先月4/21(日本時間)に、米国CNNが北朝鮮の金正恩委員長が重体であると報道しました。

その後死亡説まで流れましたが、5/1に肥料工場を視察した映像が20日ぶりに公開され、有事には至りませんでした。

金正恩委員長には健康不安説が以前から取りざたされていますが、本当に有事(重篤または死亡)の場合に、株式相場はどう反応するのでしょうか

親族内承継した北朝鮮三代目の指導者に起きた今回の事態を、過去2回の有事を振り返ることで読み解きたいと思います。

北朝鮮「有事の際」に 株式相場はどうなる

北朝鮮有事は、株式相場に吉と出るか、凶と出るか

北朝鮮に有事が起きると、最も早く大きく反応するのが韓国の株式・為替相場です。

韓国の株式指数KOSPIと韓国ウォンの過去2回の動きを中心に、日本株式相場への影響も検証したいと思います。

過去2回の有事で相場はどう反応したか

金日成主席や金正日総書記の死去の際の相場の反応はどうだったのでしょうか。

(1) 金日成主席:1994年7月8日に死去

北朝鮮の建国以来、46年に渡り最高指導者を務めた金日成主席の死亡が公表されたのが、死亡翌日の7月9日です。

その日のKOPSIは、前日比終値+0.78%と上昇しました。

為替にも特別な動きはなく、実体経済にも影響はありませんでした。

しかしこれは当時の資本・為替制度に今のような自由度がなく、外国人株式投資規制や市場平均為替制度が採られていたことが理由だと言われています。

よって、あまり参考にならない相場推移です。

(2) 金正日総書記:2011年12月17日に死去

2代目最高指導者である金正日総書記の死亡は、翌々日の12月19日、日中に公表されました。

そのニュースを受け、KOPSIは前日終値より最大-4.86%と急落し、終値でも-3.43%で終えました

韓国ウォンもニュース公表後、-1%下落してその日の取引を終えました。

しかしKOSPIは2日後の12月21日には死亡前の株価に戻り、翌月には上昇に転じました

金正日総書記の死亡近辺の株価

≪Investing.comより、筆者作成≫

※2011/12/1~2012/1/31までの2か月間(ローソク足)

このように北朝鮮の有事が発生した場合、その瞬間は株価も為替も動揺するのですが、早期に収束し、実体経済にも大きな影響はなかったのが過去2回の有事相場でした。

なお日本も同様の反応で、公表当日の下落幅は-1.54%。

2日後には死亡前の株価に戻り、株価への影響はほぼなかったと言えるでしょう。

2日後には死亡前の株価に戻っている

≪Investing.comより、筆者作成≫

※2011/12/1~2012/1/31までの2か月間(ローソク足)

三代目の指導者に有事が起きた場合はどうなる

最高指導者金正恩委員長にいま有事が発生した場合、北朝鮮有事の際は数日という短期間で動揺は収束され、日本株式市場も含め大事には至らない(吉にも凶にもならない)と予想します。

今回も米国CNNが重体説を流した後、KOSPIは日中-2.99%急落したものの、2日後には元の水準へ戻っています

今回の報道の際の株価

≪Investing.comより、筆者作成≫

※2020/4//1~2020/4/30までの1か月間(ローソク足)

しかしこれまでと異なり、後継者不在と言うことが不安要因として残ります

金正恩委員長は、まだ就任9年目です。

政治基盤を構築することに専念していたため、後継者を指名することや育てる(内外に周知徹底する)ことを含め、世代交代の準備が不足しているのです。

そのため有事後の国家戦略が予想できず、後継指導者が思わぬ行動に出る危険性が高まり、韓国から資金を引き揚げる動きが出るかもしれません。

今の韓国は新型コロナ対策で大きな財政支出を強いられており、北朝鮮有事に対する十分な経済支援ができるか不透明な部分があります

特に株式相場は不透明感を1番嫌うので、落ち着くまでは逃げる(避ける)手法を海外投資家が選択する可能性があります。

そうすると韓国ウォン相場も下落し、防衛のために介入するなどの有事対応が必要となってきます。

現在韓国は米国FRBとの間で通貨急落時の通貨スワップを締結しており、資金繰りに困ることは想定されていません

また1997年アジア通貨危機によりIMFから資金支援を受けるような、最悪の事態に発展することもないでしょう。

北朝鮮と韓国の関係

新たな火種が加わらないよう祈るばかり

このように過去の推移や環境を考えると、いま直ぐの有事であれば動揺が大きく長くなる可能性はありますが、大事には至らないと予想します。

それよりもいま1番気を付けないといけないのは、健康不安からの有事ではなく、軍事クーデターなどの強硬な政権移行でしょう。

ただでさえコロナショックで乱高下した株式相場に、新たな火種が加わらないよう祈るばかりです。(執筆者:中野 徹)