるから、助けなくてはいけない

監督官庁である金融庁から、銀行などの金融機関に対して、要請文書が出されていて、また金融庁ホームページに具体的な対応事例が公表されています。

要請なので銀行の判断ですが、金融庁の要請を無視する金融機関はありません。

金融庁からの要請

・ 住宅ローンや個人向けローンの条件変更等(リスケ)について、迅速かつ柔軟な対応をすること

・ 新型コロナウイルスによりリスケをした場合には、信用情報機関に延滞情報として登録しないこと

要約すると上記のとおりで、とにかく素早く、かつ柔軟な対応が求められています。

とくに信用情報については特別対応です。

普段ならリスケする人は、何か月もローン返済ができずに信用情報機関(個人信用情報を取り扱う、CIC JICCなど)に「延滞」として記録が残ります。

これはリスケしたとしても、情報が消えることはありません。

リスケした人が新しくローンを借りることがむずかしいのは、こうした個人信用情報によるものです。

コロナウイルスが原因でリスケする場合は、

この延滞記録にも柔軟に対応しなさい

という内容です。

個人信用情報に限った話なので、新しい借入ができるかは未知数ですし、借りても返せるのかという点も大事です。

個人信用情報などの詳細は、必ずリスケ相談する銀行に確認してください。

対応事例でプレッシャーを与え、モニタリングで監視

金融庁ではホームページで、当面6か月の返済を可能な限り少なくして、また条件変更するときの手数料も免除している銀行の対応事例を公表しています。

参照:金融庁「新型コロナウイルス感染症を踏まえた金融機関の対応事例(pdf)」

金融庁の狙いは「住宅ローン返済に困っている人を、このように助けている銀行がありますよ」と公表し、プレッシャーをかけることです。

銀行にしてみれば、これは直接命令されているのと同じで、私の勤務する銀行でも、この対応事例の通りに対応しています。

金融機関に指示したことが、しっかり言われたとおりに行われているかを金融庁はチェックしています。

これはモニタリングといって、銀行からの報告に基づき、金融庁から公表されます。

新型コロナウイルスによるローン返済の支援も、あとになって金融機関の対応が公表されることになっています。

命令だけでなく「あとでちゃんとやったか調べる!」と言われているのでリスケ対応をしてくれます。

超柔軟な支援体制その1:早く!

迅速にリスケの対応をする

「保証会社付きの住宅ローンなら、リスケしたあとに保証会社へ事後報告でOK!」

住宅ローンは保証会社の保証が付く形態が大部分です。

新規融資を受ける時も、保証会社の審査が通り、次に銀行で通って融資実行になります。

リスケも基本的には同じで、普段のときは、

お客さんから返済が苦しいと相談


銀行から保証会社へ相談

保証会社で判断してリスケを承諾

銀行でリスケを実行(手数料をもらう)

といった流れになります。

コロナ支援の対応

当面6か月の返済猶予なら、とりあえず銀行サイドでリスケを処理し、保証会社には事後報告で終わる形を取っています。

こうすることで、保証会社とのやりとりで時間を費やすことなく、迅速にリスケができます

各銀行で専門窓口を設置していますが、必ず予約してから行ってください。

超柔軟な支援体制その2:よほどのことがなければ対応

私の勤務する銀行でも当面6か月をひとつの目安にし、よほどのことがなければ対応します。

返済が苦しくなったお客様の相談は、親身になって聞いてくれるはずです。

もちろん担当者により応対や言動など「温度感」の違いはあるでしょうが、基本的には真摯に対応するはずです。

店舗を持たないネット銀行の場合

基本的な対応は他の金融機関と変わらず、親身に対応すると思われます。

ネット銀行に限らず、メガバンク、地銀、信金などすべての金融機関に迅速、柔軟な対応が求められていますので、「困っているお客様を支援する」という基本姿勢に、大差はないはずです。

具体的な対応は金融機関ごとに違います。

全面にコロナ支援を打ち出しているところもあれば、非常事態宣言による店舗営業時間の縮小などのお知らせがメインのところ、あるいはコロナ支援というよりも、そもそもコロナについてほとんど触れていないところなど、さまざまです。

それでも、とにかく困ったらまず相談してください。

どこでも、よほどのことがなければ親身になって相談に応じてくれるはずです。

リスケしてもらえない「よほどのこと」

よほどのこととはどんなことか

1. 「事故者」とバレてしまう

2. 他の借金返済に回そうとした、または返済した場合

3. 悪質

1. 「事故者」とバレてしまう

事故者とは、代位弁済や自己破産などで個人信用情報に「異動」が登録された人のことです。

異動は別名金融事故(または単に事故)と呼ばれ、事故歴のある人を事故者と呼びます。

ネットなどで「ブラックリストに載る」と表現されるのが、この事故者になることを指しています。

リスケ相談を受けると、銀行が必要だと判断すれば個人信用情報照会をチェックできることになっています。

ローンが返せないといっているが、実は他の借金で苦しくなったりしていないかと調査する場合があります。

なおこの場合、個人情報の同意は不要です。

これは住宅ローンなどの契約書に記載されている「信用状況の再調査」といわれるものです。

再調査した結果事故者だと判明した場合

住宅ローンを借りて、いろいろな事情でたとえばカードローンが返済できずに代位弁済され、そのことを銀行に黙っていた人がいたとします。

この人が、コロナウイルスの影響で返済が苦しくなったと相談に来ても、銀行では助けてもらえないかも知れません。

そもそも事故者というだけでも「期限利益当然喪失」といって、全額の一括返済を求められても、住宅ローンなどの契約上では文句が言えないことになっています。

なのに、ましてコロナで困ったといわれたので、余計に返済できるわけがない、最悪「コロナでお困りなのはわかりましたが、今回はそれと別の理由でして、契約書にも書かれていますので、全額速やかに返済してください」と言われる可能性があります。

これは、ローンの契約当初に決まっていたことで文句が言えませんし、銀行の対応も冷たいとは言えません。

2. 他の借金返済に回そうとした、または返済した場合

返済に困ったと相談するときに、たとえば「カードローンが返せない」、「クレジット代金の支払ができない」と言われても、これは応られません。

リスケは、そもそも生活に困った人の救済措置であり、銀行から見て他の借金(カードローンや、クレジット代金も銀行では借金と見ます)返済に回されるのは許容できません

住宅ローンをリスケしても、浮いたお金がそっちに回されては、銀行だけが不利になるからです。

このケースでは「だったら、カードローンとクレジット支払も猶予してもらってください。そうしたら住宅ローンもリスケしますよ」と言われることになります。

一般論として、カードローンやクレジット代金は返済猶予やリスケをしてくれることは少ないので注意が必要です。

ただし、奨学金や教育ローンなどでは、金融機関によって柔軟に対応してくれる場合もあるので、こちらはとりあえず相談することをおすすめします。

3. 悪質

本当はそれほど苦しくないのに「コロナウイルスの影響で」とウソを言ってリスケするのはいけません

リスケすれば借金が減らなくなるので、自分のためになりません。

苦しくなった原因がコロナではなくギャンブルでは、やはりダメです。

原則は自己申告なのですが、必要に応じ調査する場合があり、調べればわかってしまいます。

ただし今回は緊急な支援なので、たとえば上記したカードローンやクレジット代金もある場合なら、銀行では「とりあえずこっちは先にリスケをしますから、クレジットやカードローンも、あとで良いのでどうなったか教えてください」と約束することで対応してもらえる場合もあります。

もちろん、この約束を破れば全額返せと言われても文句が言えないのは当然ですので注意してください。

新型コロナ」の影響で「住宅ローン」を支払えなくなる前に! 銀行業態別「延滞対策」

超柔軟な支援を受けるためにやるべき3つのこと

1. 最低限のお金は準備しておく

2. 削ったものをまとめておく、削れる候補を考えておく

3. コロナ収束後に、元通りの返済に戻る覚悟と準備をしておく

1. 最低限のお金は準備しておく

リスケするときに、通常は「条件変更手数料」などの手数料(5,000円程度)が必要になります。

今回はこの手数料を免除してくれる銀行も多いようですが、しかしながら利息は免除してもらえません

たとえば3か月返済ができなかった場合では、

(1) 3か月分の返済をしてからリスケするケース

(2) 延滞している3か月の元金もひっくるめてリスケするケース

の2通りがあります。

ほとんどの場合、後者の「延滞したままリスケ」を選ぶことが多いです。

しかし、元金は猶予しても利息は猶予してもらえません。

要はリスケするときに利息の精算としてお金が必要になります。

仮に3か月分の利息が5万円だとしたら、払わないとリスケしてもらえません。

タダではリスケできない

ということはぜひ覚えておいてください。

2. 削ったものをまとめておく、削れる候補を考えておく

ローンのリスケを相談すると、銀行員から必ず「今の生活でなにを削ってきましたか?」、「まだ削れるお金はありませんか?」と聞かれます。

これは、リスケをする際に必ず聞かなければならないことがらで、以前の金融円滑化法があった時代に、顧客との面談内容で聞いたこと(ヒアリング)を、あとで金融庁に相談した名残です。

「ローン返済を減らす以上は、顧客自身でも家計の無駄を見直し削減すべき」という趣旨です。

ただし、ここではムリしなくても大丈夫です。

なぜならコロナウイルスの影響で、皆さんそれぞれ困って、苦心して、削れる削って、それでもなおローン返済がきつくて、しかたなく銀行に来ているからです。

今日まで何を削ってきたかを頭の中でまとめておけばいいです。

そして「他に削れるお金はありませんか?」と聞かれた場合は、「もう、削れるものなんかないよ!」と思っても、1~2つは言えるように、候補を考えておいてください。

なんでもいいので「答える」が大切なポイントです。

頑張って削れるのが500円ならそれでもいいです。

なぜなら

「500円しか削れないほど、そこまで切り詰めてきたのに、さらにその500円を削ろうとしている真面目な人です」

銀行員の報告には、おそらくこのように書いてもらえるでしょう。

3. コロナ収束後に、元通りの返済に戻る覚悟と準備をしておく

【前提条件】
住宅ローン借入額3,000万円
金利1.0% 35年返済
ボーナス返済なし
今月借りたばかりで、第1回から6か月間リスケし最小限の支払にしたい

1. リスケしなければ、毎月返済額は約8万5,000円

2. リスケした最小支払額(利息だけ払う)は約2万5,000円

以上より、リスケすると毎月6万円(1-2)の支払が減ります。

上記計算式で、毎月減る6万円とは、もしリスケしなければ毎月払っていた(減っていった)はずの借入元金です。

単純計算では

6万円 × 6か月=36万円

の借入を棚上げしたことになります、あくまで棚上げであって免除してもらったわけではありません。

半年後にコロナウイルスが収束したら、また元の返済に戻れる覚悟と準備はしておきましょう。

浮いた6万円は、もちろん大事に使い、できる限り残しておくことをおすすめします。

滞納するより「相談」

滞納せずに金融機関に相談

上層部から厳命されている対応の真意は、次のようなものだと考えています。

・ 困っている人を救済することこそ金融機関の使命、だからやる!

・ 「使命を果たしてます!」と金融庁にアピールしたい!

コロナウイルスの影響から困っている人への超柔軟な対応も、こうした背景があることも参考にしてください。

滞納になる前に、「返す気があります」という意志とともに金融機関に相談してください。(執筆者:加藤 隆二)